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■最終話 夏のロダンとドジっ子

■最終話 夏のロダンとドジっ子


 

 

ソウタは大急ぎで待ち合わせ場所に向かいたい反面、額に冷えピタを貼り

なんだか落ち着きのないメイの事を気に掛けていた。

 

 

 

 

  (ダイジョーブなのかな、ほんとに・・・。)

 

 

 

 

なんだか今日はメイも急いで帰りたそうだ。

ちょっと心配だから取り敢えず途中まででも、メイを送ろうか。

 

 

 

 『ちょ、途中まで送るからさ。』

 

 

 

ソウタがメイのカバンを引き受け、隣を歩く。


チラっと横目で冷えピタ姿を見ながら『なんか急いでんの?ダイジョーブ?』

訊くとメイは、少しだけ俯きほんのり頬を染めて言う。

 

 

 

 『今日、お祭りでしょ・・・。』

 

 

その言葉にギョっとするソウタ。

 

 

 

その冷えピタ姿で、仮に冷えピタをはがしたとて、赤くボールのミシン目が

クッキリのその額で夏祭りに行くとは、さすがクイーン オブ ドジっ子。 

感心する。


というか、夏祭りに行くという事は方向は同じな訳で。

まぁ、丁度いいといえば丁度いい。

 

 

 

 『俺も行くんだわ、夏祭り。 俺、7時待ち合わせなんだけど、マネは?』

 

 

 

すると、頬を緩めてニッコリ『私も。』 と笑う。


随分、丁度いいもんだと思いながら、でもこのペースで歩いてたらコンビニで

私服に着替えるのはちょっと厳しいかもと、ソウタは頭の片隅で焦る。

 

 

 

 

  (結局ユニフォーム姿で、人生初の女子との夏祭りかよ・・・)

 

 

 

 

**さん(仮)がどんな格好で来るのか心配でならない、ソウタ。


でもNOT俺ヴァージョンだったら、ユニフォーム姿が逆に ”伝言に来ました

感 ”が醸し出せて結果オーライなのかもしれない。 

きっと、そうだ。そうに違いない。

 

 

ふと、隣のメイを見ると額の冷えピタに細い指を充て気にしながら、機嫌良さ

そうな姿。

 

 

 

 

  (友達とお祭り行くから、ジャージでいいのかな・・・?)

 

 

 

 

友達と行くにしても普通ジャージってことは無い気がする。

もし仮に、万が一デートだとしたらきっと相手のヤツ、ギョッとするだろうな。


なんて考えて、ふと何かが頭をかすめた。

 

 

 

 

  (・・・・・デート・・・・?)

 

 

 

 

立ち止まる。

立ち止まって、ゆっくり、隣りのドジっ子を見た。


え・・・

あれ? なんか・・・ なんだろ? なんつーか・・・

 

 

 

 『マネ・・・ 祭り、待ち合わせ7時っつった?』

 

 『うん。』

 

 

 

 『どこで? どこで待ち合わせ・・・?』


 『・・・神社の前。』

 

 

 

・・・・・・・・。

 

  

訊こうか訊くまいか、悩む、その一言。


でも、訊こう。

訊かねばなるまい。

 

 

 

 『・・・・・・・・・・・誰、と・・・・?』

 

 

 

すると、今までニコニコとほころんでいた頬が、急に真っ赤に染まった。

耳まで赤くして俯いて、せわしなくパチパチと瞬きを繰り返して。

 

 

 

 

  (・・・・・・・・・・・・まじ、か・・・。)

 

 

 

 

急に照れくさくなる。


あああ、その前に確認しなきゃいけない事が・・・あったんだ。

一番、重要な例のアノ件を。

 

 

 

 『・・・・・・・手紙・・・・・・くれた?』

 

 

 

緊張しすぎて、声がうわずった。

手の平に尋常じゃない汗。

スパイダーマンよろしく、なんか噴射出来そうなくらい。

 

 

すると、メイは俯いたままコクリと頷いた。

 

 

 

 

  (これは・・・俺の靴箱で間違いなかった。という事でいいのか・・・?)

 

 

 

念の為、念の為に確認する。

 

 

 

 『俺の、靴箱に・・・・・・・・入れてくれたんだよな・・・・?』


 『え?』

 

 

 

 

  (え? って言われたーーーーーーーーーー!!!


   違ったんだ、やっぱ隣の細マッチョ宛てだったんだーーーー!!!)

 

 

すると、

 

 

 

 『オオムラ君の靴箱に入れたつもり・・・ 私、間違ってた?』

 

 

 

 

  (ままままま紛らわしいっ!!!!!!!!!!!)

 

 

 

 

その後は、ふたり。 照れくさくて黙って神社に向かった。


もう合流はしてしまっているので、そんな慌てて神社に向かう必要もなく、

おまけに互いに思いっきり部活後の格好のままなので、着替えも不要で。

 

 

思わず、ぷっと吹き出したソウタ。

メイの計画性の無さと、当日に不注意でボールに激突するという運の無さに呆れ

てしまって可笑しくてガハハと顔半分を占める大きな口で、大笑いした。


隣りに立つメイも、ソウタにつられてクスクス笑う。

 

 

 

 

  (そうだ。 


   私、オオムラ君に大事なこと言わなきゃいけないんだった・・・)

 

 

 

急に真剣な顔でメイが口を開く。

 

 

 『オオムラ君・・・ あのね。』

 

 

 

笑っていたソウタが、そのメイの声色に急に身を固くして『はい。』 と立ち

止まった。

ピンと腕を伸ばし、小学生の体育のように気を付けをして。

 

 

 

 『私ね、金魚は好きじゃないから・・・ 金魚すくいはヤなの。』

 

 

 

  (・・・・・・・・え?)

 

 

 

 

 『ヨーヨー釣りも、何が面白いのかわかんないし。


  固いヨーヨーの方は、出来ないんだ・・・。』

 

 

 『ぁ、うん。 そうなんだ・・・。』

 

 

 

 

  (これ・・・なんの告白なんですか・・・?)

 

 

 

 

『それだけ。』 そう言って、メイの告白が終わった。

 

 

終わった・・・のか?

終わったらしい。


ぽかんとするソウタに、メイがどこか達成感にじむ顔を向け、次の瞬間。

 

 

 

 『あ!ちがった!! そうじゃなくて・・・』

 

 

開いたままの口が虚しいソウタへ、メイが続けた。

 

 

 

 

 『オオムラ君の笑う顔が、ね・・・


              私。 ・・・大好き、なの。』

 

 

 

 

ソウタの頭の先から足の先、一気に電流が走ったみたいに痺れた。


意味不明なメイの今までの言動が全て帳消しになるほど、その一言は可愛くて。

やたら可愛くて。可愛くて、可愛くて・・・

 

 

 

 

  (やべえ・・・・・・・・


          チョーどきどき、する・・・。)

 

 

 

 『ありがとう・・・ すげぇ。 嬉しい、かも・・・。』

 

 

 

ジリジリと赤くなってゆく感覚が、照れくさくて仕方なくて。

口許が勝手に緩んでいく。頬も、勝手に。 俺の頬筋どうなってんだ、オイ。

 

 

 

 『取り敢えず、お祭り・・・行こうぜ。』

 

 

すると、メイが『金魚は・・・』


『分かった分かった、金魚とヨーヨーとヨーヨーは禁止な?』

 

 

 

笑った。

大笑いした。


おもしれえな、コイツといるとって思った。

なんか、なんつーか。 夏っていいなって思った。

 

 

 

さあ、夏祭りにふたりで駆けだそう。

 

 

 

                              【おわり】

 

 


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