第三話 突入
現在の上位プレイヤーはレベルは100以上が基本だ。レベル100以上ともなれば、ステータスの振り方や、スキルの習得した物によってそのプレイスタイルは異なってくるが、かなり強くなる。それが今目の前で証明されていた。
掛け声と共に仲間達とスキルを繰り出し、行く手を阻むモンスターを倒して行く。モンスターはあっという間に倒され、俺達は誰1人傷付く事無く、かなり早いペースで魔王が現れるエリアまで辿り着いた。俺達は一旦《安全圏》というモンスターが現れず、ダメージが入らないエリアまで少し下がり、休息を取る。
「ふぅ……」
地面に腰を下ろし、一息をつく。
「かっはぁ〜〜……」
レインが近くに座り、寝転んだ。辺りを見れば全員同じ様な格好で休息を取っている。
「皆、思ったより疲れてるわね」
カナデは俺の隣に座ると肩を寄せて言った。そんなカナデの表情も疲労が見える。
「そうだな。皆、最後の戦いとあって、少なからず心が高ぶってるからな。ここまで来るのにかなり、ペースが早かった。そのせいだと思う。俺達も休憩しないと、この後の戦いに支障がでるぞ」
「うん……」
カナデは頷くと、俺の肩にもたれ掛かる。俺も、仕方ないな、とカナデの肩を抱き寄せる。お互いの目が合い、笑みを浮かべる。
そういえば、カナデと始めて会った時もこんな感じだっな……。
「………どうしたの?」
「い、いや、何でもない」
ふと、空を見上げる。このゲームの天候は晴れで固定されており、いつも通りの快晴だった。
2時間程十分な休憩を取ると、俺達は最後の戦いに向け、確認を行っていた。リーダーであるソレイユは俺達を幾つかの班に分け、常に交代しながら、攻撃を緩めない形にする。俺とカナデ、レイン、シルは同じ班になった。出来るだけ、親しいメンバーで分けてくれた様だ。
「よろしく頼むぜ、カズヤ」
「あぁ、こっちもよろしくなレイン。シルも」
「あぁ。………そう言えば、このメンバーで組むのも随分と久しぶりだな」
「……………すまない」
「気にするなカズヤ。あれはお前のせいじゃない」
「そうだぜカズヤ!っと……どうやら始めるみたいだぜ」
レインが言った通り、ソレイユから声が掛かり、俺達は《安全圏》を抜け、再び歩き出す。少し歩くとあっという間にボス出現エリアの手前まで来ていた。
俺達の目の前には見慣れた境界線が空間にできていた。この境界線は通常エリアとボス出現エリアを分ける境目であり、ここを越えればボスが待っている。今はまだ境界線を越えていないので、向こう側は空間が歪んでいる様に見え、中を伺えない。そして、この境目を越えればボスを倒さない限り、エリアからは出ることは出来ない。つまり、逃げる事は出来ないのだ。
赤髪の女、ソレイユは一度後ろを振り返り、全員の顔を伺う。棄権するなら今だ。そうソレイユの表情が言っていた。しかし、誰1人と逃げ出す奴はいない。そもそも、そんな覚悟が無い奴は上位プレイヤーには成れないだろう。ソレイユは一瞬困った様に笑みを浮かべると、すぐに表情を元に戻し、前を向いた。
「行くぞ」
その声と同時に俺達は境界線の向こう側へと足を踏み出した。
一時間後に次話を投稿します