4.
ヴィンセントが自身の執務室に戻ると、そこにはルーカスがソファに腰かけて待っていた。
「遅かったな?」
ルーカスがニヤリと笑いながら部屋の主を見る。
「ご用であれば、こちらから伺いましたのに……」
彼は溜息を吐いて、あえて無愛想に返事をした。
「……ヴィンス」
「なんでしょう?」
「お前、あの娘をどうするつもりだったんだ?」
「どうするつもり、とは?」
「“王家の森”で拾った後、匿って、その後、どうするつもりだったんだ? と訊いているんだ」
ルーカスはいたく真剣な眼差しを送っている。
「もう少し調査して確証が付き次第、それ相応の対応をするつもりでしたが……それが何か?」
「ふん。で、あいつはどうなんだ?侵入者なのか?」
「どうやらそうではないようです。本人が言うことを信用するならば、異世界からきた、と。何者かに召喚されてきたようです」
「召、喚?禁忌の術じゃないか!」
「はい。突然白い光に包まれて、気付いたら“王家の森”にいた、と。当初は、言葉も通じませんでした。今は魔道具でどうにか会話はできますが……」
「一体、誰が……?」
「わかりません。時間を見て調査を進めていますが、まだ手掛かりらしきものは何も……」
重く垂れこめた空気が部屋に漂う。
「それに、彼女について心配事が。アートのことがあり、保護を拒否されました。ゆくゆくは……とは思っていましたが、今はまだ、この世界で一人で生活していくことは不可能と思われます」
「アート、か」
「レンもアートと同じ考えのようです。私がもっと早く話していれば、こんなことには……」
自責の念に駆られ、思わず握り締めたヴィンセントの拳が、ブルブルと震えていた。
「……何か方法がないか考えてみよう。あいつにはまだ、監視が必要だ」
そう言ってルーカスは立ち上がり、ドアノブに手をかけた。
「そうだ」
ドアを開け、部屋を出ようとしていたルーカスが、ぴたりと立ち止まる。
「ヴィンス。あんまり自分を責めるなよ?全部が全部、お前のせいじゃないからな?」
左手をひらひらと振りながら、彼は執務室を後にした。
ちょっと短めでしたが、いかがでしたでしょうか?
男の子たちの、内緒話(?!)。
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そんなあなた様に、茹だるように熱い感謝を。
諒でした。