24話 おねえちゃん
「パパっ! だ、大丈夫ですか??」
ノゾミが部屋に入って来た俺の顔色に驚き、駆け寄る。その姿をみたフファルも次いでよってくる。
俺はそんなノゾミにしゃがんで抱きつき、頭を撫ぜる。
「パパはもうダメかもしれないよ......。心が、心が苦しいんだ」
俺はノゾミの柔らかい髪の毛を存分になぜ回しながら、心を癒す。ノゾミはその態度を見て、困惑してするが、すぐに態度を変える。
「コールさんっ! これはどーいうことですか?? まさか、パパをこんなに傷つけてたのは皇女様ですかっ!」
ノゾミは自分の親のことを案じ、殺気を放つ。その殺気に触発され、ファルも遠吠えを上げる。
「待てっ! 別に皇女様は悪くはない。可愛いノゾミのおかげで俺はもー大丈夫だから」
俺の言葉にノゾミとフェルは殺気を止める。そして、ノゾミは可愛いと言われて照れ臭そうな態度をしている。
ザイから、この親バカがっ! という視線を送られるが、お前だって子供好きだろっ! と睨み返す。
「ひとまず、ノゾミさん。アイさんとコウさんを連れてお嬢様の元へ向かいましょう。お話していただいたらお嬢様が悪いお方ではないことがわかると思いますから」
そういえば、皇女から連れてくるよう急かされていたんだ。はやく連れて行かないと、また罵声を浴びせられる。俺の背筋に、悪寒が走る。
「ボウさんも、心配ならついてこられますか? ただ、どーなるかはわかっていますが」
「遠慮したいところだが、確かに心配だ。ついていくよ」
俺は立ち上がり、ノゾミに手を差し出す。ノゾミは俺と手を繋ぎ嬉しそうにしている。
「よしガキどもっ! お前らもいくぞ!」
ザイはコウを持ち上げ肩車をする。コウはその肩の上ではしゃいでいる。
「おじさん号発進っ!!」
「俺はおじさんじゃねーよっ!」
ザイは担いだまま、部屋を後にする。
それを見たコールはアイに視線を移す。
「アイさんは私と一緒に行きましょうか」
コールはアイに手を差し伸べると、アイは焦ったようにおらの後ろに隠れる。
アイはどことなくコールの危険性を悟ったのだろう。
「私、子供からは好かれる方なはずなのですが......」
少し悲しげな顔でコールは部屋を出ていく。
コールは顔もよく愛想がいい。普通の子供からは好かれてもおかしくないだろう。ただ、アイは獣人だ。コールから感じる嫌な予感を感じ取ったのであろう。
俺はあいた左の手で、アイと手を繋ぎ部屋を出る。その後ろをフェルが続く。
皇女の部屋の前。
コールは部屋の扉を軽く叩く。
「お嬢様。御客人を連れて参りました」
「どうぞ。お入りください」
扉の奥から聞こえたのは、初めて皇女から聞いた清らかな声であった。その声を聞き手が汗でにじむ。
コールは慎重にドアを開け入室し、その後ろをノゾミと手を繋いだ、アイとコウが続いていく。
そして、部屋に入ってすぐ、皇女が話しかけてくる。
「はじめまして。私はこの国の第3皇女、セシリア・ガンドラと申します。格式張ったことは嫌いなので、私のことは、お・ね・え・ちゃ・んと呼んでくださいね」
とても美しい笑みを浮かべながら子供たちに話しかける。年はノゾミとほとんど変わらないが、溢れ出す気品というものなのか、確かにお姉さん感はある。だが、セシリアからは何か欲を感じる。そして、今までの顔とこの笑顔を見比べるととても怖かった。
「さぁ、立ち話もなんですし、あちらでお茶でもしましょうか」
セシリアは子供たちを後ろからおし、テーブルの方へ案内する。その時、彼女が振り返って俺らの方を向く。
「あなた達には用はないのでお帰りください」
とても機嫌悪そーな顔をしながらきつい言葉を浴びせてくる。それに俺は傷つき部屋からでよーとすると、ザイも傷ついた顔をしながら部屋を出ていく。コールは「失礼します」とだけ、伝えて部屋を後にする。
フェルはご主人が二手に分かれたせいで、どちらにあれば良いかわからなくなったが、子供達のことが心配なのか、部屋に残っていた。
フェル、あいつらのこと頼んだぞ!
さっきまで待機していた部屋に戻る。
コールからこれからのことについて話しましょう、と部屋に案内されたのだ。
「さて、ボウさん。これからあなた達はどうされるのですか?」
「そうだな。別に何も考えてないな」
俺たちは予定があってこの王都に来たわけではない。よって何も考えていなかったのだ。ひとまず、ショウの村からはかなり離れることができたから追手の心配もない。
今、ショウに会いにいくこともできないし、やることがなかった。
「その様子だと、やることがないのでしょう? なら私にいい提案があります」
「提案? それはありがたいな」
この世界に詳しくない俺からしては、今後のことを決めにくい。コールの提案になることはとても良策である。
「この国には、冒険者ギルドがあります。あなたたちの力なら、冒険稼業をしていく力量としては問題はありません。お金稼ぎのついでにやってみてはいかがでしょうか?」
ギルド。
その響きはとても男心くすぐられるものであった。とても気になる。
「それはいいな。この後、ノゾミとフェルを連れて街を観光しながら行ってみようかな」
俺のそんな考えに、ザイはすぐに反発する。
「街を観光することはいいが、ギルドにガキを連れていくのはやめておけ。あそこには治安の悪い奴もいる。教育にはよくないだろう」
ザイの言うことはもっともだ。ザイは子供のことはとても大切に考えている。だから、セシリアに用はないと言われて悲しかったんだろうな。
「ありがとうザイ。ひとまず一人でギルドに行ってみるよ。ノゾミ達との観光は明日にするよ」
ザイは当然だ、と言うなしたり顔でうんうんとうなづいている。
俺はコールからギルドの位置を聞き、一度そこに向かうことにした。
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