第18話:宴会
始まりま~~す
食材も結構集まったし、
タロットもNPCだけじゃなくて、
プレイヤーを殺す経験もしたし、
今回は実りの多い狩りだった。
まあ逆上して攻撃が単調なやつに、
元攻略組が負けるはずが無いので、
タロットに任せたら、
俺よりスムーズに撲殺してました。
…いいもん。
俺は元々支援型だもん。
速攻で倒すのはよほど戦力に差が無い限りやりづらいんだよ。
さてせっかくだから、
もう少し襲っていくか。
どうせだったら豪勢なパーティーにしたいじゃないか。
知り合いも何人か呼んでおきたいし、
それにはいくら集まったとはいえ、
小さな村一つじゃまだまだ足りない。
そう思ってもう一つ襲ってみたけど、
意外と時間がたってしまった。
このペースで狩っていたら、
パーティーをする時間がなくなってしまう。
それじゃあ本末転倒だ。
仕方ない、料理を一品持込で参加してもらうか。
勿論、自分は十数品は作っておくつもりだけど。
というか十数品作っても一度つくったことある料理なら、
オートでつくれるので、
他の料理全部をつくるより、
メインの肉料理をつくる方が時間はかかるのだ。
そう知り合いに告知しておいてから、
自分は食材の仕込みを始める。
シャンハイ人形と人喰スキルをフル活用して、
サラダやサンドイッチ、パスタ、ハンバーグ、クレープ、マリネ、スープ、デザート等、
とにかく今までお邪魔したパーティーでみたことある料理を、
次々と再現していく。
そしてメインのこの人肉をどう料理するかだ。
よし、ステーキとクリームソテー、
それにワイン煮込みでもつくっておこう。
最後のは煮込みが足りなくなるかもしれないが、
そこは柔らかい脳味噌をつかっておけば、
早く煮込めるんじゃないかな<適当>。
その間客の応対を任されていたゴトーも、
やたらと客が来て忙しかったという。
と、全ての料理を料理を調理し終わって、
並べ終わったところで「客を入れていいよ」って、
ゴトーにいいにきたら愚痴られた。
確かにどれだけ集まっているんだろう。
はっきりいって会場に入るのかどうかが分からないレベルだ。
…えっ?
三次元的に空間を使えば問題ないって?
それでいいのか?
そんなビキーからの提案で、
テーブルのいくつかを浮かせて、
立食パーティーにして立体パーティーがここに実現した。
タロットと一緒に会場内を回っていると、
一際目立つ老人を見つけた。
近くに行って挨拶をする。
「バアル様、よく来てくださいました」
それを聞くとバアル様は満足したように、
会釈を返す。
「それよりも野菜を持ち込んでいただき、
ありがとう御座います」
実際問題、野菜を持ってきてるのが、
おれ自身とバアル様で9割以上を占めているのだ。
というか4人しかいない。
ほかは全員肉やら脳味噌やら魚やら肉やら肉で、
俺の人脈の偏りがしっかりとあらわされている。
「世は一体なんだと思われてるのだ?」
「野菜大好き魔王様」
そんな問いかけに、
俺は素直に答える。
それを聞いたバアル様が、
何故か落ち込んだ表情を見せていたような気がしたが、
仮にも魔王とあろうものが、
その程度で落ち込むはずが無いので、
きっと見間違いだろう。
一度タロットと一緒に、
参加者に挨拶しに行き、
ついでにタロットの事を紹介する。
…そうしていたのだが、
俺がPKにいそしんでいる間に、
繰り返したであろう合コンで培ったコミュ力で、
瞬く間に話が俺を置き去りに盛り上がっていく。
さ、寂しくなんかないんだからね。
そしてビキーがいるにもかかわらず、
新しいゴスという執事を増やしているし、
現実世界でのタロットのコミュ力をみている俺からすると、
なにやら筆舌に尽くしがたい感情が生まれてくる。
そういやタロットってちゃんとレベリングしてるの?
それだけ合コンに費やす暇があったら、
もっとレベルが上がってるような気がするんだけど。
「少なくともまだレベルが3桁に上がってないお前に、
心配されることじゃないがな。
人のことより自分の事をどうにかしやがれ」
#タロット 男<143>
Str:720 Vit:720 Int:0 Min:0
Dex:72 Agi:720 MP:0 Luk:648
スキル:神秘の支配者<10>、第三の腕<10>、強靭な肉体<10>、格闘師範<10>、
硬気功<10>、魔方陣マスター<10>、格闘王<10>、カリスマ<10>、
残像<10>、闇衣<10>、空間把握<10>、心眼<10>、
大爆発<10>、確率上昇<10>、防御貫通<10>、ノックバック上昇<10>、
衝撃腕<10>、鉄拳<10>、豪脚<10>、マジックエフェクト<10>、
投擲<8>、精密射撃<8>、無拍子<10>、縮地<6>
う~ん、攻略組を狩ったときもあったけど、
比較的弱いやつを倒したから、
カルマレベルのステータスを考慮しても、
Lukあたりはいつ負けてもおかしくない。
もう少しプレイヤーを狙って殺していこうかな。
それにステータスではカルマレベルを含めれば勝ってるものの、
スキルでは到底勝ちようが無い。
今まで硬直状態にしてから戦っていたけど
正面から戦ったら攻略組に勝てそうにないんだけど。
「ねえ、タロット。
一度非殺傷の決闘モードで戦わない?」
「やだ、お前痛覚上昇系多すぎるんだよ。
攻撃を受けない場所から撃てる魔術師系ならともかく、
こっちは基本的近接スキルだ」
ああ、そうだ。
タロットにいわれて気付いた。
俺ほど痛覚上昇系を入れると、
ナイフの柄の方で腕を軽く叩いても、
釘を刺されたかのような痛みが発生するんだった。
そんな上昇率で腹を抉られたら、
…戦うどころの話じゃないな。
痛みでどうにかならない魔物相手ならともかく、
プレイヤー相手だったら、
一撃入れた時点でほぼ無力化できるわけか。
でも地力もある程度上げておきたい。
俺の痛覚上昇は上昇させるだけで、
無から有を生み出すことは出来ないのだ。
思い立ったが吉日。
もう夜も遅くなるけど、
適当な野営地を襲ってこようか。
そんな旨を告げて退出しようとすると、
お土産を望むやつ、
そして祭り?にも参加したい奴が続出した。
しかも襲撃にはバアル様も加わるらしい。
タロットに敗北感を感じた俺のなんとなくな行動で、
もうすぐ街が一つこの世界から消えるかもしれない。
えっ? まだメンバー増えるの?
魔王様まで加わっちゃって何がしたいの?
ねえ、何なの?
何が起きるの?
当事者である俺を置き去りに、
祭りという流れだけが大きく膨れ上がっていく。
…誰かこれを止めてくれないかな<切実>。
”キャラ紹介”
ゴス
普段は体が柔らかいことを利用し、
影のふりをして主人の傍にいる執事。
自分を変形させて椅子になったり、
武器になったり、人型になったり、
出来ないことはほとんどないと、
豪語するだけの能力はある万能執事である。
そのうえ物理がほとんど無効化出来たりと、
戦闘力も高いのだが、
被虐趣味があるのが玉に瑕。