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黒の管理者  作者:
第一章
8/50

5.

 

 

 窓をすり抜けてくる、暖かな光が誘う微睡みを、コツコツとドアをノックする音が邪魔をする。

 

 ぼんやりした意識のまま、音がした方にユウが視線を移すと、大きなバスケットを抱えた男とワゴンを押した女が、一人ずつ入ってきたのが彼女の視界に映った。

 

「気が付いたか」

 男の声に、起き上がろうとするユウを支えようと、女は大急ぎでワゴンをベッド脇に置き駆け寄った。

「ご無理なさらず。傷に響きます」

「……すみません。ありがとうございます」

 身体を支えられて、ユウがベッドの上で身体を起こすと、バスケットを壁際のチェストの上に置いた男が近寄ってきた。

 

「傷は、痛むか」

「いえ。おかげさまで、今はなんともありません」

 何となく聴き覚えがある声を警戒しながら答える彼女に、見下すような態度で接する男。その男に向かって、水を注いだグラスを手にした女が釘を刺す。

「スティアート様、ユウ様はまだ、お身体がお辛うございます。もっとお気遣いなさってくださいまし」

 その言葉に、男は濃紺の瞳をスッと細める。

 

「……これでも、悪いと思っているんだ。でなければ、ここには来ない」

「あの……?」

「お前の首の傷、私が付けたものだ。悪かった」

 喉元にユウの手が伸びる。

 目の前にいる、聴き覚えのある声の主は、あの時、彼女を後ろから羽交い絞めにした男だったようだ。

 

「……単刀直入に訊く。“王家の森”の結界を、どうやって破った?」

 その男は、ユウに向かって侮蔑の眼差しを投げつけた。

「スティアート様!」

「アート、そこまでにしろ。相手は昨日、ようやく目を覚ました怪我人だ。今はまだ、尋問する時期(とき)ではない」

 いつの間にか、ヴィンセントがドアを背に立っていた。

 

「しかし、ヴィンス!」

「いい加減にしないか、スティアート!」

 ユウは無意識のうちにシーツを握りしめ、額に玉のような汗をかき、ガタガタと震えていた。

 そんな彼女の変化に、ユウの隣に立っていた女は、手にしたグラスをワゴンに戻し、お湯で絞ったタオルを取り出して「汗を」 と柔らかに微笑む。

 

 ヴィンセントはゆっくりこちらに歩み寄り、それと同時に、ヴィンセントからアートと呼ばれた男は、一歩後ろに下がった。

「ユウ様、どうぞ、お身体を休めてくださいませ。ヴィンセント様、私、このままこちらに残っても?」

「ああ、ユウを頼む、ジュディ。アート、お前は職務に戻れ」

 ヴィンセントからそう命じられた男は、苦々しい表情のままユウの事を一瞥し、無言で部屋を出て行った。

 

 

 

 


 

新たに二人、でてまいりました。

(あ、一人は既出か…。)


後日、『登場人物等の設定』という名の“記憶力に見放された

作者用の忘備録”をプロローグの前に割り込ませるつもりです。

本文の進行に合わせて随時更新させていく予定でいます。

宜しくお願い致します。




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