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頑張れ!笑顔なPKくん!  作者: ミスタ
24/33

第24話:万能

主人公が街中でもPK出来るようになる為のくだりがようやく終わり、

そして新たな道が始まった。

 まあ、立ち話もなんなので、

適当に応接間に案内する。

でも一つ言っていいだろうか?

俺の拠点は確かに洋風だ。

だから家に入るときに、

靴を脱げとは言わない。

だからといって、

百足に乗ったまま入るのはおかしいと思う。

体が細いから、

入る分には問題なさげだけど、

床を脚が貫いちゃってるんですけど。

どうしてくれんの?

「それで師匠を迎えに来るって、

どういう意味ですか?」

「わにゃ、それについては、

クエストという形で説明するのです」

冷や汗が止まらない。

嫌な予感しかしない。

受けるなと本能がささやいている。

「ぽにゃ、私ことMr.TBS三世は万能。

それぞれ何かしらの技能に極化した存在が、

それぞれ何かしらの権能を所持した存在が、

どれも私自身なのです。

分かったですか?」

えーと…、

戦闘やら生産やら商売やら、

その道では化物と呼ばれる超人連中の集団が、

Mr.TBS三世っていうこと?

「ねにゃ、そんな認識で大体あっているのです。

そこにシステムが関与した形なのです」

そういいながら、

何かが書かれた羊皮紙を押し付けてくる。

これは…クエスト用紙?

最近は全然使ってないから、

懐かしささえ感じる。


”クエスト:私の回収”

あと8人居場所の分からない私がいるので、

回収ヨロ。

報酬はピースエリアの無効化権。

違約金はHP100%。

期限は一ヵ月。


「もにゃ、これを持っていけば、

近くにいるかどうか?

誰が私なのかが分かるのです。

さあ、行くのです」

矢印の形をした金属を、

ぶら下げただけの紐。

しょぼっっ、しょぼすぎるよ。

製作者Mr.TBS。

あの自称天才か。

それだったら効果は高いんだろうけど、

もうちょっと見た目をどうにかできなかったのかねえ。

あまりに酷すぎるよ。


 それからはまさに地獄の日々だった。

矢印の向く方向を目指して、

ゴトーと一緒に全国行脚。


 一人目は剣士っぽい人。

そこで俺はまたもや人生で初めての経験をする。

しかし何度でも言わせて貰うが、

刀で斬られた後に、体がゆっくりずれていって、

数秒後に真っ二つになる経験なんかしたくなかった。

さらにその後上半身を傷口にぴたっとあわせたら、

そのままくっつくという謎現象。

何とか説得して戻ってもらった。

常識よ、戻って来い。


 二人目はメイド。

屋敷に侵入しようとした瞬間、

素手で空間らしきものを引き裂いて出現。

まさかワープにも力ずくがあるとは思わなかった。

そのまま呆けている俺は吹き飛ばされ、

屋敷の外どころか街の外へ飛ばされた。

ゴトーと一緒に飛んでいると爽快感があるが、

こうやって飛ぶと恐怖しか湧かない。

仕方が無いので屋敷の主人に、

この前得た大金で横面を引っぱたき、

メイドさんを解放。

そして戻ってもらった。

常識はどこに行ったんだ?


 三人目は鉱員。

山をえっちらおっちら運んでいるのを発見。

そうだよね、

インベントリに入らないから、

自分で運ぶしかないよね。

何かがおかしいような気もしたが、

いや、おかしいことを認めたくないだけだ。

この子も雇い主に金を払って解決。

解決はしたんだから、

山を手放したせいで、

危うく生き埋めにされかけたことは、

忘れよう、そうしよう。

常識よ、戻ってきてくれ。


 四人目は巫女さんだった。

見た目はおとなしそうだったので、

やっと楽にいけそうだと思ったら、

PKスキルを持っているせいで、

そもそも神社に入れないことが発覚。

なんとか紙面でやり取りをし、

神主さんとの壮絶なバトルの果てに、

何とか戻ってもらった。

代わりに俺が三日間巫女の代理をすることになった。

俺は男なのに。

常識と貞操観念が消えそうになった。


 五人目と六人目は奴隷になっていた。

金で解決しようかと思ったけれど、

向こうは王侯貴族、金じゃどうしようもなかった。

コロシアムで優勝すればいいといわれたけど、

初戦の対戦相手が金を稼ぎに来たAUことロリチート。

瞬殺された。

なんでここにいるの?

だけど運のいいことに、

AUが剣を振り回したから町が全壊し、

結果として二人を戻らせることが出来た。

ん? 何かおかしいところがあった?

剣を振り回しただけじゃ、

町は全壊しないって?

それは普通の長さの剣だったらの話だよ。

鞘に収まっている段階だと、

綺麗な短剣だったのに、

抜くと光の柱が…、

気が付いたら町が綺麗さっぱり消えていた。

プレイヤーも常識を捨てやがった。


 七人目は魔女だった。

まあ鬱屈とした森に住んでいるのはまだいい。

古そうな家に住んでいるのもまだいい。

顔を布で覆ったりして、

肌を見せないようにしているのもまだ分かる。

だからといって俺を鍋の中に入れて煮ていいわけじゃない。

俺を鍋でぐつぐつ煮ても意味ねえぞ。

5日経って体の麻痺が取れるなり、

ゴトーを生贄にして、

何とか説得し戻ってもらう。

この日俺は、

ゴトーの信頼の一部と、肝臓を失った。

やめて、もう俺の常識度は0よ。


 最後は自分で帰ってた。

涙が出るほど嬉しかった。


 クエスト報酬をもらい、

早速町に行く。


 ロリチートが町の入口にいた。

涙が出るほど悲しかった。

泣く泣くあきらめた。

それからというもの、

町へ襲撃しようとするたびに、

あのロリチートがいる。

せっかくのクエスト報酬が無駄になったストレスは、

適当なプレイヤーで晴らさせてもらおう。

さあ、誰を殺ろうかな…。


~プレイヤーサイド~

えっと、ナリタって名前です。

最近親友のソノカに誘われて、

変な集団に入ってしまいました。

親友としては止めた方が良かったのかもしれませんが、

ソノカとの友情がなくなっちゃうのが怖くて、

結局ずるずると…。

はぁ、こんなのじゃ駄目なのは分かってるんだけど、

悪事の片棒を担いでいるってのは分かってるけど、

それを正そうとする行動力なんて私には無い。

よく母さんからは”あなたは意志が弱い。

もっとしゃきっとしなさい”って言われるけど、

その母さんとはもう一年も会えてないから、

心細くて、心細くて。

まあ、こんな風だから、

今もこうやって私は…。

はあぁぁぁぁぁぁぁ。

その集団からは任務を命令されているけど、

ぶっちゃけ逃げ出したい。

でもあそこにはソノカもいるし、

それに逃げたとしても追っ手がかかりそう。

もう、なんか、やだなぁ。

はぁぁぁぁぁぁぁぁ。


「ねえ、お姉さん。

なんかため息が多いけどどうしたの?」

「うん、ちょっといろいろあってね。

…ん? 君だれ?」

振り向いた先には顔を、

かわいいお面で隠してはいるけれど、

それを不審に思わせないほど、

かわいいぺんぎんのアップリケ。

ペンギンさんのお面。

声と身長から判断すると、

これは…ショタ!!

なにこれカワイイ♪

小さなコックさんは、

自分を料理人と名乗る。

そして「ねえ、どんな料理が好き?」と、

可愛らしい声で質問してくる。

私個人としては、

もうこのままこの子を、

いろんな意味で食べちゃいたいけど、

だれが見てるか分かんないし、

任務を終わらせちゃおう。


 私の任務は弱そうなプレイヤー最低一人、

ある場所まで誘導すること。

この任務が終わったら、

ソノカに頼み込んで、

このコック服を貰おう。

そして宝物にするんだ。

私はそう決意した。

そしてそんな感情などおくびにも出さず、

「料理を作ってくれるなら、

私の他に食べさせてあげたい人がいるから、

その人の分を作ってもらっていいかな?」

とコックさんに言ってみる。

すると簡単に「いいよ」とうなずく。

こう素直な感じもまたかわいい。

ああ、今の話が適当で、

ある場所に連れて行くのが目的だとは、

この子は思ってもみなかっただろう。


 そうして平原を抜け、

森の中を進んでいく。

後ろでコックさんが、

のんきに鼻歌を歌っている。

少し下手なところもまたかわいいというものだ。

そしてさらに歩いていくと、

少し大きな広場につく。

「ちょっと、その人を呼んでくるから、

少しだけ待っててね」

私がこの場所にいると、

戦闘に巻き込まれちゃうかもしれないから、

そう言って逃げようとすると、

袖をつかまれて、

「えー、いかないでよ」

と、言ってくる。

ああん、もうかわいすぎる。

でもそんな至福の時間はすぐに終わった。


「おい、もういいぞ。

あとは俺たちの仕事だからよ」

そう言いながら数人のプレイヤーが、

全員武器を構えながら、

広場の中に入り込んでくる。

なかには剣の腹を舐めたりして、

完全に世紀末の住人と化しているプレイヤーもいる。

「ねえ、これはどういうこと?」

どこか不思議そうで、何故か嬉しそうな、

疑問が投げかけられる。

その問いには、

集団のリーダーが答えた。

「そうだな、冥土の土産に教えてやろう。

その女はお前を嵌めるためにここまで連れてきて、

俺たちは今からお前を殺す。

そう、お前はここで死ぬんだよ。

人類の優越種であるこの俺たちに、

殺されることを感謝しな。

ああ、殺してくれてありがとう御座いますってな」

はぁぁぁぁぁ、なんか醜い。

なに自分から優越種って名乗ってるんだろう。

俺たちはPKだから殺す立場だ。

だから食物連鎖の上にいる。

だから俺たちは優越種だ。

って小学生じゃあるまいし。

まあ、言うと何されるか分かんなくて怖いから、

絶対に言わないけど。

「うん、ありがとう」

…へっ??

いや、何で感謝するの?

「ところでお姉さん、そろそろだと思うんだ。

なんか背中が痛くないかい?」

背中? 特に痛くないけど。

なんかくっつけたのかな。

恐る恐る触ってみる。

触ってみて気付いた。

くっついてるんじゃない、逆だ。

背中の肉がごっそりと抉り取られている。

なんで抉られて…。

「なんかごちゃごちゃ言ってるけど、

とにかく死ねエエエエ」

プレイヤーたちが、

いや、PKたちがコックさんに、

それぞれ攻撃を仕掛ける。

連携が全然取れていないその攻撃は、

あっさりと回避される。

「おい、避けるなよ。

おとなしく殺されろ」

そう言った男の目に箸が突き刺さり、

抜き取られた目玉はなぜか、

みずみずしい野菜へと変化する。

「君からは小麦粉、君からはベーコン、君からはチーズ。

君からは違う野菜、君からは…、

さあ、こんなに食材プレイヤーもあることだし、

おいしいピザを焼きましょうか」

指を順々に向け、

わけが分からないけど、

とにかく危険なことを言い放つコックさん。

とにかくここにいたら食材になってピザの具にされちゃう。

そう思って逃げようと踵を返した瞬間、

背中から激痛がはしる。

そうして痛みにあえいでいる間に、

次々とPK連中は抉られ刺され潰され取られ、

でもまだうめき声を上げてるって事は生きている。

あんな体になっても生きている。

そしてコックさんが一歩、また一歩私に近づいて来る。


「ありがとう、そしていただきます」

そして私はあの感謝が、

食材として向けられた感謝だということに気付いた。


”キャラ紹介”

ナリタ<本名:成田 庭>

普通は成田と呼ばれるが、

親友のソノカにだけはテイと呼ばれる。

BL、ショタが大好物である。

本人はそのことを隠しているつもりだが、

男の子をみる目が明らかに興奮しているため、

ばればれである。

彼女からはおいしい卵をいただきました。

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