2話 世界を見渡す
2話目の投稿です!楽しんでください!
俺は、今心臓が止まりそうだ。
だって目の前に、伝説的存在のドラゴンがいるのだから……
俺は大声で叫びたい気持ちを抑えどうにか心を沈めた。
死ぬときに騒いで死にたくない。
俺は目をつむり静かにその時を待つ。
またも走馬灯は見えなかった。
──いや、走馬灯以前に痛みを1つも感じなかった。
おかしい。
そう思い、目蓋を少し上げて目の前の光景を見てみる。
いるのはさっきと変わらないドラゴンだ。
だが、こいつには他のドラゴンと違い、獰猛なオーラを一切感じない。それよりも何か優しい気持ちをまとっているようだ。
そんなとき、ドラゴンの方から声がした。
「キミ、すごいね?? ドラゴンを前にして悲鳴もあげず、澄まし顔でいるなんて」
「えっ!? ドラゴンが喋るのか?」
「違うよ」
そう言うと、ドラゴンの後ろから一人の少年が出て来る。
年は15歳くらい、少し女の子っぽいけど男の子だ。
その少年は軽く微笑み、俺に近づいてくる。妙な違和感、嫌な感じを感じるが、今はこいつを頼るしかない。
「僕はショウ。キミ名前は??」
「俺か? 俺は……」
ふと、前いた世界での名前が思い浮かぶ。
忌まわしき名前。ふざけた由来。そんなことが頭によぎる。
だが、そんなことより、今いるのはどこかだ。
今いるのは
──異世界──
すべてを変えてもいいのじゃないか?
俺は前の自分を捨てる。
今の俺にふさわしい言葉、これから俺がなりたい言葉。そんなぴったりな言葉を探す。
「ボウ…俺はボウだ」
その言葉が、いきなり頭に過ぎった。
ボウ
これからこの世界での新たな名前──
「じゃあボウ。キミはこのドラゴンの巣に何しに来てるんだい?」
「ここはドラゴンの巣なのか? 俺は別に来たくて来たわけじゃないんだ。気がついたらここにいたんだ」
ショウは俺の目をじっと覗き込む。そしてドラゴンの方に戻り、跨がる。
「わかった。信じるよ。ボウは何か他の人とは違うオーラを感じる。もっとキミのことが知りたい。だから僕の村に連れて行ってあげるよ」
「それはありがたいんだが、もしかしてドラゴンで行くのか?」
「あったり前じゃないかー!」
そう言うと、ショウはドラゴンの肌を擦る。多分それが、ドラゴンとの意思の疎通なんだろう。
すると、ドラゴンは俺の服の襟元をそっと噛み、俺を咥える。
「えっ!? ちょっと待て!!」
「やだね!」
「俺の心の準備をっ!! ってか、俺もそっちに乗せてくれよ!」
「まだ、キミのことをこの子は完全には信用してないみたい。すまないがそっちで我慢してくれ」
そんな馬鹿な……
俺がそう思っていると、ドラゴンは翼をバタつかせ、宙へと浮かびはじめる。
浮遊感がとても気持ち悪い。
飛行機やヘリコプターと比べ物にならない不安定さが、俺の気分を悪くする。
──だが、そんな気分も一瞬だった。
ドラゴンは俺に気遣い、ゆっくりと上昇していってくれる。そしてピタリと止まったとき、この世界の一部を見ることが出来た。
緑の大地、灰色の岩、肌色の砂漠、青い海、茶色い沼地。
その全てが周りを引き立てるとても美しい配色。
これが自然の美しさ……
俺の語彙力を持っても、表現しきれない美しさ、俺の世界ではあり得ないもの……
それがこの世界には存在する。
だから俺は思う。
『世界の美しさは表現できないことが美しさ』
だと。
そして俺にたんまりと景色を見せてくれたドラゴンは進み始める。
「すごいよショウ。これがこの世界なのか……」
「そうだよ。だが、これはまだこの世界の一部。僕はいつかこの子と、世界を全部見てみたい」
「いい夢だ。その夢、俺も付き合わせてくれ。俺もこの世界なら全部を見てみたい!」
俺は好奇心をあらわにして、子供のようにはしゃぐ。
生まれてからこれまでで、こんな感情に襲われたのははじめてだ。自分の身体全身にアドレナリンが回るのがわかるほど身体が熱くなる。
「ボウ! これからキミと僕は兄弟だ。時間なんて関係ない! やりたいことが同じで、行きたい場所が一緒ならそれだけでいい。僕たちは兄弟だ!!」
「ああ! そうだな!」
俺は彼の意見に賛同する。だが、俺のほうが年上そうなのに、弟みたいな立ち位置だな。
俺はその違和感の後味の悪さが嫌だった。
「なあ? どっちが兄で、どっちが弟なんだ??」
「そんなのないさ! どっちが兄だっていい。僕たちは頼りたいときに頼って頼られる、2人でやっと兄弟になるんだ。そんな、兄や弟なんて名称はいらない!」
俺はこの世界に来れて正解だと気づく。
あの世界にいたら見ることができない景色が見れて、出会えなかった兄弟がいた。
俺はこの世界で今日から『ボウ』としていく。
俺は○○○○じゃないボウだ。
そう決めてしまうことで、昔の俺を忘れてしまう。
それがただ忘れようとしたのではなく、本当に記憶から消えてしまっていた。
……だが、別にいい。
今の俺には不要な記憶。名前は2つもいらない。
そんなとき……
「グアァァァーー!!!」
そんなドラゴンの咆哮に俺の体制がぐらりと崩れる。
「うわぁぁ!」
俺は悲鳴をあげる。本当に落ちそうだからだ。
ショウはドラゴンの体を擦って落ち着かせる。
「私も忘れんなだってよ!」
「お前も、一緒に旅をするのに、忘れててごめんな! 俺らは3人で兄弟だ!」
「このこは女の子だよ?」
「別にそんなの関係ない! だろ?」
俺の微笑み混じりの声にショウは「だね」と応えた。
そんな会話をしていると、近くに集落が見えた。その上にはドラゴンが飛び交っている。
「もしかして……」
「そう、そのもしかして。あれが僕の村、龍使いの村『フライスト』」
「ドラゴンの巣と変わんねーじゃねーかよ!!」
俺の悲鳴混じりの言葉と同時俺たちはその村に降下していった。
読んでいただきありがとうございました!
これからも頑張っていきたいと思います!
まだ、ロリは出てきていませんが、後数話後に出てくる予定です。
ロリ好きの方、どうにか我慢して待っててください!!