第14話:暴食
始めたいと願ってはどうかな?
あっさり負けましたとも。
それが何か問題でも?
本来なら攻略組で一丸となって戦う相手と、
ヒーラーもなしに支援職がどうやって戦うと。
幸いにして食べられると思っていたのは勘違いだったみたいで、
いい食前の運動になるの間違いだったらしい。
あふれ出る食欲だけで俺を圧倒。
さすが魔王。
その後空腹を訴える俺の腹に、
現実世界でも見たことのないような
前菜で始まり、
暖かいスープでつなぎ、
香料を腹につめた魚料理を口に運び、
口直しに冷たいシャーベットをいただき、
高そうなメインディッシュを満喫した後、
新鮮なサラダをたいらげ、
甘いデザートを別腹に詰め込み、
シャリっとした果物のうまみが俺の口に広がり、
食後のコーヒーを甘めにしてもらう。
俺はこう見えて甘党なのだ。
まあ、今はショタ体型だから違和感が無いけど。
ほら、同じちびっ子である師匠だって砂糖を、
1杯いれて、
2杯目、3杯目、4杯目、5杯目、6杯目、7杯目、
いやいや、どれだけいれてんですか?
そこからさらにミルクをごっそり投入する。
たぶん先ほど出てきたデザートが目じゃない位、
甘い飲み物と化しているだろう。
師匠、魔王を見習いましょうよ。
老人の風格にあうかのようにブラックを、
あっ、砂糖壷に手を伸ばした。
少し入れちゃうのね。
…違うよね。
砂糖はさじ何杯で取るものであって、
砂糖壷何杯で投入するものじゃないよね?
よくみてみれば悪魔達も全員砂糖を壷単位で入れてるし、
おかしいのは俺なの?
違うよね? 違うんだよね?
…どうやら悪魔達は基本的に太らないうえ、
+快楽的なもの=甘さが大好物らしい。
それにしたって入れすぎだろうと思うが、
というか飲むというより食べるといったほうがいいような、
どろどろした液体になっていたが、
あまり人?様の趣味に、
口は挟まないでおこう。
どうやら交渉の結果、
ここでのルールを守れば居座ってもいいらしい。
それにルールといっても単純だ。
一つ、食事は感謝を持って残さず食べる。
二つ、魔王を蝿扱いしない。
この二つだけである。
そして俺は自分にあてがわれた拠点に向かっている。
「でも意外でしたね。
魔王の一柱であるバアルが、
事務仕事をしているなんて」
そんな俺のつぶやきに執事としてあてがわれた悪魔が答える。
「ははは、バアル様は豊穣神にして雷雨の神でもありますからね。
農作物には税があるということで、
昔からそういう方面はお得意なようです。
それに他の方々と違って、
私兵団たる有能な66の軍団がありますから。
まあ、他の方々でしたら、
66の軍団があったところで、
まともな使い方はしないでしょうがね」
いや、まともじゃないなら、
理にかなった運用をするんですがね、と付け加える。
「そういえば、君のことはなんて呼べばいいの?」
「ああそうでした、
自己紹介が遅れて申し訳御座いません。
私は夜鬼のゴトーと申します。
人里への運搬、家事一切を担当させていただきます。
どうぞよしなに御願い致します」
次の日から俺は夜な夜なプレイヤーを狩りに行った。
ゴトーは移動スピード、ステルス性、運搬力、
全てにおいて有能であり、
俺たちは神出鬼没に殺しまわった。
人を、PCを、NPCを、プレイヤーを、
自由人を…攻略組を…準探索組を…
一般人を…兵士を…生産者を…
農家を…漁師を…猟師を…
貴族を…奴隷を…市民を…
赤子を…老人を…子供を…
カップルを…親子を…ボッチを…
逃げるものを…
抵抗するものを…
命乞いをするものを…
助けを呼びにいこうとするものを…
刺して刻んで抉ってばらして突いて嬲って潰してちぎって
砕いて壊して食べて喰らって噛んで啜って挟んで伸ばして
殴って蹴って打って叩いて斬って払って吹っ飛ばして
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺した。
ある時はゴトーと連携して逃げ場をなくし、
そして殺した。
ある時は罠に誘い込み、
そして殺した。
ある時は外見で誘惑して連れ出し、
そして殺した。
ある時は正面から立ち向かい、
そして殺した。
ある時は家に忍び込み引きずって街の外に出し、
そして殺した。
ある時はモンスターの群れをなすりつけ、
そして殺した。
ある時は強敵との戦いに乱入し、
そして殺した。
ある時は生かしたままつれて帰り拷問にかけ、
そして殺した。
ある時は肉袋にして魔王のところにもっていき、
一緒に食べた。
みんなで食べる人肉はおいしかった。
その関係で人肉料理パーティーであるテケリリカニバリズムや、
その中でも脳味噌専門のミ=ゴカニバリズムとかの情報が詰まった、
イベントポスターやチラシとかをいっぱい貰った。
今度行ってみようかな。
今の俺はもはやプレイヤーよりも魔物よりなのかもしれない。
だがそれがどうした?
俺は俺だ。
それが唯一であり絶対だ。
唯一の心残りは、
”ゲーム”だ。
今の俺は快楽と自由さはあるものの、
ゲームが与えてくれた喜びが足りない。
そんな俺の心に何かが反応したのか、
俺は初めて青年から貰ったネタ装備を使う。
いや、これを使うといってしまうのは何か違う。
そしてそれは俺に喜びを与えてくれた。
いや、喜びではない。
喜びとはまた違うもの、
快楽とさえ言い表せぬもの、
楽しさではあらぬもの、
でも笑顔を浮かべたくなる、
…そうだ、この感情は、
お・も・し・ろ・い。
ワクワクする、ドキドキする。
心臓が今にも張り裂けそうだ。
ああ、早く目の前の男にこれを…。
「止めてくれ、俺はまだ死にたくないんだ。
俺にはまだ小さい娘がいるんだ。
それなのに殺すというのか?
この悪魔! 鬼! 外道! けだもの! 非道!
お前なんか地獄に落ちるがいい」
刺したい。
それに安心してくれ。
この道具で殺すことは絶対に出来ない。
「大体それをどうするつもりだ?
そんなもので俺をどうするつもりだ?
村のみんなをどうしたんだ・
なあ、答えろよ。
そんな…、
そんなしゃもじとお釜で何がしたいんだ??」
怪訝そうな顔をしながら泣き喚くという、
器用なことをする男の腹に、
しゃもじをつっこみそして引き抜く。
そうすると…、
「米? 何で俺の腹から米が?
それより腹が痛い、
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…」
米が出てくるので、
たぶんこの男の一人娘であろう女の子の血の中に、
投入しざっとすばやくかき混ぜ即座に血を捨てる。
こうしないと米が臭いを吸収してしまうので、
一息で行わないと大変なことになるのだ。
そしてその後この米を研ぐのだが、
そのとき力を込めずに回すようにやるといいらしい。
逆に古米はぎゅっと力を入れて研ぐ必要がある。
それが終わったならばまた血に沈め、
ゴトーに40分ぐらいかけて拠点に戻ってもらい、
台所にきたら血をしっかりときる。
米から少し上くらいまで血を注ぎ、
そして鍋をコンロにおいて中火よりやや強く火にかける。
泡がこぼれそうになったらそこから弱火にして10分ほど、
最後に10秒強火にかけて、
おいしい人米の出来上がり!
なんで俺が人から米を作って、
ふっくらと炊きあげているのかというと、
それがこの装備の能力だからだ。
ちなみに男は腹から米を出したから、
首から下に中身はない。
だから呼吸や発声、思考、歩行とかは出来ないのだが、
彼は…立派に生きている。
HPは俺に襲われた前と後で1ドットすらも変化していないし、
死霊魔法を使っても何の意味も無いだろう。
この装備で死ぬことはない。
いい意味でも悪い意味でも。
死なないのだ。
#人形 男<Lv91<+3979>>
Str:460<+1393>Vit:46<+995> Int:46<+1393>
Min:46<+597> Dex:46<+995> Agi:920<+1393>
MP:46<+597> Luk:230<+597>
スキル:死の雰囲気<10>、一方的な攻撃<10>、感染型状態異常<10>、
隠された狂気<10>、死の感覚<10>、呪刻魔法<10>、人喰<10>、惨殺<10>、
実験動物<10>、快楽殺人<10>、PK<黒>
気軽な殺人衝動<R><10>、感覚の錯乱<10>、バーストペイン<10>、
無自覚<10>、抗えない恐怖<10>、惨劇の夜<10>、
君と僕だけの世界<10>
武器:人体おままごとセット 攻撃力0 特殊能力:別記
防具:可愛らしいコック服一式 耐久力∞ 特殊能力:別記
人体おままごとセット:包丁、お玉、しゃもじ、鍋、フライパン、フライ返し、
スライサー、ピーラー、トング、鋏、泡だて器、おろし金、ざる、ボウル、
串、まないた、べら、ラップ、電子レンジ、コンロ、小型冷蔵庫、オーブン、
フォーク、ナイフ、スプーン、箸、コップで構成される。
虹色の六芒星の絵と、
ペンギンがナイフとフォークをもっている絵が特徴的。
装備者は任意でその手に入れ替えできる。
片手に一つずつしか装備できない。
この装備によっては直接、間接問わずダメージが入らない。
これらの一部は対象に突き刺すことにより、
対応した食材を突き刺した部分を代償に生成可能。
この調理器具で料理されたものは味に補正がかかる。
痛覚及び状態異常は保持される。
可愛らしいコック服一式:コック帽、エプロン、手袋、インナーで構成される。
虹色の六芒星の絵と、
ペンギンがナイフとフォークをもっている絵が特徴的。
このセットを全て装備したものには、
食べたいと思っていないとダメージを受けない。
食べる権利がある奴は食べられる覚悟のあるやつだけだ。
この装備を着たまま料理すると、味に補正がかかる。
自動消毒、自動清潔機能付き。
これで保健所も恐くない。
こうしてミラの世界の中に、
ペンギンマークのコックさんが出来上がった。
ただそれをコックというにはあまりに幼く、
そしてその食材はあまりに危ないものではあったが。
”キャラ紹介”
バアル=ゼブル
豊穣と雷雨と死を司る魔王。
崇高なるバアルという意味だが、
北の神々に蝿扱いされ結構キレ気味。
グルメであり、食前の運動など
ご飯をおいしく食べる事は一通り行っている。
ソロモン関連により、
66の軍団を所有していたり、
プレイヤーを透明にしたり、
INT値を上げたり出来る。
夢は料理漫画とミラがタイアップしてくれること。




