第32話:全滅
生まれ生まれ生まれ生の始めに暗く
~プレイヤーサイド~
「ちょっと待て。
初登場なのに、
一瞬で終わらせてしまうのか?
小さき者よ…」
このゲーム最強の竜は、
魔王を除けば最強の敵が、
今 ここに 出落ちした。
あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ!
オレタチ攻略組が城の中に突入すると、
最強の四天王にして竜王バハムートを名乗る敵が現れた。
そいつと戦おうと思ったら、
次の瞬間敵は倒れていた。
な…何を言ってるのか わからねーと思うが、
攻略組の俺も 何が起こったのか分からなかった。
常識がどうにかなりそうだった。
攻撃力とかスキルだとか、
そんなちゃちなものじゃあ 断じてねえ。
キチガイ勢の恐ろしさの片鱗を 味わったぜ。
まあ、味わう程度なら、
前にでかい剣で魔王を、
町ごとぶった切ったときに味わってるんだがな。
ほんと、常識が遠い国に旅行しちまってるぜ。
さあ、次の四天王の登場か?
い、いや 違う。
影が…影が三つある!!
まさか残りの奴らは一気に来たってことか?
そんな、ありなのか?
「ふふふふふ、どうやらバハムートの奴がやられたようですね」
「くくくくく、奴は我ら四天王の中でも最強、
ぶっちゃけ勝ち目がなかった」
「それが人間如きに負けるとは、
なんか清々するわ」
「ふふふ、バハムートはその武を笠に着て、
我らに高圧的な態度をとっていましたからね」
「それが今やこの様、
くくくくく笑いが止まりませんわ」
「だが笑っている場合ではないようだぞ。
人間どもからさっさと逃げんとな。
奴らはバハムートより野蛮で凶暴だから、
襲ってくるに違いない」
「ええ」
あ、逃げやがった。
追いかけることはしなかった。
それよりすべきことがあるからだ。
そして罠を蹴散らし、
罠を無視し、
罠を破壊し、
罠を漢解除し、
ついに玉座の間に続くと思わしき扉までたどり着いた。
その豪華さは、
色欲の魔王の部屋を飾っていた扉より、
大きく豪華で綺麗で重厚で、
何より禍々しかった。
恐怖と絶望と災禍を固めたような扉だった。
ああ…だったんだ。
あれを見るまでは。
何だよ、なんなんだよ。
一体何の目的であのペンギン柄テントは、
立てられいるっていうんだ!?
そして攻略組はそのテントをすぐさま包囲する。
団長はどこからかメガホンを取り出して、
テントに向かって叫び出す。
本当ならインベントリは、
回復系アイテムとかで埋める方針だったんだが、
団長はどうやら指揮をする関係で持ち込んでいたみたいだぜ。
「そこのテントに入っている奴、
さっさと出て来い。
故郷の母さんは悲しんでいるぞ」
最後のは何か違うと思うんだぜ。
~主人公サイド~
三つ目にスフレを作っていると、
外から何かがおかしい勧告が聞こえた。
あ~あ、せっかく新しい食材が三つも手に入ったというのに。
まあ、仕方ない。
おとなしく外に出よう。
俺とタロット、
それにスナイとアサシとルシフェルとマッド。
この六人は仲良く外に出た。
そしてこの場を仕切っているであろう団長に叫び返す。
「逆だ。
そっちこそ入ってきたらどうだ。
全員が入るスペースはあるし、
食事も全員分つくってある。
あ、タロット。
スフレの様子見てきて」
そしてごく自然な感じを装って、
テントの中に戻る。
一人のプレイヤーが、
好奇心を顔に浮かべながら入ってくると、
他の奴もぞろぞろと入ってくる。
そして彼らは目撃した。
湯気を立てておいしそうに並んでいる食事の数々を。
俺は仕上がったスフレを並べながら、
呆然としているプレイヤーを誘う。
「さあ、遠慮なくお食べ。
特に毒は仕込んでいない。
どうせ意味が無いしね。
それに腹が減っては戦は出来ぬ。
まさか空腹なままでラスボスと戦う気かい?」
そう言うと一人また一人と、
席に座るものが出てくる。
そこから後は早かった。
日本人の集団心理というやつは、
他の人が座っていくのを見ると、
どうしても座りたくなってしまうものらしい。
20分後、俺たちも含めた全員が席に着いた。
「それじゃあ、
食材に感謝を込めて、
いただきます」
「「「「~略~「「いただきます」」」~略~」」」」
数百あった料理も、
75人+俺たち6人、
あわせて80人強いたから、
数十分後には跡形もなく消え去っていた。
「ところでみんなはちゃんと食材に感謝したかな?」
俺は突然、そう問いかける。
その問いには班長が返事を返した。
「ああん、たかがデーターに感謝しろだと?
ふざけてんのか?
それともなんだ?
料理人に敬意を払えとでも言いたいのか?
調子乗ってんじゃねーぞ」
その言葉に対して、
俺はヤレヤレと首を振る。
「ふぅ、何か勘違いをしているようだね。
たかがデーター?
何を言ってるんだ?
立派な命じゃないか。
生命がそこにある。
君はそれを奪っていると言うのに、
何も感じないとは…」
それを聞いて団長などは何かに気付いたようだが、
班長はまだ何も気付いていないようだ。
「はっ、確かにNPCは精巧に出来ちゃいるが…」
「一つ聞かせてくれ。
この料理には毒は入っていないと言っていたな。
ちなみに材料には何を使ったのかな?
食材アイテムか? それとも魔物の肉か?
それとも…」
「基本人肉だね♪
あと少しだけど、
四天王の肉も使っているよ」
ここで一つの事実をはっきりさせておこう。
俺は、いや、大体のプレイヤー。
魔王を除いた敵キャラは、
もはやAUにダメージを与えることは不可能だろう。
だけど逆に考えるんだ。
殺さなくてもいいじゃないかと。
俺は顔を真っ青にして、
嘔吐しているロリチートの後ろに回り、
首に何度もナイフを振り下ろした。
遅覚以外を全て発動させて。
ただ刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して
刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して
刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して
刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して
刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して
刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺して
気が遠くなるほど刺し続けた。
その間に嘔吐していたり、
気分が悪くなったりして、
満足に立てないどころか、
気分が悪すぎて倒れたプレイヤーを、
タロット以下5人は殺しまわっていた。
そしてあまりの激痛に倒れたロリチートを、
ルシフェルが止めを刺したことで、
攻略組は全滅した。
誰も玉座のまで戦うと入っていない。
そもそもメンタル面を鍛えていない奴らに勝ち目はない。
死に死に死に、死んで死の終わりに冥し




