14.
「……ウ、おい、しっかりしろ! ユウ!」
ぐったりと力の入っていない身体を盛大に揺す振られ、ユウは、ゆっくりと目を開けた。
「よかっ、た。気が付いた」
ユウのうつろな視線の先には、安堵に満ちたウォーレンの顔。
「……私?」
「オレが戻ってきたら、気を失ってたんだよ。大丈夫か? 無理してんじゃないのか?」
ウォーレンが、今度は懸念の表情で、ユウを見た。
「ちゃんとお役に付いたのが昨日なので、まだ、少し緊張してるのかもしれないです。心配させてしまって、ごめんなさい」
そう言いながら、ユウは、立ち上がって足元に落ちている絵本を拾い上げ、汚れや破れがないのを確認してから書棚に戻す。
その姿を、ウォーレンは腕組みをして、じっと見ていた。
「……どう、されました?」
痛いほどの視線を感じて、ユウが、少し怯えながらウォーレンに訊ねる。
「お前、今まで魔力を感じたことは?」
「ないですよ、そんなの。私が住んでいた世界には、魔力なんてないんですから」
至極真剣な表情のウォーレンに、ユウは笑って答えた。
(おかしい。さっきまでは、何も感じなかったのに…… オレが離れている間に、一体何があったんだ?)
黙り込んでしまったウォーレンを、今度はユウが心配そうに見つめていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その後は何事もなく、ただ淡々と過ぎて行った。
ユウは、昼食前にフィオナに声をかけて図書館を離れ、侍女としての勤めに戻る。
そうして昨日までと変わらない時間が過ぎてゆく。
ただ一つ違ったのは、今までになかった“何か”が、そこに、確かに、存在していること。
それが何なのか、そこにいる者、誰一人として、知り得ることはできなかった。
その日の終わりを告げる漆黒の空には、ぼんやりと霞がかった三日月が浮かんでいた。
…… 短くて、ごめんなさい……