2.
遥か頭上の天井から下がるシャンデリアは、華美でなく、しかし、その存在を確かに示している。
その下に長く続く白い大理石を敷き詰めた回廊を、ユウはヴィンセントの背中を見て進んで行く。
言葉を交わすことなく、ただ、沈黙を保って。
永遠に続くかと思う程のその先に、重厚な観音開きの扉が姿を現した。
「騎士団、ヴィンセント・クリストファー・ロイス、国王陛下に謁見のお許しを頂きたく参りました」
ピンと張りつめたヴィンセントの声に、ユウの身が、ぴくり、と縮こまる。
「よい、許可する。入れ」
威厳のある声が、向こう側から響いた。
「大丈夫。陛下は判って下さる」
彼は不安げにしているユウに向かってささやいたあと、表情を戻し、扉を、ずい、と押し開けた。
「この度はお目にかかる機会を頂きましたこと、ありがたく存じます」
「よい、ヴィンセント。……して、その娘が?」
「はい」
俯いたままヴィンセントの後ろにいたユウを射る視線に、彼女は息をすることさえ許されないような感覚に陥った。
「娘、顔を上げよ」
「さあ、ユウ」
ヴィンセントに背中をそっと押され、言われたままに顔を上げ、目の前の威圧に向かう。
その先には、中央に男と女が並んで椅子に掛け、その両側に一人ずつ男が立っていた。
(この方が、国王陛下……。じゃあ、あちらが王妃様?)
ユウはそろそろと前へ足を進めた。
「名は?」
「……ユウ、サカキ、と申します」
恐る恐る口を開く。
「異世界から来たと?」
「そのようです。気が付いたら、森の中に、居ました」
じっと心の底まで覗き込むように見た後、国王は、自身の右に控えていた男に声をかけた。
「ダリル。どう思う?」
「はっ。……見たところは、“王家の森”の結界を超えて侵入したようには思えませんが」
「エディ。お前はどうだ?」
「陛下や殿下方に危害を加えるようには見えません。……少なくとも、今は」
王妃の左にいた男が国王に進言し、スッとその目を細めてユウを見る。
その視線に、ぞわり、とユウの胸が騒いだ。
押し潰されるような感覚が全身にまとわりついて、次第に呼吸が浅くなる。
エディ、と呼ばれた男が国王に近寄り、耳打ちをするような姿を視界に捉えた直後、違和感に耐え切れず、ユウががくりと膝をついた。
「ユウ? どうした? 顔色が良くな……」
ユウのすぐ隣にいたはずのヴィンセントの声が、彼女の意識からすうっと遠くなっていった。
仕事で失敗して凹んじゃったので(?!)、ちょっと早めにUPです。
さて、お話は、“ユウ、国王様との遭遇”。
『国王様なのに、危険視している人物と直接逢っちゃうのかい?』な~んて、
カタイこと、言いっこナッシング(←Σ(・ω・ノ;)ノ?!!)でお願いします。
(↑実は、ついさっき、これに気づきました。)
気力が持ったら、明日か明後日に、もう一話、UPしたいなぁ~…などと、
不謹慎なことを悶々と考えております。
さて、どうなることやら…┐( ̄ヘ ̄)┌
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
そんなあなた様に、最大級の感謝を。
諒でした。