新しい一日
それは見る限り一面に広がる
広く青い海
夜空には大きな満月
そして数えきれない程の輝く星
その砂浜を歩いているのは…
わたしだっ!……
てゆうことは……
わたしは今寝ていて夢を見てるんだ…
夢の中で夢だと気づいたわたしは
どんな夢になるか期待した。
1人砂浜を歩いていると
前から誰か歩いてきた
わたしの名前を呼んでいるように感じるのに
感じるだけで声が聞こえない
辺りの暗さではっきり顔が見えない…
わたしは誰か気になって
サンダルを脱ぎ捨て走った………
………
………
『……え…。
いいとこだったのに……』
わたしはとっさにボソっと呟いて起きてしまい
一瞬焦った。
横に椿がまだ寝ているだろうことに緊張しながら
ゆっくり振り向いた。
すると……
椿の姿はない。
ただ、着ていたスウェットがベットの上に畳んであった。
わたしはゆっくりと寝室から出て
リビングにいるのかと思い、
なんだかドキドキしたけど
椿はいなかった。
するとリビングテーブルに朝食があった。
これ…
椿が準備しておいてくれたんだ…
クロワッサンとサラダ、目玉焼きに
コーヒーとフルーツ。
部屋の時計を見ると
朝10時を過ぎていた…!
わたしは慌ててスマホを取りに行き
日時を確認した。
だよね…だよね…!
良かったぁ…
今日は土曜日でわたしは休み。
…わたしは土曜日休みでも椿はお店だし…
仕事なのかな。
だけど女の私が呑気にこんな時間まで寝てて
最悪ぢゃん!
椿にメッセージを送ろうと思ったら
椿からのメッセージが届いていた。
【『今店に着いた。
てか仕事だって言ってなくてごめん。
今日スタッフが少し少ないから朝から店内の掃除と発注やったりそのあとは普通に店の仕事で。
本当は朝から一緒に居たかったんだけど…
でも今日は夕方くらいには帰るようにするからもしスミレの予定が空いてたらゆっくり飯食おうな。
それと、
テーブルの上に家のカードキーのスペア作っておいたから自由に使って。』】
椿がこんな長文っ!?!…
初めてだしびっくりだし嬉しいしだよっ…!
さらにそのあとすぐに
椿から2件もメッセージが続けて来ていた。
【『早く会いたい』】
【『って送んの忘れてた。
またあとで連絡する。』】
ちょっとーもー!……
椿って付き合うとこんなに
変わっちゃう人だったんだ?!?
ヤバいよー
本当に胸がキュンって締め付けられたよー。
わたしは胸がドキドキしたまま
リビングテーブルに行き
カードキーを手にした。
これいつ作ってくれてたんだろう…。
普通の鍵と違ってカードキー作るのは期間かかるって
聞いたことある…。
私のために作っておいてくれたなんて
椿ってホントに色々考えてくれてるよね…
椿へのメッセージに返信して
わたしは今日これからどうするか考えた。
明日はネイルをやりに行くくらいの予定しかないし
今日また泊まっちゃう感じでいいのかな?…
だとすると着替えとか取りに一旦帰った方がいいよね。
椿が作っておいてくれた朝食を食べ終えて
洗い物と簡単な掃除をして家を出た。
わたし…
椿と付き合ったんだよね。
なんか不思議な感覚…。
休日のこんな時間に
椿のタワーマンションから出てくる自分が
なんてゆうか…
夢?みたいな感じってゆうか
フワフワしてる自分がいる…
それは嬉しくて幸せな気分なんだよね。
わたしは途中でタクシーをひろい、
ある場所に行きたくなった。
まだこの時間なら間に合うよね。
ちょっと会うだけだもん。
タクシーはとあるお店に着いた。
そこは椿の店である、「katze」。
わたしは準備中の札がかかっているのを確認して
裏口へとまわった。
裏口のドアに鍵がかかってなかったので
わたしはそっと中を覗いてみると
誰かいる様子はなかった。
椿に電話すれば済むことだけど
ここまで来たら気づかれないで会いたかった。
ふと目に入った壁には
シフト表がかかっていたので見てみると
今日のスタッフの入り時間は1時間くらいあとなことがわかった。
きっと椿はあの場所に居るんぢゃないかと
ヒールの音を立てないように階段を上っていった。
最上階に着き、
ドアをゆっくりと開けると
やっぱりそこには
椿の後ろ姿があった。
あれ?…
わたしがドア開けた音聞こえてない…?よね。
ゆっくり近づいてみると
椿はタバコ片手に
イヤホンで何かを聴いてるみたいだった。
そして
わたしはその無防備で広い背中に
抱きついた
『うぉ…っ!!…!すみれ?!』
『びっくりした?』
『なんも外の音聞こえてなかったから
まぢびっくりした!』
『ごめんごめん!』
椿はわたしの方へと体の向きを変え
右手で髪の毛を優しく撫でてくれた。
『どした?』
『うぅん……
ただ急に会いたくなったから…
とか言ったら…子供みたいなこと言ってるよね』
『今日の夜また会えるのに?』
『………うん。…』
椿は突然わたしから離れてこう言った。
『……手、繋ぎたい。』
『えっ……』
『急にそう言われて嫌だった?』
『……全然嫌ぢゃないっ!
むしろ嬉しい……。』
『ソレと俺も同じ気持ちってこと。
俺もずっとすみれのこと考えてた。』
椿はわたしの手を握った。
『俺さ、今まで仕事中に女のことなんて考えたことなかった。けどすみれと出会ってから結構チラチラ頭よぎんだよね。』
『………付き合った昨日からぢゃなくて
出会ってからなの……?』
『……そ。
相当バカでしょ。俺。』
『……わたしなんて考えちゃいけないって自分に言い聞かせてたよ。それって色々な意味で凄く最低だよね。
椿にも拓人さんにも……
だからバカなのは私なんだよ。』
『…そうゆう時もあるんだよな。』
椿のシルバーリングをした綺麗な指が
わたしの髪をもう一度撫でた。
『まぁ…あいつと付き合ったって聞いた瞬間良い気はしなかったしイラついたけど、すみれが選んだ道なら仕方ねーなって。
けどその遠回りした分の幸せが今めちゃくちゃあんだろーなって思う。』
『……うん。
本当にそうだよね。わたしなんて今日朝起きた時
夢なんぢゃないかって思ったもん。』
『それ俺も思った。
朝なんて多分5分くらいすみれの寝顔見てた。』
『えっ!5分も?!
恥ずかしすぎるからやめてよー。』
わたし達は笑い合った。
椿が笑った時に出る
片方だけの小さなエクボが
最高に可愛いんだよね。
『椿……。好きだよ。』
『俺も好きだよ。すみれ。』
抱き締められているこの瞬間
安心する
ドキドキしてるのに
安心する
『なんか……
恥ずい…。』
『……誰かに見られてるわけぢゃないとしても
確かにちょっと恥ずかしいね…ココ外だしね。』
『な。
しかも昼間だしな。』
見つめ合った
唇が重なろうとした時
ガチャっ!
『オーナー!やっぱここにっ…
!!って…お取込み中すいませーん!…』
トーマくんは勢いよく開けた扉を
半分閉めた。
『…ったくホント取り込み中だったっつーの。』
『トーマくん!…ごめんね、大丈夫だよー!…』
トーマくんはもう一度扉を開け
申し訳なさそうに入ってきた。
『まぢですいませんー、、!!!
すみれさんもホントすいません…!!』
『それで何かあった??』
『今日出勤予定だった三浦が熱出たらしくて
休みたいって今連絡来たんすけど他に代われる奴がいないってことなんすよ…。』
『あっ俺にも三浦から着信来てるわ。』
椿はその三浦くんてゆうスタッフに折り返しの電話をした。
『【もしもし?電話きてんの気づかなくて悪かったな。
トーマから今聞いたけど、しっかり休めよ。
大丈夫大丈夫。ぢゃーまたな。】』
『オーナーどうします?!』
『…結構予約入ってんだよな。
まー何とかなるっちゃなるだろうけどなー……。』
椿はちょっと考えたあと
わたしの方を見て言った。
『これから何か用ある?』
『えっ…うぅん。
何にもないけど…?』
『オーナー…
もしかしてっ…!』
椿はわたしの手を握って
そのもしかしての言葉を言った。
『すみれ、今日だけ
手伝ってくんない?店の仕事ちょっとだけ。』
『でもわたし飲食店でのバイト経験とかないよ?!』
『大丈夫だから。
店始まる前にやり方教えるしすみれなら出来る!』
『すみれさん!!
俺からもお願いしたいっす!!』
つづく。