25話 冒険者ギルド
俺はコールの提案通り、冒険者ギルドの入り口まで来ていた。男の憧れの場所につき、心が昂っていた。
だが、ギルドに行く道中、少々不可解なことがあった。何故か、俺が道を通ると視線が集まってくるのだ。
俺ってそこまでおかしいのかっ?と身なりを確かめてみる。服装は獣人の村でもらった服を着ているが、この服が田舎臭いのかもしれない。もしかしたら行動の方かもしれない。そんなことを考えながら、ギルドの中に入っていく。
中は想像通りのものだった。
入って目の前にカウンターがあって、お姉さん達が、受付などの案内をしている。そして、入って左側にはクエストボード、右側は酒場になっていた。
クエストボードの方ではいくつかのパーティがどのクエストに行こうか話し合っている。
酒場はまだ昼間なのにみんな盛り上がっている。
俺はひとまず左右には触れず、受付カウンターに近寄る。
そこにいた美人なお姉さん受付嬢に話しかける。
「すみません。冒険者登録したいんですけどー」
俺の言葉を聞いて、受付嬢が俺の顔を見ると固まってしまった。周りの受付嬢も、俺に聞こえない声でコソコソと話し出す。
「なにあの人? 格好良すぎない?」
「ですよね! これは狙いに行くしか......」
「なにいってんの!? あれは私のもんよっ!」
「こんなのとこにはむさ苦しい男しか来ないんだからっ!」
何か話し合っていた結果、俺の目の前で戦争が起こっている。
そんな光景を見た酒場の冒険者達(むさ苦しい)が俺の周りを囲ってくる。
「おいっ! お前調子になってんじゃねーぞっ!」
いかつい男が俺に殺意を向けてくる。
周りの男達も賛同して、俺に罵声を打破してくる。
「受付嬢達は俺たちのアイドルなんだぞっ!」
「そうだっ! 辛い冒険の後もあの人たちの笑顔で生き返ると言うのに!」
「こんなイケメンなんかに、俺たちの女神を取られて溜まるかっ!」
「いい男だなー」
男達は息ぴったりに、受付嬢のことを話してくる。その中にはどこかおかしい発見も混ざっていたが、聞かなかったフリをしておこう。
だか、この男達を振り払うためにどうしたらいいのか?
俺は今日、このギルドに登録を済ませに来ただけなんだけどなー。
「あのー? すみません。何か勘違いしているようですが、俺は別に受付嬢を口説こうなんて気は......」
「お前には口説こうという気がなくても、お前の顔はそーじゃねーんだよっ!」
俺の言葉を誰一人として聞く耳を持ってくれたかった。
俺の顔ってそんなに女を口説くような顔をしているのかっ? と顔を触るが、今はそんなこと考えている暇はない。どうにかして、この状況を打破しなければ......
「俺は、ただ冒険者登録がしたくて来ただけなんですが」
その言葉を聞いた冒険者の男達(むさ苦しい)がニヤニヤと周りの男達が話し合っている。何か、満場一致したかのようなしたり顔で俺に話しかけてくる。
「ちょうどよかったな。俺たちが登録試験の審査官をやってやるよっ!」
「えっ! はっ! どーいうこと!」
俺が驚いている最中、男達は各々、鞘に入っていた剣や、武器を手に持ち戦闘態勢に入る。
このギルドの試験は模擬戦なのかと考え、俺も腰に下げて剣を抜き出そうとする。
「やめてくださいっ! ここのギルドの適正審査はステータスによるものです。そのような戦闘試験はありませんっ! 剣をしまってください」
1人の受付嬢が、俺たちの戦闘の仲裁を図る。
「なにしてるのっ! このイケメンな顔に傷がついたらどーするのっ!」
「ただ、剣を振るう姿も格好良さそーだなー」
だが、その人以外からはおかしな言葉しか出てこなかった。
俺は1人の受付嬢の言う通り、剣を鞘に戻す。だが、周りの冒険者達は誰一人として、武器を戻すものはいなかった。
「ずいぶん余裕だなー。その顔をぐちゃぐちゃにしてやるぜっ!」
むさ苦しい男の一人が、俺に斬りかかろうとしたその時、入口の扉が開かれる音がした。
「パパー! いますかー?」
その声はとても聞いたことのある心地よい声だった。
その声を聞いた、冒険者の男達は全員そちらに振り向く。
「なんだっ? この天使みたいな子供は?」
「こんな、可愛い子供がいる冒険者なんて聞いたことがないぞ?」
冒険者ギルドの中が、ざわざわとその子供の父親探しの話題になる。
俺はその子供の正体が気になり、むさ苦しい男の中をかき分けながら、入口が見えるところまで向かう。その途中、尻に違和感を感じたが、嫌な予感がするのでスルーしよう。
やっとの思いで、その人込みをかき分けると、そこにいたのはやっぱりノゾミだった。
「パパー!」
ノゾミは俺に気付いて、駆け寄ってくる。
そのノゾミの反応を見て、ギルド内の人は皆、驚愕した。
(子持ちかよっ!!!)
この時、全員の考えが一致した。
「ここまで一人で来たのか?」
「そーですよ」
「おー! すごいなノゾミ」
俺はノゾミのことを褒め、頭を撫ぜる。それを嬉しそうにして撫ぜられていたノゾミだか、はっ!と我に帰り、俺の顔を不機嫌そうな顔で見つめてくる。
「パパっ! 一人で観光なんてずるいですよ! 私も連れて行ってください!」
「いやいやっ! 観光してるんじゃなくて、ギルドに冒険者として登録しに来ただけだよ」
「えっ! でもコールさんがパパは観光に行ったよって。場所も教えてくれました」
コールのやつめ、適当なこと言いやがって!
ノゾミは何が起こっているのか、整理できていない様子だった。
そんな時、俺に斬りかかろうとした男が、恐る恐るノゾミに話しかける。
「お嬢ちゃん? この人が本当にお父さんなのかい? お母さんと一緒じゃないのかい?」
「そーですよ! 私の自慢のパパです。ママは、多分いません......」
そんなノゾミの悲しそうな顔を見て、男がやってしまったー! と言う顔をする。俺も何してんだっ! と言う視線を送る。すると、他の男性達の俺を見る目が変わった。
1人の男性が俺の肩を優しく叩く。
「お前も苦労してんだな。何か、困ったことがあったら俺たちに言えよ」
その男性の言葉と同時に男達が「そーだぞー!」とか、「任しとけ!」とか、「お嫁にくださいっ!」とか、ん? 何かおかしい言葉があったが、気にしたら負けだ。
俺はこのギルドにいるとおかしくなりそうだった。すぐに申請を済ませて出て行こうとしたが、受付嬢の方を見ると、皆、項垂れていた。
このままじゃ、どうしようもないな。今夜コールにでも、ノゾミに嘘ついたことを逆手に、ギルドのことをどうにかしてもらおう。
俺はノゾミの手を握る。
「よしノゾミっ! 観光にでもいこーか!」
「はいっ!」
ノゾミは嬉しそうに俺にくっつき、2人でこのよくわからないギルドを後にした。
読んでいただきありがとうございます
ブックマーク評価コメント等よろしくお願いします




