5話 パパになる
ちょっと短くなってしまいました
すみません!!
俺は走りきった……
今は暗い森の中にいる。
月は沈みかけ、そろそろ明朝を迎える時間だろう。
まだ、村では俺が異世界人だと言うことはあまりばらされていなかったので、すんなり逃げ切ることは出来たが、この村の近くにいては危ない。
あの村は龍使いの村、こんなのすぐに追いついてしまう。
もっと逃げなくては……
俺はまた足を動かし始めた、その時だった。草むらからカサカサという乾いた音が、静寂だったこの世界に響く。
嫌な予感が頭を過る。ドラゴンを見たときと同じ恐怖にかられる。俺はどうにかその場から離れようとする。
だが、そんな一瞬じゃあ何もできなかった……
草むらからナニかは飛び出してきた。
初め、暗闇のせいでハッキリとは見えなかったが、俺の目も少しずつ慣れ、姿が見えた。白くて長い毛に、そこまででかくない体。
そいつは
『ハウルフェンリル』
上級種、フェンリルの中でも、かなり上位の方にあるのを本で確認している。
敏捷性と攻撃力が高く、風魔法にも優れている。
今の俺じゃあ、絶対に渡り合うことのできない。越えることのできない大きな壁。
俺は自分の運の無さを憎んだ……
なぜ、俺はショウも失い、自分の命も失わくてはならないのかと。
俺はショウに『ごめん』よ、と心で伝え、この世界でまたも目を瞑り、自身の最後を迎えようとした。
走馬灯……
そんなものが見えないはずだ、そう思っていた。
──だが、俺の頭には数々の風景が浮かび上がってくる。
ショウとドラゴンと一緒に見た風景──
ショウとの何気ない会話──
ショウの笑顔と泣き顔──
ショウとの口づけ──
俺はそこで初めて気づく……
人生で初めて、人を好きになってしまったことに……
頭に過ぎった言葉はたった一つ。
『生きたい!!」
ただそれだけだった。
そして頭に浮かんだのはショウの笑顔だった。
俺は目を開け、雄叫びを上げながら迫ってくるフェンリルにたち向かう。
「俺はここではまだ死ねん! 俺が死ぬべき場所は彼女の隣だ」
俺はとびかかってくるフェンリルを横に転がって避け、直ぐに森の中に飛び込む。
だけど、あんな威勢のいい言葉を言ってもダメだ。
武器がなくては、俺のステータスが活かせない。
俺はひとまず草むらを静かに這い、木の影に隠れ、その場から離れた。
何か策を思い浮かべなくては……
焦りが汗となり、俺の首筋を辿る。
俺の頭は加速しすぎてオーバーヒートしそうなほど熱を籠めていた。
ただ、1つだけこの状況を打破する策がある。
『召喚魔法』
その存在が頭を埋め尽くす。
今はかけるしかない!!
沸騰した頭をどうにか鎮め、冷静な思考回廊にする。
シスターの言葉、
『自分の望むもの』
それは何なのか?
俺が望むもの……
ショウの笑顔?
この世界の景色?
望むものだが、それは召喚して手に入れるものじゃない。それは俺が、自分の力で叶えるものだ。決して魔法に頼るものじゃない
じゃあ何が俺の望みなんだ……
そこで俺は一人の少々が思い浮かぶ。
あの感謝の目……
素直な心……
周りの大人たちにはなかったもの……
俺は俺が望むものの結論に至る。
それは
『それは何者にも汚されていない素直な心』
俺は指に力を込める。
あるはずのないものを創り出す。それだけで指か震えて上手く使えない。
恐怖。
そんなものより今あるのは生への願望……
俺は震える指をもう一方の手で抑えながらある文字を書く。
──だが、その最中、またも茂みからフェンリルは飛び出してくる。
今度は逃さない、と殺気を漲らせて俺を襲ってくる。
俺はやっとの思いで、文字を完成させる。
これが俺の望むものだ!!
「願いよ今力に変われ! コイ《ノゾミ》!!
俺は文字に大量の魔力を注ぐ。
──すると、その文字は青く発光し、みるみると姿を変えていく。
そんな光に警戒して、フェンリルも後ろに飛び退く。
その光は、とても美しく、まさに俺が空から見た景色のように、希望と美しくさを放っていた。
それが具現化されていく……
銀色の少し長い髪、白い肌、整った顔、小さい体……
それが徐々に現れてくる。
そして、その光は完全な人間となって可愛らしい声を発した。
「はじめまして! ノゾミの大好きなパパ!」
そして、少女はニッコリと笑う。その微笑みはとても幼く可愛かった。
そう、俺が召喚したのは
『銀髪ロリな自慢の娘』
でした??
やっと登場しました!僕の理想の娘!!
これからは皆さんの娘になるように執筆していきたいです!!