10話 作戦は……
「起きてくださいパパ!」
この可愛らしい声はノゾミ?
俺はノゾミの声によって起こされる。
いつの間にか座ったまま寝ていたらしい。
フェルはいつの間にか起きて、どこかに行ってしまっていた。
フェルならばある程度の知能があるので大丈夫だろう。
「おはようノゾミ」
「おはようございます! じゃなくて、長老様から呼ばれていますよ?」
その言葉に俺は寝ぼけていた脳のスイッチを切り替える。
多分、俺のことと、この村のことについての話し合いだろう。
「わかった。案内してくれ」
「じゃあコウたちが案内するよ! ねぇアイ?」
私を頼って感満載のコウと、それに流されて頷かされているアイが案内してくれるようだ。
俺はノゾミとフェルを呼んで長老の部屋へ向かった。
今いた部屋から、出て右に曲がって、真っ直ぐ行ったところに長老の部屋はあった。
「ジーちゃん! ボウたちを連れてきたぞ!」
「ありがとうコウ、アイ。お前たちはどこか遊んで来なさい」
長老の優しい声で彼女たちはこの部屋をでて、庭に出て駆け回っていく。
俺たちは長老の前にひかれた座布団に座る。
「すまないな、急に呼んでしもうて」
「別に構いませんよ。で、話はお互いの情報ですよね」
長老は俺の推測を肯定するように首を立てに振る。
話すこと、それを頭の中で整理する。
──だがここで1つ問題なのは、自分が異世界人で、なぜ追われているのかを隠すことが重要だ。
「俺はボウ。職業は召喚士だ。で、ノゾミにフェルだ。今俺らはワケあってある村に追われているが、この村には危害が及ばないと思う」
「そうか。まあ、そのワケについては追求しないでおこう」
物分りのいい人だ。
俺は長老に感謝して、彼の話に耳を傾ける。
彼は少し顔を強張らせて、語り始める。
「この村は別に人間が嫌いというわけではないのじゃ。ただ、獣人は力が強いということで、奴隷などにうってつけらしい。そのせいで奴隷刈りなどがこの村にやって来ることがあるのじゃ」
「その場合はどう対処してるんだ?」
そう、この村にはまだ住民がいる。ってことは連れてかれてないということになるはずだ。
「どうにか交渉して先送りにしてもらっているが、いつ痺れが切れるかわからない状態じゃ」
「そいつらはどのくらいの頻度でやってくるんだ?」
「前までは1ヶ月くらいという頻度だったのじゃが、最近は何日に1回とかのペースになっておる」
ということは今日現れてもおかしくない状況ということだ。
滞在させて貰っている以上、何か役にたつことをしたい。
「じゃあこの村に滞在させてもらっているお礼に、その問題、俺たちに解決させてもらえませんか?」
「そんなこと。これはワシたちの村の問題じゃ。そんなに気を使わんでも……」
「いえ、やらしてください。俺にいい考えがあるんです!」
そう、俺は1つ考えを思い浮かべていた。
それは、
俺が奴隷商人を成りすますという作戦だ。
この作戦が、別に上手く行くとは思っていない。逆に成功する確率はかなり低いだろう。
だが、この作戦の本領ていうのは、バレることにある。
まず、真っ先考えなければならないのは村人たちの安全だ。
だから、俺は成りすまし、相手の敵対心を俺に集めておく。
そこから戦闘を始めることにより、最大限、村人への被害を減らせるという作戦が本当の作戦だ。
多分俺ら3人なら、多少人数が多くても十分相手に出来るだろう。
その俺の作戦を俺以外の人に伝える。
「それはかなりの無茶な作戦だな。ワシはお主らがどれほどの力を持っているか知っていないから、成功率というのがわからんな」
「大丈夫だ。俺はともかく、ノゾミとフェルはかなりの力量を持っているからな。だが、この作戦で不安なことは、もし村人の方に敵が行ってしまったらと言う点だ。そこまで俺たちはカバーできないかもしれない」
そう、俺たちは3人。そして相手の人数はわからないし、人間なのでかなりの知識を持っている。
この知能、それが厄介な部分だ。魔物とは勝手が違う。
だが、そんな不安は長老の発言で吹っ飛んだ。
「大丈夫じゃ。ワシらはこれでも獣人種だ。力だけなら負けんよ。そのくらいは自分で守ってみせる」
流石だ。
誇り、それは自分の力の強さを示す糧であり、自分を表す象徴だ。
こんなに彼らの誇りが強くて安心した。
「じゃあそこは頼みます」
俺は立ち上がり、ノゾミを見つめる。
ノゾミはそのきれいな目を俺に向けてくる。
「じゃあ、開始だ。作戦名は、獣耳は渡さない、だ!!」
「はいパパ!!」
今回はどうだったでしょうか?
これからまた、戦闘がはじまっていきます。
楽しみにお待ちください!