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黒の管理者  作者:
第三章
43/50

1.

 



 ふわふわと頭を撫でる手に、ユウは次第に落ち着きを取り戻した。


「……ごめんなさい」

 小さく呟いたその声を、ヴィンセントは、手を休めることなく黙って受け止めた。

「私、”偉大なる魔女”様の生まれ変わりなんだって……」

 ポツリとこぼれた謝罪に続いて、ため息とともに吐き出されたユウの言葉に、ヴィンセントは、昨夜のルーカスを思い出していた。


 常軌を逸脱したルーカスを思いとどまらせることができなかった己に、ギリ、と唇を噛み締める。


 何処かの誰かが禁を犯して発動させた術によって、それまでの日常を奪われた、ユウ。

 彼女を元の世界に戻してやることも、甘んじて受け入れたこの世界での気苦労を和らげてやることすらもできない自分を、ヴィンセントは嫌忌した。


「……すまない」

「ヴィンス?」

「あなたを元の世界に(かえ)してやれない。この世界で護ってやることもできない。私には、何も……」

「ヴィン……」

 視線を上げた先に見えた苦しげな表情に、ユウは、そっ、と右手を伸ばす。

 しかし、伸ばした手を不意にガシリとつかまれ、慌てて引き戻そうとするが叶わない。

 おろおろと視線を揺るがせるユウを、ヴィンセントは、じっと見つめた。

「……この先、こんな風に顔を合わせることもなくなるでしょう」

 小鳥たちの声にかき消されてしまいそうなくらい小さく呟いたヴィンセントを、今にも泣きそうな顔でユウは見上げる。


「ユウに、一つだけお願いが」

「何? ヴィンス。私にできることなら……」

 小首をかしげてそう答えたユウに、ヴィンセントは、至極真面目な顔をして言葉を続けた。

「……今、ここで、私があなたにキスすることを許してください」

「ヴィン、ス?」

「ルーが、昨夜、あなたに告げたでしょう? 近い将来、大きな戦争が起きる、と。そうなれば、明日をも知れない。こうして平和な時間をあなたと過ごせた思い出に……」

「ダメよ!」

 哀しげに告げるヴィンセントを、ユウは顔を赤くして叱咤する。

「どうしてそんなこと言うの? あなたが諦めてどうするの? あなたは、みんなにとって、いなくてはならない人。お願いだから、そんな哀しいこと、言わないで!」

「ユウ……」

「お願いよ…… いなく、ならないで……」

 つかまれていた右手もいつの間にか解放され、ユウは、両手でヴィンセントの上着の裾をギュッと握りしめた。

「お願い。置いて行かないで。一人にしないで……」

 パタリ、パタリ、と落ちていく涙が、寝間着に吸い込まれていく。

「大丈夫、いつも一緒だ。例え、姿が見えなくても、私はあなたと共にいる」

 ヴィンセントは片手で優しくユウの頭を抱え、その頂に口づけする。

「だから、泣かないで。ユウ……」

「ヴィンス、お願い。約束して?」

「約束する。ユウを一人にはしない。だから、安心して」

 暖かで大きな手が、艶やかな黒髪の上を滑る。

「ありがとう、ヴィン……」

 声が途切れ、ことり、と、ユウの身体がヴィンセントにもたれかかる。

「ユウ?」

 ヴィンセントの腕の中には、安心したように目を閉じ、小さく寝息を立てる少女がいた。


「怖くて、寂しくて、哀しいのを、我慢、してたんだね。ユウ……」

 そっと額にキスを落とし、静かにその身体を抱き上げて、ヴィンセントは中庭を後にした。




お待ちいただいていた方がいらっしゃいましたら、この場を借りて、お詫びを。

ホントに、ホントに、申~し訳ありませんでした。

いろんな意味で、書けずにおりまして…… ←言い訳デス、ごめんなさい。

今日は、どうにかここまで書くコトが出来ました。


宜しければ、この先もお付き合いいただけると、泣きじゃくって喜びます。


本日は、遠路はるばる足をお運びいただき、ありがとうございました。

そんなあなた様に、心からの感謝を。


諒でした。



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