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黒の管理者  作者:
第二章
32/50

16.

 



 仄暗い灯りの中で、ピンと張りつめた沈黙を破ったのはルーカスだった。


「どんな“気配” だった?」

 ウォーレンに問う。

「ほんのしばらくの間でしたが、今までに感じたことのない魔力でした。威厳のある、全てのものを従えてしまいそうな……」

「今は、どうだ? あれの部屋から、何か感じ取れるか?」

「いえ、今は、何も……」

「ヴィンス、お前はどうだ?」

「……私にも何も。ですが、殿下、あなたがなぜそれを気になさいますか?」

 ヴィンセントが、自身に歩み寄るルーカスを真っ直ぐ見据える。

 その視線に、ルーカスは逸らすことなく応えた。

「気になる……か?」


 ルーカスを見るヴィンセントの眼に、一瞬、鈍い光が浮かんだ。

 その光景に、スティアートは無意識のうちに腰に携えた剣に手をやり、ヴィンセントに向けて足を一歩踏み出す。


「陛下の……父上の部屋から、嫌な声を聴いてしまったものでな……」

 苦虫を噛んだような顔のルーカスに、ヴィンセント達は一様に怪訝な顔をあわせる。

「……どうやら、そう遠くない未来に、この国は大戦に巻き込まれるらしい……」

 三人は息を飲み、ルーカスに視線を集めた。


「……どうして、戦争なんて……」

 ウォーレンが震える声で小さく零す。

「すまん、エディはそこまで父上に話してはいなかった。恐らくは“先読み” を行ったんだろう。ただ、『大戦が起きる』 と。そして、これを回避するのは、不可能に近いらしい」

 ルーカスが横を向いて、三人の視線から自分を逸らせる。

「それに、『“魔女” 様が現れた』 と」


「“魔女” 、様?」

 スティアートが訊きかえす。

「まさか、“偉大なる魔女” 、様?」

「……そのようだ」

「何処に……何処にお見えになられたのですかっ?!」

 未だ目を合わせないルーカスに詰め寄ったウォーレンを、すんでの所でスティアートが抑え、左頬を軽く(はた)いた。

「おい、落ち着け、レン!」

 ジンとする刺激に、ウォーレンは自分を取り戻す。


「……申し訳ございません、殿下」

「構わん、気にするな。お前は昔から“魔女” 様を敬愛しているからな?」

 ニヤリと笑みを浮かべたルーカスに、ウォーレンはほんのり頬を赤くし、相手の胸元めがけて拳をぶつける。

「なんだよ? 照れ隠しか?」

 ますます分の悪くなったウォーレンは、ルーカスの笑みが視界に入らないよう、口をへの字に曲げて、プイ、と横を向いた。

 そんなウォーレンの頭を、スティアートはクシャクシャと撫でつける。

「何すんだ! アートっ」

 すっかり荒らされてしまった髪を力任せに整えながら、ウォーレンがスティアートを斬れそうな眼差しで睨んだ。

 睨まれた本人とルーカスは、その姿に、もう辛抱ならんと言わんばかりに盛大に噴き出した。

 先程までは傍観者に徹していたヴィンセントも、口元を押さえて、どうにか笑いを堪えようと顔を赤くしている。

 不貞腐れたウォーレンは、自室に下がろうと扉のノブに手をかけ、図書館でユウに手渡した絵本の事をふと思い出した。


「濡羽色の髪…… 漆黒の瞳……」

 その呟きが、ヴィンセントの注意を引く。

「レン? どうした」

「あ、いえ。別に関係ないとは思うんですけど、今日、アイツに図書館で渡した絵本、“魔女” 様の伝記でした。オレがちっこい頃、何度も何度も読み返したやつ」

「あぁ、あの『大きくなったら、立派な魔術師に、オレ、なる!』 って、読んだ後に必ず泣きながら言ってた?」

 薄っすら浮かんだ涙を拭いながら、スティアートが加わる。

「うん、そう。……って言うか、どんだけ笑ってんだよ、アート」

 それをきっかけに、じゃれあうような取っ組み合いの喧嘩を始めた二人を横目に、ルーカスとヴィンセントが視線をぶつける。


「“偉大なる魔女” ……」

「“濡羽色の髪” と、“漆黒の瞳” ……」

 溜息のように漏れたささやきが消えると同時に、二人の顔から血の気が引いた。

「……ま、さか」

「いや、そんなはずは、ない……。あってくれるな!」

 ルーカスは降ってわいた恐ろしい予感を打ち消すかのように、傍らの壁を思い切り叩き付けた。


 突然生まれた大きな音が、この部屋に、再び張りつめた静けさを戻した。




幼馴染だよ、全員集~合! その弐。

末っ子・レンを弄るのが、なんだか楽しくて仕方がない。←ぅおいっ!Σ\( ̄ー ̄;)

……おかげで、先へも進まない……orz


そのうち、レンから鉄拳、来るよね?


ありがとうございました。 諒でした。




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