第30話:色欲
ハ ジ マ リ☆
俺らはレアアイテムを失った悲しみを拭い去り、
戦場から立ち去った。
そして向かった。
恋情咲き乱れる花街へと。
…別にソッチ方面をやりに行くわけじゃない。
大体ああいうことをするより、
普通に殺った方が気持ちいいし。
まあ、魔王がやられたのなら、
他の魔王も狙われる可能性も高いし、
まだ友好的だった色欲の魔王のところに行ってみるだけだ。
ただ…ちょっと頬を赤らめてるタロットは、
置いていった方がいいだろうか?
だけど何でこうなった?
前回ここに来たときとは違い、
魔王に会いに来たといったら、
別の道を案内されて、
豪華な道に来たはいいものの、
通り道を触手が生えたスライムが塞いでいる。
確かローパーだったっけ?
確かにエロゲーでよく出てくるから、
色欲の魔王の所にいること事態はおかしくないわな。
「だけど、邪魔だ」
退いてもらおう。
通路を完全に塞がれていると、
通れないんだよ。
「ふはっはっはっはっはっは」
なんだよ、
ローパーの癖に子供みたいな声を出してるんじゃなねえよ。
「ここを通りたければ俺の屍を超えていくッス」
よし、
元々魔物を殺すのがプレイヤーだ。
何の遠慮もなく屍にしてやろう。
ローパーというのは、
あっち方面でこそ強いが、
やわらかい触手を切れる攻撃力があれば、
基本的に瞬殺可能な雑魚だ。
それに俺と同じ痛覚を含めた、
感覚上昇系で戦意を無くすのを得意としているから、
俺にとって好都合だ。
俺はスキルで感覚系は遮断できる。
一瞬で終わらせてやるよ。
そう思っていたのが十分前。
そしてさすが魔王の部屋の番人だと、
敵の強さをかみ締めている今。
俺の記憶では、
数十本ある触手からは、
見るからに気持ち悪そうな液体を出していた。
徹甲弾でさえ無理な勢いで、
まるで壁?そんなのあったのと言わんばかりに、
壁越しに撃たれるビーム射撃。
いや、途切れることが無いから、
もはやレーザー兵器というべきか。
しかも屈折、ホーミング、爆発も思いのまま。
逃げ場のなくなった俺が、
”君と僕だけの世界”を使っては解除することで、
無理やりビームの間隔をつくって何とか生き延びてはいるが、
それも時間の問題だ。
一応反撃として、
スナイが射撃をおこなっているものの、
ATフィールドにしか思えない力場に防がれて、
効果を発揮していない。
えーと、なんですか? あれですか?
体長が3メートルに縮んだ第五使徒か何かですか?
どうやって戦えと?
ロリチート連れて来い。
そうじゃないと戦いにならん。
少しするとタロットが被弾した。
かすっただけなのだが、
それでも効果はあった様で、
一瞬大きく痙攣した後に、
動かなくなった。
そしてそれに気を取られていると、
俺たちも全員被弾してしまう。
そして俺たちの冒険は終わった。
と思ったのだが、
ちょっとした快感が溢れたぐらいで、
特にダメージは無かった。
「もしかして喰らっても大丈夫なのか? これ」
「どうやらそのようだね」
それを見てローパーは慌て始める。
「う、嘘ッス。
そんな事あるわけないッス。
アスモデウス様の体液を混ぜて撃ったビームッス。
無機物ですら興奮して溶ける代物ッス。
どんな不能野朗も女性もイチコロのはずッス。
ありえない、ありえないッス」
ああ、確かに、
インベントリの中に入っている人形やアイテムでさえ、
頬を赤くして悶えていたりするのだから。
なにこの上海、カワイイ。
まあ、愛でる時間は後にしようか。
「違う、違うんだよ。
そもそも前提条件そのものが違ってしまっている」
「何が違うって言うんスか?」
俺たちは興奮をしなかったわけじゃない。
ただ最高ですらない興奮では、
絶頂すらしない。
「「「「たかがその程度の快感が、
殺す快感に勝てると思うな」」」」
まあ、その方程式は、
俺たちのような一部のキチガイにしか、
当てはまらないのだが。
ビームを撃たないローパーはただのローパーだ。
瞬殺されて溶けていくローパーを踏みつけながら、
俺たちは重厚な扉を開ける。
そしてすぐに扉を閉める。
「何ですか? ウワァア」
不用意に扉を開けたスナイは俺と同じ運命をたどる。
扉の先は、
あまりにもドきついピンク。
そしてむせ返るほど濃厚な香り。
いまだに頭はクラクラして、
状態異常めまいがステータス欄に記入されている。
調理用のマスクと作業(PK)のときに使うお面で、
なんとかまともに動けるようになった。
ガスマスクを装備したマッドも行動可能だが、
後の二人は脱落した。
仕方ないのでタロットのそばに寝かせておいた。
「あらぁ、久しぶりねぇ。
もしかして私とイきたいのかしらぁ?
…そんなわけはないわね。
おおかたバアルンの事で来たんでしょ。
一応相手の考えてることぐらいは、
仕事柄分かるしねぇ。
一つ言っておくわぁ。
必要なことはもう既にまとめてある。
受け取りなさい」
言ってる最中に書類アイテムがプレゼントされた。
「本当はぁ、
受け取る代わりに、
私と気持ちよくなりましょ♪
って言うつもりだったのよ。
でもねぇ…もうそんな時間はないわぁ。
後ろに隠し通路があるから、
そこから早く逃げなさぁい。
私は色欲の魔王にして女王よ。
興奮している連中が、
この町に近づいて来るのがよく分かるわぁ。
逃げる時間ぐらいは稼いであげる。
後はそれを読んで、
私の意志を、
バアルンの意志を、
リーちゃんに託してチョウダイ☆
ヨロシク♪」
言い終わった瞬間、
タロットとアッシー<後で聞き出した>、スナイを格納した、
ローパーが俺たちを通路の中へと押し込む。
俺たちが町から少し離れた場所にある、
小さな池から顔を出したとき、
俺たちをそこまで運んでくれたローパーは、
少しずつ体が消え始めていった。
「もうこの様子じゃアスモデウス様は長くないッスね。
最後にあんたらに会えてよかったッス。
俺の生まれてきた理由を理不尽な強さで蹴散らすことなく、
知恵と力と謎現象で立派に立ち向かってくれたッス。
嬉しかったッス。
あんたたちも、
ちゃんと彼女ができると
い い ッ ス ね~☆」
その言葉を最後にローパーは消えていった。
その最後の一言はウざいと思う。
”キャラ?紹介”
スーパーローパー
ローパーが色欲の魔王の力を取り込むことで、
いろんな意味で凄まじいビームと、
愛なき攻撃は全て防ぐシールドを手に入れた。
決してATフィールドではない。
若いときにkの色欲の屋敷に来たため、
何故か若者言葉を好む。
ホモは大好物である。




