表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
頑張れ!笑顔なPKくん!  作者: ミスタ
19/33

第19話:襲撃

始まったら楽しいよね。

 モウドウニデモナレバイイ。

俺がそう思っても無理もないな、と我ながら思う。

だってこんなことになるなんて思ってもなかったもの。

ちょっと攻略組に地力で大きく引き離されてるから、

軽く野営地でも襲って、プレイヤーを狩りまくろうとしただけなんだけどな。

一人だとしても深夜に低レベルな所だったら、

ステータスの差と死の雰囲気でどうにかなる。

そう思っていただけなのに、

襲撃メンバーが一人増え、二人増え、三匹増え、四体増え、五頭増え、

バアル様まで参加して、

ついにパーティーの参加者の半分で大きな町を襲撃することになった。

本当になんでこうなった。

それに大きな町だと問題点もある。

”ピースエリア”の存在だ。

町そのものがピースエリアだから、

ピースタウンと呼ぶ人もいう。

ともかく町の中は状態異常は入るのだが、

ダメージは基本与えられない。

基本って言ったのは処刑場の中のように、

ダメージがはいる例外的な場所もあるからだ。

しかしその弱点もすぐに消え去る。

バアル様が町の襲撃クエストをつくったことで、

時間指定はあるものの、

ピースエリアが一時解除された。

まあ、クエストとして襲撃する予定の町のプレイヤーには、

連絡がいっているだろうから、

警戒は厳重になるだろうし

もしかしたら近くの町からも、

増援が来るかもしれない。

でも魔王が来ることまで想定はされているのだろうか?

そうじゃなかったらただの虐殺になるぞ。


 襲撃される町に存在する

全てのプレイヤー諸君。

汝らに冥福と食物としての感謝をここに捧げよう。

今宵その町は地図から消える。


~プレイヤーサイド~

ったく暇なんだよな。

いくらキチガイ連中と攻略組に恐れられるこのアカベエでも、

1ヶ月に一度は休んでおかないと、

なんとなく調子が悪くなる。

攻略組も1週間に一度くらいの休養を推奨してるし、

365日いつでも暴れられるのは、

あのチート姫のAUだけだ。

だけどいざ休むとなると、

町での過ごしかたが分からねえ。

宿屋でゆっくりする? 論外だ。

じっとしてるのは性に合わん。

この前βテスターのアルカナ使い<笑>が、

合コンとやらに誘ってきたが、

この世界で合コンして何がしたいんだか、

さっぱりわけが分からねえ。

もともと現実リアルでも仕事が恋人で、

そういう浮ついたものには手を出したことが無いから、

偏見が混じってるかもしれないがな。

それはともかく暇だ。

町に何があるか、

町に誰がいるか、

町で何が買えるか、

町で何が楽しめるか、

俺はまったく知らない、

知ってる人も知らない。

今までそんな生活をしてきたからな、

俺は。

ああ、そういや現実リアルでも、

仕事仕事で妻と子に何もしてやれず、

1ヶ月に一回ほどあった休みでも、

何をしていいか分からず、

どこに行っていいか分からず、

どうしたらいいのかも分からず、

肩身が狭い思いをさせちまったなぁ。

なんで俺はこっちに来てまで、

同じ生活を続けているんだろうか?


そんな時、俺の頭の中にクエスト情報が流れてきた。


…ふふふ。

ふはははっはははははははははは。

そうだよな、俺の居場所はやはり戦場だ。

3時間後までに救援要請と迎撃準備を整えねば。

幸いにしてこの町の領主から信任が厚いプレイヤーを一人知っている。

そいつから話させれば、軽く扱われることはねえはずだ。

魔王バアル=ゼブルだったか。

首を洗って待っていろ。

”絶対死域”アカベエの名をその身に刻み込んでやるからよ。

これは確かに忙しいが俺の性に合っている。

現実でもそうだった。

昔から俺の帰りを桃子と食男は待っていてくれた。

だから今でも俺のことを待ってくれているのだろう。

帰ったら二人のことを抱きしめてやろう。

頑固で仕事しか能が無い俺は、

そのくらいしか出来ねえが、

その分しっかりと抱きしめてやればいい。


 さあ、忙しくなるぞ。


~視点は元に戻る~

 誰かが死亡フラグをたてたような気がした。

別にそういうスキルを持ってるわけじゃないから、

気のせいかもしれないけど、

なんとなくそう思った。

それはさておき、

今、俺たちはなんと!

襲撃する予定の町”ホロビオン”に来ています。

最初バアル様に、

”襲撃は三時間後に行う。

それまで兵站を整えるなり、

装備を整えるなり、

パーティーのあまった料理をタッパーに詰めるなり、

英気を養うなり、

腹を満たすなり、

各自好きに過ごせ。”

と言われた時には、

少しぶらぶらしようと思っていたけれども、

しばらくしてから気付いた。

…ごめん、嘘です。

タロットに指摘されて気付きました。

俺たちプレイヤーなら、

ダメージこそ与えられないものの、

町の中に入ることは容易なことだと。

そうと決まれば即行動。

装備を整えると、

すぐさまその町に向かった。


 もう夜だから大通りには、

プレイヤーやNPCの数は結構少ない。

これはまだみんな寝てるのかな?

…そう思っていた時期が俺にもありました。

わずかにいる人の流れに逆らわず、

城門の方へ足を運ぶと、

そこには人、人、人。

城壁の上には魔術師と弓兵がひしめき合い、

高さが1メートル高く、

攻略難易度は数十倍高くなっている。

城門の前には装備を整えたプレイヤーが勢ぞろいし、

その後ろには一糸乱れず隊列を組んだNPCの兵隊、

そのさらに後ろには医療ヒーラー部隊が待機している。

どこかの店だったであろう場所は、

仮の襲撃対策本部となり、

いちいち領主の館まで指令を運ばずとも、

迅速に指令が出せるようになっている。

城門は一つしかないから、

まともな方法ならここを攻めるのには苦労しそうだ。

…まともな方法ならね♪


 タロットが発案した計画によって、

ちょっとした小細工をした後、

本部の方に向かう。

中にはキチガイ連中の一人である、

アカベエという奴が指揮を執っていた。

くそっ、キチガイ連中が何でここにいるんだ?

あいつらが一人いるだけで、

戦況を大きく覆しかねないぞ。

タロットは普通にアカベエに近づくと、

軽く手を上げる。

「よう、絶対死域アカベエ

忙しそうだな」

「ああ、アルカナ使い<笑>か。

どうした、女でも漁りに来たか?」

「なんだ、あの堅物が合コンに興味をお持ちで?

しょうがないなあ、

これを無事に乗り切ったなら、

次の合コンに連れて行ってやるよ」

「残念だが俺は妻子もちだ。

冗談でも行くわけにはいかねえよ。

それはさておき何の用だ?」

「そうだな、

俺の名を言ってみろ」

「…そういうわけか」

「そう、俺の魔方陣マスタースキルを、

こうやってスタンプにしてみた。

スタンプだから1日もすれば効果は切れるが、

襲撃には十分だろう。

少し効果が弱まったところで、

前線で通用するHRハイレアスキルだ。

生存率はぐっと上がるだろうよ」

「…感謝する」

そういってアカベエは指示を出し、

次々とスタンプを押させていった。


 どうやら仕込みは上手くいったようだ。

あのスタンプには、

戦車と力という、

STRを増大させるアルカナを、

二つ刻むことにより、

相乗効果ですさまじいバフ効果を生み出している。

まあ、スタンプだから逆位置である、

暴走や自惚れが発生しやすくなるけどね。

そしてもうひとつ、

これが重要で4時間後に無自覚で設定した、

”悪夢”が刻んである。

交戦してからしばらくしたら発症して、

とてもおもしろく作用してくれるはずだ。


 まあバアル様がいるから、

それまでもつかどうかの問題もあるけれどね。

”キャラ紹介”

桃子&食男

アカベエの妻と息子。

忠犬ハチ公の如く待っているのが好きな妻で、

同じく犬のように付き合ってくれと、

付きまとうアカベエに惚れて結婚。

息子は普段いじめられているのかと心配するほど気弱だが、

なぜかレモンを食べると気が強くなる。

もちろんレモンは大好物。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ