表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の管理者  作者:
第一章
12/50

9.

 

本文中、暴力的なシーンの記述があります。

このようなシーンが苦手な方、不快に思われる方は、恐れ入りますが

閲覧をお控えくださいますようお願い申し上げます。


皆様のご協力に感謝致します。



 

 ユウが微笑ましい発言をしてから、三日が経過した。

 ヴィンセントは仕事が忙しいらしく、朝は日が昇る前に王城に出向き、夜は彼女がすっかり寝静まった頃に戻ってくるという生活を送っているようで、この三日間、二人は全く顔を合わせていない。

 

 目を覚ました翌日にヴィンセントから貰ったリングのおかげで、ユウは、会話に困ることはなくなっていた。

 けれど、時間つぶしを兼ねて知識をつけるために本を読もうと開いても、全く文字が読めなかった。

 

「オールオッケー、ってことじゃないのね……」

 ユウは、苦々しい思いにテーブルに肘をつき、目の前に積み上げた、角々(かくかく)した記号のような文字がびっしりと書きつめられた、分厚い紙の束を睨んだ。

 

「随分と恐ろしい顔をするもんだな」

 突然聞こえた声に、ユウは、その主がいるらしい方向を見遣る。

「何か、御用ですか……」

 

 開け放したドアに、寄り掛かるように立っていたスティアートが、ゆっくりとユウに近づいてくる。

 ユウを見る深海色の瞳は、相変わらず冷厳で、彼女は身を隠したい気分に駆られた。

 しかし、徐々に距離を詰めてくるその視線の刺々しさに、身が竦んで動けなかった。

「別に、用なんてない。怪我人の見舞いに来ただけさ」

 部屋の主に歓迎されない訪問者は、そう言って真横に立つと、ユウの顎に手をかけ、上を向けさせた。

「…っぅ!」

 

 ようやく塞がってきていた喉元の傷の、引き攣れるような痛みに僅かに顔を歪め、彼女は、すぐ目の前の男の顔を睨み付ける。

「随分とヴィンスのお気に召したようだな。どうやって取り入った?」

「な!」

「ヴィンスが、得体も知れぬお前の事を気にかけている。不可侵のはずである“王家の森”の森に侵入したお前を、だ。本来なら即、処刑されるべきモノに、何故、奴が、心を砕かねばならんっ!」

 

 スティアートが言い終わると同時に、床に大きな穴が開きそうな音を立てて、ユウは、座っていた椅子と共に床へと倒れこんだ。

 左頬が、火を押し付けられたように熱く、痛みを訴える。どうやら渾身の力で打たれたらしい。

「……ぅ」

 くらくらする頭をどうにか持ち上げ顔を上げると、ユウのすぐ目の前に、履き込まれた革のブーツがあった。

 

「なかなかの根性だな?」

 ユウは、自分を見下ろす男の、いつかと同じ、地を這うような怒りを含んだ声に恐怖を覚えたが、負けじと睨み返す。

 スティアートは、その視線を気にもかけず、倒れている彼女の背中を踏みつけ、その黒髪を掴んでグイと引き上げた。

 背中に置かれた足に、一気に重みが科せられる。

「……ぁっ!」

 背中からの圧で肺が押さえつけられ、息がごくわずかしか入らない。

 その苦しさのあまり、ユウの目に、涙が滲む。 

「どうした? さっきまでの勢いは、どこへ行ったんだ?」

 痛みを堪えて薄っすら開けたユウの視界に映った、ニヤリと笑う男の目には、軽蔑と憎しみの色のみが浮かんでいた。

 

「ユウ様っ? スティアート様、貴方、何をなさっているのです!」

 ユウの遠ざかっていく意識の端で、ジュディの悲鳴とこちらに駆けてくる足音とが、聞こえた。

 

 


 

ようやく落ち着いた生活を送れていたのに、また、一波乱起きてしまいました…。

どうしてユウはここまでアートに嫌われなくちゃならないんでしょう?


その理由は、また追々…。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

そんなあなた様に、心からの感謝を。


諒でした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ