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黒の管理者  作者:
第二章
17/50

1.

 

 

 二人がヴィンセントの屋敷を出てから、かなりの時間がたった。

 それまで舗装されていない道をガタガタと走っていた馬車の揺れが、ピタリと止んだ。

 屋敷を出る時には降っていた雨も、止んでいるのだろう、物音ひとつ、聴こえなかった。

 

「このままおとなしく待っていなさい」

 今までに聴いたことのない、硬いヴィンセントの声に続き、馬車の扉の音がした。

 どうやら、到着の報告に出たようだ。

 

 (だから、頼っちゃダメだったのに…)

 

 大丈夫、といったものの、不安に押しつぶされそうになり、ユウは、自責の念に苛まれる。

 俯いていると、再び扉の音が聞こえ、「出ろ」 と、短く命令する厳しい声がした。

 

 目隠しを外され、突然明るさを取り戻した周囲に彼女は目を細めた。

 経験のない揺れに耐えていた身体をゆっくり持ち上げかけた瞬間、「さっさとしろ!」 と、背後から思い切り突き飛ばされてバランスを崩し、頭を下にしたまま、馬車から石畳のエントランスへと転げ落ちた。

 

「ユウ!」

 少し離れた場所から、聴きなれた声がした。

 すぐにでも立ち上がりたいけれど、手が自由にならないので、ユウにはそれすらできない。

 

「大丈夫か?」

 ヴィンセントが、手を差し伸べて助け起こした。

 ユウの服についた汚れをさっと払った後、彼女の顔を見て驚く。

 馬車から落ちた時に、打ち付けたのだろう。右頬が青く腫れ、かすり傷ができていた。

 

「……ごめんなさい」

「どうして謝るんだ? それより、少し動かないで。傷、消してしまうから」

 そう言って、彼は、今しがたできた傷に、回復術を施した。

 術を発動させているため、そっと頬を撫でる手が冷たい。

 

「ヴィンス、何やってるんだ!」

 馬車から一人の男が降りてくる。それは、ユウを突き飛ばした男。

 彼女は視線を合わさないよう、俯いた。

 

「レン、お前……」

 怒りのこもったヴィンセントの声に、ユウがハッと我に返る。

 彼は、彼女の肩に触れていた。

「ヴィン…ス。ダメ、私が悪いの。その人は何も……」

「ユウ。君は気にしなくていい。今はあの術を使っていないよ」

 ヴィンセントはユウに向かってふわりと微笑むと、「レン」 と男に向き直った。

「どういうつもりだ? 何故、突き飛ばした!」

「はっ、ヴィンスこそ、どういうつもりだ? そいつは“王家の森”に侵入した“罪人(つみびと)”だぞ? なぜそこまでしてやる必要があるんだ!」

 凍てつくようなグレーの瞳が、ユウを射抜く。

 

「お前もか、レン」

「こんな奴のために、なんで、アートが牢に入れられなくちゃならない? おかしいだろ! 牢に入るのはアートじゃない、コレだ!」

 そう吐き捨てて、彼女の方につかつかと進んだかと思うと、左肩をドン、と突いた。

 馬車の揺れの名残と不意の衝撃に、ユウはそのまま後ろに倒れそうになったが、ヴィンセントが倒すまいと抱き留めた。

 

「レン、待て! ウォーレンっ!」

 引き留めるヴィンセントを無視して、その男は去っていった。

 

「すまない、ユウ」

「しょうがないよ、ヴィンス。私は大丈夫だから。助けてくれて、ありがとう」

 ユウがそう言うと、彼は少し哀しそうに笑った。

 

「……行こう。国王陛下がお待ちだ」

 彼女は頷き、先を行く背中に続いた。

 

 


 

いつもありがとうございます。

ご無沙汰をしております。10日ぶりのUPです。


今回から、文章の書き方を変えてみました。

…で、一言。『おかしい。そして、おかしい』。

         (↑某ヒーローの"S●y Hi●h"でお願いします。)

頑張って(?)思い悩みましたが、哀しいかな、この『おかしさ』の解消法を見つけられませんでした…。


ご意見・ご感想、絶賛受付中です。

是非とも、このおバカな身の程知らずに、愛の手を。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

そんなあなた様に、心からの感謝を。


                                     諒でした。

 

 

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