第二話 鼓舞
広場には既に何人も人が集まっており、辺りを見回すと上位プレイヤーとして有名な馴染みの顔がチラホラと見える。
「よう!」
後ろから懐かしい声が聞こえてくる。振り返ると、日本の侍の様な格好をした二十歳程の男、レインと、全身を鎧で身を包んだ強面の男、シルがいた。
「なんだ、お前達も来てたのか」
「なんだ、はねぇーだろーよ。これでも上位プレイヤーだぜ?」
ドンッと胸を叩くレイン。しかし、強く叩き過ぎたのか咳き込み始める。全く、何とも頼りなさそうな上位プレイヤーだ。腕があるのは確かだが、何処か抜けてる所がレインにはある。まぁ、レインらしいと言えばレインらしいが。俺はレインを無視して、強面の男に目を向ける。
「それにしても……シル、上位プレイヤーとはいえ生産職なのに来てもらって悪いな」
このゲームには明確な職業は存在しない。その代わり、モンスターと戦う戦闘職と、武器や防具、アイテムなどを作る生産職の二つに大きく分かれる。生産職の場合、ステータスやスキルの習得がどうしても生産よりになってしまうので、殆どの生産職のプレイヤーは戦闘を苦手としている。シルもその生産職の1人だが、彼は首を横に振った。
「気にするな、俺だって上位プレイヤーだからな。最後の戦いなんだ、1人でも多い方がいいだろ。それに………もしお前らが負けたら、残された奴らでは、このゲームをクリアするのは無理だと思う。そうなれば、一生この世界で暮らして、死ななければならない。そんなのはゴメンだ」
「そう…………だな。そうならない為にも、俺達は頑張らなければならない。第2エリア以降のモンスターに怯え、街から未だに一歩も動けてないプレイヤーだって多勢いる。その他にも生産職で支えてくれた後方支援の奴らの為でもあるんだ。必ず、勝とうぜ」
俺の言葉に3人とも深く頷く。その時、広場のプレイヤーがざわついた。視線を動かすと、プレイヤー達の前に1人の女性が堂々と立っている。
俺はその女性を知っていた。このゲームでは有名な上位プレイヤーで、長い赤髪に赤色のバンダナと紅色の甲冑を装備した両手剣の使い手。更に、所属人数が最少でありながら、最強のギルド《レッドライン》のギルドマスター、《爆炎剣》のソレイユ。滅多に人前に現れないプレイヤー最強の彼女が俺達の前に堂々と立った。ソレイユは静かに息を吸うとカッと目を開き、その美声が広場に響き渡る。
「よく来てくれた皆!今日、私達は最後の戦いに向かう!負ければ死、勝てばクリア、どちらにしても最後の戦いだ!自分のHPバーが0になる前に相手を倒せ!1人も死なずクリアするぞ!!」
「「「「おおぉぉぉ!!!!」」」」
戦士達は武器を空に掲げ、雄叫びを上げる。そして、《ディヤヴォルオンライン》最後の戦いが始まった。
一時間後に次話を投稿します