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黒の管理者  作者:
第一章
7/50

4.

 

 その夜、彼女は泣き明かした。

 でも、どんなに悲しみに暮れていても時間は刻々と過ぎ、朝がやってくることを、改めて思い知る。

 

 窓から差し込む眩しい朝日の中で、ユウは、ぼんやりと(くう)を眺める。

 ほとんど眠れなかったせいで、瞼が重い。

 

 でももう、そんなことはどうでもいい、と思っていた。

 元の世界には、父の元には、帰れない。

 そう思うと、また、涙がユウの頬を伝い始めた。

 

 呆然とベッドの上で俯いていると、ドアをノックする乾いた音が耳に届く。

 ゆっくりと顔を上げると、白金の髪の美丈夫が驚いた表情でこちらを見ていた。

 

 彼はユウに歩み寄り、そっと肩に触れた。

 ――気分は……。良い訳がないな、その様子だと。

 ユウは、ただ、俯いた。

 ――ユウには、暫くの間、ここで滞在してもらうことにした。ここは私の屋敷だ。気を張らずに、ゆっくりすると良い。

 ――あ、あの、ヴィンセントさん……。

 ――ヴィンス、で良い。皆、私のことをそう呼ぶ。

 ――ヴィンスさん。

 ――ヴィンス、だよ? ユウ。

 ――私、ここでお世話にはなれない。

 

 ユウが顔を上げてそう言うと、ヴィンセントの整った眉がピクリと上がった。

 ――何故?

 ――何故って……。私、この“世界”の人間じゃないんでしょ? 得体の知れない者がいれば、きっと、あなたの家族だって気味が悪いだろうし。

 

 ユウがそこまで言うと、ヴィンセントは跪いて視線を合わせ、彼女の左手を取った。

 ――気にしなくてもいい。この屋敷には、私一人だ。ああ、勿論、仕えてくれている人間が多少はいるが、全く持って気に病むことではない。

 

 そう言って、彼はふわりと優しい笑顔をユウに向ける。

 そして、ポケットから何かを取り出した。

 

 ――言葉の不自由を解消できるかも知れない術をかけておいた。うまく行くといいんだが……。

 右手に持ったそれを、相手の左の掌に押し付ける。

 何の飾り気もない、銀色のリングだった。

 

 ――これ……。

 左の掌の上で白く光るそれを、彼女はじっと見つめる。

 ――元の世界に、還してやりたいのは山々なんだが……。これで許してはもらえないだろうか?

 

 ヴィンセントは、掌から自身の左手でリングを拾い上げ、ユウの左手の指に通す。

 彼女は、一瞬、空間の歪むような不快な感覚に包まれたが、それはすぐに無くなった。

 

「どうですか? 私の言っている言葉が理解できますか?」

 穏やかな口調のヴィンスの声。今度は彼女にもはっきりと言葉の意味を理解できる。

「はい、解ります」

「良かった。とりあえず、もう暫くはゆっくり休むと良いでしょう。あとで、必要なものを届けさせます。食欲は?」

 

 (何も、欲しくない)

 彼女は、そう意思をのせて、ゆるゆると首を横に振る。

 

「そうですか……。さ、横になって。もう一眠りなさい」

 ユウを再びベッドに寝かせた後、ヴィンセントは静かに部屋を出て行った。

 

 

 


 

これで、ようやく会話のややこしい設定が取り払えました。

(↑なら、そんな設定にするなっていう…。すみませんm(_ _;m。)


ご協力ありがとうございました。心より御礼申し上げます。


今月中にもう少しお話を進めたいと思っています。

宜しければ、またお立ち寄りくださいませ。


ここまでお付き合いくださったあなた様に、最上級の感謝を。


                                    諒でした。

 

 

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