小話
先ほど出てきた脇の過去と現状です
本家には、恨みはあるが恩はない。仲の良い友が本家のダメダメさ加減に焦り一人で戦場に行ってしまったことと、それに気付いた本家守りの”猫”さんが友人に守りを発展しようとして無理して体調を崩してしまったことにより、一族に回していた守りが本家に集中してしまったことによる弊害が生じてしまった。
当主もそれに気付き立て直そうとしたか、後手の下策しかできずあわやと言うとこまで行ってしまったので、致し方がないく固有能力を発動したのだ。本家は嫌いだが、本家に仕事に行っている兄弟もいるし、友も帰ってきたら奥に幽閉されるだろう。それならずっと住む場所だから生活しやすいようにちょいと変えても文句は言われないだろうと思いながら、一族全体に使用している守りの術と”猫”さんが発動した浄化を癒す。全て。本当は巫女服を着て鈴を鳴らしながら舞わないといけないし、場所だって本家の隅っこではなく、神木かその近くにある術本体の上でやった方が効率敵だが、面倒な人に目をつけられる事は避けたいので仕方がない。
自前の守り鈴を懐から取り出して鳴らす。
チリーン。チリーン。と誰もいない庭に鳴り響く鈴の音。それに乗せながら能力を出していく。他人には固有能力を発動する時には使役が出るらしいが、出来そこないの屑と言われている私にはそんなもの出現しない。ただ、力が流れていくだけ。庭に施されている術を入口に大本になっている古い古い術にたどりつく。
肉眼で見えているわけではいないのだが、見える術はすでに張り直しの時期を疾うに過ぎてぼろぼろ。風が吹けば飛んでしまうようなものになっている。それを補強している真新しい術がある。
成程。これが浄化の術なんだ。と見て取れたが、これも後手だ。”猫”と呼ばれている人が、これを作成して20年。発動させたのが10数年前。それでもギリギリ術をこの地に貼り付けているだけだ。最初よりは、効率的に力を回していると言っても、これは・・・・
「全て作り直し。ガッツリ疲れるんですけど。私もおバカだけど、この大本を作った人は何を思って作ったのかな?何も考えないで、大好き家族とか勢いで作った節が見受けられるんですけど・・・」
はあ。血なんて繋がってないと思っていたが、信念は繋がっていましたね~。その気持ち理解できるから厄介。面倒だが、効率的に安全・安心できる住環境を作りますか。本家は、庭だけ好きだし。
術を新しく作りなおすために先ずするべきことは、この地の浄化。しかも、”猫”さんがしていたような極地的なものではなく一族が生活している場所全部。面倒だーと思いつつ綺麗になれ。憎しみも悲しみも幸せもすべて帳消しになってしまえ。そう念じながら腕を横に広げる。ふわり。ふわりと腕を動かしてるのを傍目から見るとゆらゆらしている変人。ま、変人だから仕方がないけどね。
全てが浄化出来たのを感じたら次にすることは、術を本拠地を中心に広げること。部分的に飛び石になってしまうのは、本家から逸脱して個人プレーに走っている有能さんとあの子なんだろうが、気にしない。っていうか。あの子何考えて人を影に取り込んでいるの?その人の定めとか色々断ち切るつもりですか?と言うか、それ、無意識にしているでしょ?もー。仕事を増やさないで欲しい。
あー。”猫”さん余計な術式を開発しなくても守るから大丈夫。余計なことしないで。面倒だから。力任せに壊していいなら作ってもいいけど・・・
個々で色々しているみたいだけど、面倒だから一時停止して。していいのは、あの子に対するフォローだけにして~。などとよそ見していてた為外に誰が居るのか感知するのが遅くなった。気付いた時にはすでに遅かった・・・
「そこで、修繕しているのは。違うな。作り直しているのか?それも、一族の守りそのものを・・・」との声で意識を外に向けると疲れた顔をして縁側に座っているオッサン。この地にいる人は年を取るのがゆっくりになる。それでもオッサンと言うことは・・
「げ。当主だ」本当は逃げたかったがそうも出来ない自分が憎らしい。
「何が、げっだ。逃げないのは、そこを軸にして術の大本に干渉しているからか?成程。面白い事をしているな。一族全員の命を保障しない代わりに、幸せな死が訪れるように干渉しているのか」いつの間にか一時的に発展している術を看破されてしまった。
「そうすることで、死ににくい戦闘兵と言うのを返上して国からの干渉から逃げる。しかも、技術的・名声はすでに高いところにあるから傭兵として仕事には困らないし困った特攻を阻止できる。技に見合った仕事を振り分けれるという事か。いい手だ。そして、いい時期だな。人を出しすぎて一族を維持できなと言う言い訳もできるし、その為に術を変更しても怪しまれない。」
あー。全部読まれていますよ。だから若い面の皮をかぶったオッサンは嫌いです。そのままパスして逃げてしまいたい。あー面倒だから死にたくなった。死んでも問題ないよね?懐に入れていた小刀を取り出しながら簡易的な術を完成させる。鈴の音を出していたのは、目くらましを発動しながら舞いを省略するためにだったのに失敗したし。と鞘を落とし首を付こうとしたら影を縛られた。
「何故そこで終らせる。そんなことをしたらそれ(術)は破綻してしまうだろ?せっかく作ったのだから完成さろ。そして、俺に楽な仕事をよこせ」と言いながら小刀を没収された。
「いい腕だな。誰の作だ?」
「 」
「なんだ。口を聞けないくらい集中しているのか。詰らんな」そう言いながら縁側に戻っていったが、人の小刀持っていくな。作ったのは私だし・・・もー見つかったからいいや。鈴を鳴らす気も起きないから良い。
ペッと鈴を投げて庭に座る。見上げるのは空だけでいい。空を見ているようで見ていない状態になりながらすべての術を新しいものにした。術を教える場所の安全性を向上。休憩施設やリラクゼーション施設の充実化。各部屋の住環境の整備。図書館で保存されている術を分類化と整理。保存状況の悪いものはいい状態に保存しなおして緩みかけて暴走しそうなものは、再度、縛りを強化していく。子供が読んでは教育上悪い本は、大人しか入らない奥にしまいなおす。
「あー。なんでこんな所に本を放置する!!馬鹿だろ。本当にありえない。子供部屋に戦闘の本を置くな!!しかも、それを寝る前のおとぎ話扱いするな。狂戦士なんて作らなくても良い世界を作ってやるから」
「なんで、厨房に劇薬なんておいているんだよ。毒になれるとかいう名目で、毒姫なんて作んなくても良いから。あー。ここには狂った人間しかいないのかよ!!」とまあ。色々半日くらい叫ばして貰いました。
もう疲れた。今日はここまでにする。どうせ、明日じゃないと出来な作業もあるし・・。視線を戻すとまだ、縁側にいる当主。側に執事をはべらして処理済みの書類のタワーを作っているのを見ると、仕事をしていたみたいだな。
「お。終わったみたいだな。面白い事を叫んでいたから調べさせたら。事実だったから更迭して保護・回収しておいたぞ。これなら膿だしもスムーズにいきそうだ。明日も頼むぞ」と去っていきましたが、明日もここでするとお思いで?甘いな。と思っていた私が甘かったです。その後も、場所を変えて術を作り直しているとすぐに表れて色々と口を出したりしてきた当主。友が帰って来た混乱のさなか脱走して本家から離れて平凡な生活を満喫していたら・・・
16年後友の婚姻が決まったと同時に捕獲されました。
「友人の新婚生活をいいものにするために整備しないか」との言葉とともに。
幸せそうな友人はいいのですが、どうして私も幽閉されないといけないんでしょうか?
たまに小話で出るかも