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黒の管理者  作者:
第三章
45/50

3.


人の亡くなる記述が本文中にあります。

苦手な方は、申し訳ございません。閲覧をお控えください。


皆様のご協力、ありがとうございます。



 





 突然の申し出に、ユウは、こくり、と息を呑む。


 ―― 何ノ前触レモナク巻キ込マレテ、サゾ、不愉快ダッタロウ?

 ユウは、すまなそうに俯くエヴァを前に、大きく横に首を振った。

「不愉快ではなかったです。……でも、不安だった。怖かった。寂しかった。どうしていいか、わからなかった……」

 話すうちに溢れる涙を拭いもせず、真っ直ぐに前を見つめる。

「どうして、私なの? って、いつも思ってた。帰りたくて、でも、できないって言われて……」

 両手で顔を覆い、子供の様に泣きじゃくるユウを、淡い光が慰めるようにそっと包む。

 ―― スマナカッタ、ユウ。主ニハ、ドレホド詫ビテモ、足リルコトハナイダロウ……

 ふるふると横に揺れる黒髪に、声の主は静かに告げる。

 ―― 無理矢理巻キ込ンダアゲク、コンナコトヲ言ウノハ、全クモッテ非常識ダト重々承知シテイルノダガ…… 引キ受ケテハクレナイカ? 我ノ、最初デ最後ノ頼ミヲ。

 両手で真っ赤になった眼をこすり、異世界から来た娘は、顔を上げて静かに視線をあわせた。



 * * * * * * *




 エヴァ=メル・ウォードンは、この大陸の東の果ての小さな村で生まれ育った。


 先の大戦は、彼女がこの世に生まれ落ちた頃には、既に大陸全土にその範囲を広げており、勇敢な剣士であった父は、徴兵され派遣された激戦地の前線で、美しく優しかった母は、この村の特産品であった羊毛の織物を隣国との境の街まで売りに出た帰りに盗賊に襲われ、相次いでその短い生涯を終えた。

 そうして一人残された、まだ十歳にもならなかったエヴァは、村の外れの森の奥にある小さな水車小屋で、一人、隠れるように静かに暮らすようになった。

 その理由は、この大陸では見られない色彩を持っていたから。

 “闇”を意味する色は、村人たちに大きな理由もなく忌み嫌われ、またそのせいで、少女は心を閉ざしていた。


 彼女が両親を相次いで亡くして五年、いよいよ大陸の果てにあった村にも戦火が回り、村中の抵抗空しく、一夜のうちに廃墟と化した。

 当然のように金品は根こそぎ略奪された上に、男たちは始末され、女、子供も酷い扱いを受け、連れ去られた。

 しかし、村を襲った兵たちも、流石にうっそうと生い茂る森の奥まではやって来なかった。

 ぶすぶすと燻り続ける焼け落ちた家の間を、誰か、一人でも隠れ通した人がいないか捜し続けたが、呼びかけに応える者は誰一人、いなかった。


 エヴァは、はらはらと零れ落ちる涙を拭うこともせず、たった一人で村人たちを弔い、その墓前に、野に咲く花を手向けた。

 時間にして、丸五日。たった一人で、やり遂げた。

 そうして水車小屋へと戻り、父の形見として大切にしまわれていたレイピアを手にし、襲撃から七日目の夜が明ける前、この村を後にした。



 * * * * * * *



 ―― ソレカラハ、毎日、生キルカ死ヌカノ瀬戸際ヲ渡リ歩クヨウナ日々ダッタ。ロクニ剣も扱エズ、モチロン、食料ヤ金ナンカ持チ併セテイナイ。結局、村ヲ出テ十日ホドデ、アッサリ行キ倒レテシマッタ。


 苦笑いをするエヴァに、ユウは眉根をひそめる。


 ―― タダ、ソノ時、一人ノ術師ガ我ニ救イノ手ヲ差シ出シタ。ソノ手ガナケレバ、我ガアヤツニ逢ウコトモナカッタ……










今回は、魔女様の生い立ちを。

一気に進むかと思われていた方、申し訳ございません……(平伏)


少し思うところがあって、の回り道です。

お付き合いいただけると、嬉しいです。


いつもありがとうございます。

そんなあなた様に、心からの感謝をこめて。


諒でした。



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