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召喚士はロリをうむ  作者: 狸 一郎
12/25

12話 家族のために

 戦いの始まりはとても静かなものだった。

 誰も攻撃を仕掛けずにただ、互いの相手を見つめるだけだった。


 だが、そんな均衡が破れた。

 相手は声を発さず、動作をし始める。

 コールとザイは静かに見つめあい、二人は二手に別れて、両サイドの深い森の中に消えていく。


 「嬢ちゃん、あんたは俺とだ!」


 ザイはノゾミを誘って森に入っていく。

 ノゾミは俺に視線を送ってくる。

 俺は、コクリ、と頷きノゾミを見送る。

 彼は俺より、ノゾミのほうが力量が上だと見きったのだろう。

 だが、それで良かった。俺は多分、あのタイプより、コールのような、技巧派タイプのほうが適している。


 俺もノゾミが入っていった反対の森の中に消えていく。


 俺はコールを探す。

 森の音を体で受け止め、自分の感覚を全部行使して、コールを探す。

 風、匂い、音……

 それらを聞き分け、彼の正体を見つけ出す。


 だが、そんなこともせずとも彼の方から近づいてきてくれた。

 彼は何も警戒していないかのように、軽い足取りで近づいてくる。

 そして、彼は嫌な微笑みを浮かべながら、俺へちょっかいをかけてくる。


 「ねぇ、ボウさん? 貴方には守るべきものっていますか?」

 「ああ、俺には守るべき家族がいる」


 ノゾミ、フェル。

 それは俺の大事な家族だ。

 絶対に死なせたりはしない。俺の命に変えても守る。


 「だけど、あの子の目から見えたのも、君を守りたいという思いだった。だから私は思いました。君は守りたいと思っているだけで、守られているのではないかって」


 俺は、コールの言葉で我に返る。

 今、俺はこの村を守ろうとしている。

 だが、俺は家族に守られてこの旅をおくっている。俺は自分で、一体も魔物を倒していない。

 こんな俺が守る、なんていう言葉を使っていいのだろうか?


 これが俺の現実で、俺がしたいと思っている願望だ。

 そこから出るもの、それは俺がいらないものということだ。


 「わかってくれたかな? 自分の家族に守られている君が、その人数より多い村人たちを守り切れるわけ無いだろう?」


 俺は何も言わずに俯く。

 返せる言葉がない。なぜなら本当の言葉しか言われていないからだ。

 弱い魔物も倒せない俺が、こんな強いオーラを出してくるコールに適うはずがない。

 否定したい。だが、俺のキモチは否定したくないほど、素直だった。


 「わかってくれて何よりだ。君は別に悪くない。守ろうと思っただけでもすごいことだ。だが、次からはその重みというものをしっかりとわかって言ったほうがいい」


 コールは俺の肩に手を置いて、俺に語りかけてくる。


 俺はそんな時、最愛の人を浮かべた。

 俺はその人も守りきることが出来なかった。

 俺は誰も守ることが出来ないのだ……


 ──僕たちは頼りたいときに頼って頼られる


 そんなショウの言葉が、頭に思い浮かぶ。

 俺たちは兄弟だった。兄弟というのは家族だ。


 なら、それは俺ら、ノゾミやフェルたちの仲にも適応されるはずだ。


 俺が今やるべきことは一つ。

 俺は決心してコールの肩を掴み、睨みつける。


 「いや、俺はこの村を守りきるよ。まだ、守ることを知っていないが、守ってきた人を見てきた。だから俺はその人になれるはずだ。すまないがこの先は俺を倒してから行ってくれ」


 俺は今変わる。

 守られる側から守る側に。

 だが、それは口だけのものだ。だから今から俺は行動で示す。

 自分が守る側になることを……


 「ははは。流石だよ君は。守るためにはまず守ろうという意志を強く思わなくてはならない。だから君はもし守れなかったとしても恥じることはないよ」

 「大丈夫だ。どちらにせよ恥じることはない。俺は、いや、俺たちは勝つからな」


 俺はノゾミを思い浮かべ、彼に訴えかける。

 だが、そんな俺の目を見ても彼は一つも動じなかった。


 「俺たちは、か。それは私もだな。認めよるよ、君が誠に強い人だと言うことを」

 「俺は想像を超えるほどあなたが強いとわかったよ。だけど俺は負けない。自分を超えるために……」


 俺はそう告げ、鞘に納めていた剣を抜く。

 初めて持った真剣の重みが俺に深くのしかかってくる。

 だが、俺は負けない。

 その重みは守るべき人の重みよりかは遥かに軽いからだ。


 「じゃあ始めよう。俺が自分を超える勝負の時間を」


 コールも自分の腰に下げていた剣を抜く。

 その剣はいかにも高そうで、彼にお似合いだった。


 彼は、薄ら笑いをやめ、自分の本性を表してくる。

 俺はその顔に一瞬怯んでしまう。


 「これは、君が君を超えるだけじゃない。私が君を、そして君が私を超える試練の時間だ。だから私は手加減しない。殺す覚悟で行かせてもらう」


 彼は剣を構える。

 それを習い俺も剣道の構えを取る。


 だが、俺たちは一歩も動くことが出来なかった。

 それはお互いにすきがなく、お互いが強敵だと認めあってしまったから。


 俺は剣にかける握力を高める。

 そして、溜まっていた唾を飲み込む。


 「俺は負けない! この家族の父として、俺は家族を導く」

 「じゃあかかってきなさい。私が確かめてあげます」


 俺は、勢いよく一歩を踏み出す。

 自分を、そして彼をも超えるために……

どうだったでしょうか?

面白かったらうれしいです。


次の話からバトル!

と行きたいところですが、ノゾミパートと平行していきたいと思います。


この二人の頑張る姿に期待です!

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