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この度は、お立ち寄りいただきありがとうございます。
完結目指して頑張りますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
……ミツケタ。
王宮の一角で、黒に近い灰褐色の髪の男が、クク、と喉を鳴らす。
手には、仄明るく光る球体。
それに映る映像を覗き込み、男は古の言葉で綴られた術を唱え始めた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
もう間もなく日が沈んでしまいそうな、午後六時を少し過ぎた時間。
鴉の羽のような黒髪をポニーテールにした少女が、商店街の歩道を一目散に駆けていく。
「あぁ、もう、こんな時間。早く帰らないと、お父さんのご飯の支度がぁ……」
少女は泣きそうな顔で左手の腕時計をチラチラと覗きながら、スピードを落とすことなく、住宅街への曲がり角を曲がった。
刹那、薄暗い路地にもかかわらず、周りの景色が一気に白く変わる。
「えっ?」
辺りに薄暗さが戻ったとき、そこに、少女の姿はなかった……。