11話 戦いの時間
俺らが作戦を決めた途端、廊下の方からドタバタと大きな足音が近づいてくる。
悪い予感が頭から離れない……
「長老! ど、奴隷商人がやって来ました」
「やはり現れたか……村人に避難しろと伝えるのじゃ」
その伝令員はまた来た道を駆け戻り、村人に避難を伝えていく。
この小さな村だ。
広まるのは一瞬だろう。
「よし、お主たちはワシに付いてきてくれ」
「あぁ、わかった。長老も戦いが始まったら避難をお願いします。その分野は俺たちに任せてください」
「お主たちに賭けよう。この村の命運を……」
長老は重い腰をあげる。俺たちもそれに習い立ち上がる。
そして立ち向かう、この村を守るため……
外に出てみると、遠くの方に人影が見えるというほど近づきていた。
その人たちの特徴は白いフードを被っていると言うことだ。
──だが2人、フードを被っていない人がいた。
どこか人離れしたオーラを感じる。
俺は念のためにと思い、長老の家から剣を借りてきていた。
まだ、俺がどこまで剣を扱うことができるかわからないが、触りならできるはずだ。
なぜなら剣道を習っていたことがあったからだ。
「ノゾミ、自分の魔法で剣を創っとけ。これは接近戦になるぞ!」
「了解しました。【ブレイブ】!」
彼女は詠唱とともに魔力を発し、その形を変形させていく。
その無の魔力は剣の形となり、彼女の手にピッタリと収まる。
そんな頃には彼らの顔がハッキリ見えるほど近づいていた。
「じゃあ始めよう。村の防衛作戦を!」
「はい! 頑張ります!」
俺たちは気合を入れるとともに、肩の力を抜ききる。
それが大人の対応というものだろう。
奴隷商人の集団は2人の頭領によってつくられているらしい。その2人が先陣をきり、そしてとてつもなく危険なオーラを出している。
一人の厳つい男は、体が大きく、体に無数の傷をつけている。
もう一人の男は、先程の人のように背は高いが、太さがどうも劣っている。
だが、この人の方が危険オーラが強い。警戒していなければ……
男二人は部下たちを少し離れた場所において、俺達の前まで歩み寄る。
「君たちは誰なんだ?」
「人に名前を聞くときは自分からって習わないませんでした?」
そんな俺の機敏きりかえしに、男二人は顔を合わせて笑い合う。
「すまないすまない。私はコール」
「俺はザイだ」
細いのがコールで、太いのがザイ。
俺は彼らの細部まで目を光らせる。弱点、クセを見つけようとしていた。
「俺はボウ。そしてこの子がノゾミで、狼はフェルだ」
俺は少し警戒を説いた表情をする。
──だが、これは全部演技だ。
そうすることにより、相手に自分たちを信用できる人と思わせるためである。
俺はもとの世界で演技というものには慣れていた。
というか、自分というのが一人の役者だったのだろう。俺はいつも自分を演じきっていた。
だから、俺は今も自分というものを演じきれている。
「で、そちらはなんのようで訪れたのですか? あの人の量を見ると、旅の途中とは見えないのですが」
「私たちはこの村の人々に用があって参りました。まあ、その用事とはあなたはもう察しているでしょう」
「それは奴隷を得るため、ですかね?」
コールはコクリと頷き、俺から目を離そうとしない。
流石にこれだけじゃ軽く警戒が和らぐだけなのだろう。
ザイはというと、ノゾミをじっと睨みながら、俺達の話に耳を傾けている。
「じゃあ、俺達といっしょですね。俺達もこの村の獣人を奴隷にしようと思っていたところなんですよ」
「それは誠のことでございますか?」
俺は首を立てに振り、本当だと言うことを伝える。
だが、こんな見え透いた嘘は一瞬で論破されてしまった。
「おかしいですねー?ここらへんは、私たち以外の商人は活動していないはず。それになぜ、商人の人の中に子供がいるんだ?そこがまず、おかしい」
コールの柔らかい口調が、一瞬でこわばったものになる。
そして、黙っていたザイも、重い口を開く。
「お前らがはなっから騙そうとしていたことは、わかっていた。もし戦う意志がないというなら、この場を立ち去れ」
見た目通りの厳つさからわかるような、ドスの効いた声で、俺らに訴えかけてくる。
「いや逃げません! 私たちはこの村を守ると決めたのですから!」
ノゾミは俺の代わりに代弁してくれた。
長老もそんなノゾミの姿を見て、オドオドとしていた態度を変えた。
「この村はワシらのものじゃ! 決してお主らのような部外者にはやらん」
よく言った。
俺は感心する。これさえ言ってしまえば、この村が敵対するということになるからだ。これで、戦いにかてば、晴れて自由になることだろう。
「いい答えだ。もし、これで引き下がっていたとしても俺はお前らを斬っていた」
「よし、じゃあ今から戦を始めるわけだが、私たちはこの二人で戦います。だからそちらも二人を選抜してもらえないでしょうか?」
俺らの中から二人。
それは実力的には、ノゾミとフェルだろう。
だが、俺は普通じゃあり得ない選択をした。
「じゃあこちらは、俺とノゾミで戦う。長老、フェルを連れて村の人たちのもとへ行ってください。フェル、村の皆を頼むぞ!」
フェルはワン!っと返事をして長老に抱えて連れて行かれる。
その目には確かに見えたのだろう。
この俺の自信が……
「では始めましょうか。命を賭けたダブルバトルを!」
そのコールの掛け声によって、戦いの火蓋は落とされた。
次からは勝負が始まります!
ボウのカッコイイ姿に期待してください!
あと、ノゾミはいつも通り可愛らしいです!