カウントダウンベイベー
彼氏視点はユーザー名【密虫】のところにございます。興味を持っていただいた方はお手数をお掛けしますがそちらへどうぞ。 *)密虫はムーンライトノベルズ様におりますので閲 覧できない場合は諦めて下さい。申し訳ありません 。また、そちらにあるからと極端な性描写の期待は 持たないで下さい。
願うことはひとつだけ
ずっと傍にいてね
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彼氏さんと付き合ってあれよあれよと言う間に一緒に暮らすようになって、初めての初詣を皆がよく知る神社に行こうと誘われた時に、初詣は氏神様にお参りして去年1年の感謝と今年も恙無く過ごせるようにお願いする為にある、と主張したら近所の神社へとお参りに行くことが年明けの恒例行事になった。
「『初詣はデートじゃありません!!』って怒られたの初めてだったよ」
この時期になると当時の事が思い出されるのか、そうやって蒸し返しては楽しそうに笑われる。
今日だってそう。
年越し蕎麦を食べている時に蒸し返されたから、だってご挨拶大事でしょ?!、と主張したら小さな子供にするように頭を撫でられた。
日付が変わるまでもう少しあるから、とリビングのソファでまったりとしていたら満腹のせいもあっていつの間にか眠っていたらしい。
肩を揺すられる振動で目を覚ました。
「お参りに行くんだろう?」
もぞもぞと起き上がって目を擦っていると
指先が髪の乱れを優しく直してくれた。
耳を辿って頤を包む掌が少しひんやりとして気持ち良かったから頬と肩で挟むようにして彼の顔を見上げたら何だか怒ったような顔をされた。
そのままぼんやりと眺めていたら反対の手が伸びてきて…
「いひゃい…」
…私の大好きな彼氏さんは乱暴だ。
徒歩10分位の距離にある氏神様へと向かう夜道。
「横暴です。暴力反対です。動物愛護の精神が足りません」
起こす為とは言え、頬をつねられた事を先を歩く彼に訴えるけれど少し猫背気味の背中はチラリとも振り返らない。むぅ。
不貞腐れてマフラーに鼻先を埋めたまま俯いて歩いていたら、名前を呼ばれて顔を上げるとポケットに入っていた彼の手が掌を上に向けて後ろ手に差し出されていて、グーパーと動作を繰り返すそれを握り締めるために走り寄った。
掴んだ手はすかさず指を絡めるように繋ぎ直されて彼のポケットに押し込まれた。
ちょっと訂正。
乱暴な時もあるけど優しい。
ウチの彼氏さんはどんなに寒くても手袋を使わない。
付き合い始めた時は手袋を使っていた筈なのに気付いたら使わなくなっていた。
不思議に思って聞いてみたら「煙草を吸うのに邪魔だから」と答えが返ってきた。
寒いし、風邪とかひいたら心配だから使って貰いたいな、と思いながらも触れ合える手の温もりが無くなるのが寂しくて何も言えずに…今に至ってる。
神社に辿り着くとどこから集まったのか沢山の人で溢れていて、お参りのために並ぶ人の列が入り口の鳥居の外まで伸びていた。
最後尾に並ぶとゆっくりと進む人の波に合わせて本殿へと向かう。
二礼二拍一礼。
2人並んで参拝を済ませると、氏子の人達から振る舞い酒と鯣を貰って敷地の中央付近にある焚き火にあたりに行く。
2m位はありそうな枯木が無造作に組まれた焚き火を参拝を終えた人達が同心円状に囲んでいて、親切な人が少し間を空けてくれた隙間に混ぜて貰って冷えきった体を暖めた。
「昔ね、初詣に家族で氏神様にお参りに行った時。やっぱり同じ様に焚き火があって、家族皆であたっていたらお母さんに『頭が良くなります様に』って煙を頭にかけられたんだよねぇ…」
懐かしくて思わず口にしたら何も言わずに頭に煙をかけるから、そうされたくて言ったんじゃない!、と怒ったら「いや、期待には答えなきゃダメだろう?」って。
…昔話も出来ないの?!
行きと変わらず少しむくれて辿る家路。
違うのは最初から繋がれた手の温度。
与えられてしまえばさっきまでの不機嫌も吐く息と一緒に空に昇っちゃう不思議。
帰宅してすぐにお風呂に入っていたら…お疲れだったのか、彼はソファの背にもたれて眠ってた。
起こさないようにそっと近付いてキスをひとつ。
「今年も傍にいてね」
次の瞬間、実は狸寝入りだった彼に強く強く抱き締められた。