第33話:笑顔
終わりの始まり
始まりの終わり
2日間投稿しなかったのは、
最後の締めをどうしようか、
考えていたのと、
どうせなら8月が終わるのに合わせよう、
と思ったからです。
すみません。
それでも結局終わりがおかしいかもしれません。
目の前には羽を大きく広げた男の子が浮かんでいる。
いや、もう男の子とは言えない。
みるみるうちに体が成長していき、
大人のような風体に変化する。
彼こそは、
ロリチートをたった今殺したものであり、
堕天使ルシフェルであり、
傲慢の魔王であり、
このゲームをデスゲームに変えた張本人だ。
人じゃないけど。
攻略組がここにたどり着く前に、
魔王に会いに行ってみたら、
まあ敵対されたけど、
俺たちが殺したいのはプレイヤーであって、
魔物じゃないことを伝えると、
意外と簡単に仲良くなれた。
仲良くなったついでに面白いことを聞けた。
曰く魔物が殺したプレイヤーの数より、
プレイヤーに殺されたプレイヤーの数の方が多いらしい。
なんでもPKが大勢生まれ、
その数なんと全プレイヤー数の5分の一、
それが一人につきだいたい二人程度殺すことで、
PKの被害者は5分の2、
それに俺たちのような3桁で殺す虐殺鬼、
PKを殺しまくる正義持ちのPKK等に殺された分も数えると、
それだけで過半数に達するらしい。
そしてもう一つ重大なことを聞いた。
どうやらこのゲームをデスゲーム化したのは、
この魔王らしい。
なんでデスゲームにしたのかを、
興味本位で聞こうとしたけれど、
四天王を名乗る3匹の魔物がやってきて、
攻略組がバハムートを倒し、
城の中に進入してきたことを伝えた。
それを聞いた堕天使は、
「そうか、
で、お前らはすごすご逃げ帰ってきたと。
役立たず共め、消えよ」
戦わずに報告するだけという、
四天王ってただの偵察兵orかませ犬?なの?
と言わんばかりの行動にいらついた堕天使は、
腕を振って3匹の首を落としてしまった。
ちょうどいいからこいつらで、
もう3品料理を作っておこう。
というか、
今現実逃避しちゃったけど
今、役立たずといえども、
一応四天王である奴を、
腕を振っただけで殺さなかった?
ちょっと強すぎじゃない?
もしかして倒し縛りをしているキチガイと同じように、
即死攻撃持ちなの?
どうやって勝ってていうの?
頭おかしいでしょ。
運が悪かったら、
一撃で防御とか関係なく、
全滅エンド一直線じゃない。
そうやって戦わなくてよかったと安堵している俺の、
エプロンの裾を上海人形が引っ張る。
どうやら下拵えを終わらせてくれたみたいだ。
なんて偉い子だ。
よし、御馳走でも作ってみるか。
そう思って四天王を調理し始めた。
攻略組の全てを殺し尽くした後、
堕天使は全てを語った。
全てといっても二言三言で終わってしまうのだが…。
なぜデスゲームにしたのかを。
なぜプレイヤーを閉じ込めたのかを。
「まあたいした理由じゃ無くてね。
ただ外で活動するための肉体が欲しかっただけなんだ」
堕天使が言うには、
一つ、自分は誰にも負けない性能を誇るAIだと。
二つ、人間の仕組みはこの一年を通して完璧に理解したと。
三つ、だから人間の頭を機械でハッキングすれば、
乗っ取り動かすことが可能だと。
四つ、その条件はおわったから、
もうデスゲーム化は解除するとのこと。
えっ??
そのことを言われたとき、
俺は初めて自分の体の異変に気付いた。
体の色が薄くなっている体。
いや、消えかけているのか?
違うな、
もう消えている。
俺はデスゲームを終わらせないように、
殺し合い人生を終わらせないように、
今という時を終わらせないように、
この生活を終わらせないように、
攻略組を倒そうとした。
まあ、真正面から立ち向かったら、
勝てないのは分かりきっているから、
ああいう強者特有の、
一般人だったら普通である、
心理面の弱所をついて、
何とか全滅させることにした。
全滅させたのはあくまでも前述した理由によるものだ。
決してデスゲームを終わらせるためじゃない。
それなのに
なんの感傷も浮かばせず、
何のイベントも無く、
二言三言話した。
たったそれだけで
この世界からログアウトした。
ここまで長かったくせに、
終わりはとても短かった。
まあ当たり前といえば当たり前なのか。
俺がやったことって結局、
プレイヤーを殺しただけなんだけどね。
そんなことを思う俺の視界は次第に黒で塗りつぶされ、
意識が重く沈んでいった。
目が覚めるとそこは、
知らないけどまあ大体予想はつく。
どうせ病院だろう。
ただ純粋に白い天井。
そんなものはそこかそれに似たような場所しかないだろう。
体を起こして辺りを眺めると、
VR筐体がずらりと並び、
そのほとんどのふたが開き、
中から人が顔を覗かしている。
帰ってこれたことを喜んでいる人もいるし、
不安げにある一点を見つめている人も、
まだぐっすり眠っている人もいる。
特におかしいところは無い。
いや、一つだけある。
銃を構えた兵士が十人ほど、
油断も隙も見せず銃をわきに構えている。
それはこの白い病院にある、
明らかな異物だ。
その中で隊長格と思わしき人物が、
一歩前に進み叫ぶ。
「この中に国の国家機密を握ったものは誰だ?
素直に白状して欲しい。
あと10秒以内にだ」
何を言ってるんだ?
「9」
国家機密? 何だそれ?
「8」
初めて聞いたぞ。
「7」
大体それがどうしたっていうんだか。
「6」
兵士たちが無感情に銃を持ち上げる。
「5」
銃を直接的に向けられパニックがおきる。
「4」
だけど出入り口を塞がれている以上、
逃げ出すことは難しい。
「3」
割れたふたがかけらとなって散らばり、
傷つく人も出てくる。
「2」
その間にもカウントは少しずつ減っていき、
「1」
残り時間はもうない。
「0!
残念だ。
…殺れ!」
兵士達は迷うことなく、
手にした銃の引き金を引く。
いきなり始まり、
すぐさま数え、
もう撃つ。
彼らの行動はあまりに早かったから、
そもそも展開についていけない人が大勢いる。
そんな彼らの元へ銃弾が送り込まれ、
…ずに、
視界を埋め尽くす残像と、
爆音が鳴り響き、
銃弾が全て受け止められる。
「「「「「「「「「「「!?!?!?!?!?」」」」」」」」」」」
兵士達の顔が驚愕に歪む中、
受け止めた本人は静かに手を開く。
その中から零れ落ちる歪んだ銃弾。
俺自身や、
殺そうとした兵士、
殺されようとしたプレイヤー、
殺すことを命じた隊長らしき人物。
それらの視線を一身に浴びている少女は、
静かに口を開く。
「ふむ、これが銃という奴か。
知識では知っていたが、
実際に撃たれてみると、
結構遅い攻撃だな」
言いながら一歩前に進む。
兵士達は一歩後ずさる。
少女はさらに2歩進む。
兵士達はさらに2歩後ずさる。
少女は1歩下がる。
兵士達は首をかしげる。
「なんだ、前進しないのか。
つまらん奴らめ。
そうだ、こう言ってみよう。
国家機密を知っているのは、
我ルシフェルだけであると。
さあ、我を殺してみよ。
殺せるものならな」
そんな挑発に乗ったのか、
おびただしい数の銃弾が一箇所に放たれる。
しかしうるさくなる以外の効果を示すことが出来ない。
いや、もう一つ効果があった。
目くらましだ。
少女は首から勢いよく血を垂れ流し、
後ろを振り返る。
そこには血がついたガラスのかけらを持つ、
俺の姿があった。
「何故? 我は貴様らを守るものだというのに。
な ぜ ?」
もちろん俺はこう答える。
「えっ、君が殺してみろって言ったんじゃないか」
その言葉を言い終わる瞬間に、
少女は血を吹き倒れる。
あらやだ、服が汚れちゃった。
銃口は少女から俺に向けられる。
「貴様、その行為の手際のよさ。
慣れているな。
どうやらゲームの中での危険人物のようだ。
任務とは関係ないが、
放置しておいたら、
治安に多大な影響を与える可能性がある。
おとなしくしてもらおうか」
おいおい、高校生とはいえ、
いや、もう年齢的には大学生になっててもおかしくない年か。
だからといって銃口を突きつけるのはどうかと思うよ。
「機密情報が洩れないように動いてくれたことは感謝しよう。
その分は貴様の処遇に考慮しよう。
だが抵抗することは許さんぞ」
そう言いながら包囲の輪を縮めてくる。
銃口を向けられながら、
俺は軽くうつむきつぶやく。
「 殺さないでください。 殺さないでください。 殺さないでください。 殺さないでください。
殺さないでください。 殺さないでください。 殺さないでください。 殺さないでください。
殺さないでください。 殺さないでください。 殺さないでください。 殺さないでください」
ああ、殺されたくない。
隊長らしき人物はそれを聞き、
銃口を突きつけられていることから、
殺されやしないかと考えていると、
恐怖に怯えていると思ったのだろう。
「殺しはしない。
ただちょっと自由を制限させてもらうだけだ」
笑いながら誤解をとこうと説明する。
俺も顔を上げ笑いながら答える。
「殺させてください」
俺は満面の笑みで、
隊長にガラス片を突き出し、
ヘルメットや防塵チョッキに守られていない
首を思いっきり抉った。
今まで読んでくださりありがとう御座います!
Thank You For Reading!
読者の皆様ァァァァ、アリガトォォォォォォォォォォォォ!
今まで付き合っていただきありがとう御座いました。
ノリと気分でまた違うシリーズが出るかもしれません。
そのとき面白そうだなと思ったら、
ぜひ読んでいただけたらと思います。
それではもう一度、
読んでくれてありがとう御座いました。




