出会い+約束
パソコンのデータがぶっ飛んだ都合で、このように長い間更新が出来ず申し訳ありませんでした、しかし自分もそろそろ受験生、更新が遅くなってしまうかも知れませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
では、久方ぶりの18話です。
龍牙とミリーナはクレセンティアの城下町まで足を運んでいた、今は昼少し前、町には沢山の商人や商兵団と呼ばれる、独自経由で品物を売る兵士集団などが犇めき合っている、普通ならばこんな所に数分いるだけで揉みくちゃにされボロボロになるのだが。
龍牙は周りから当てられる奇怪の目とあからさまに自分をよける人々に鋭い視線を向けていた。
二人はそんな大勢の人々が少しずつ開ける道を何の苦労もなしに歩いているのだ。
わかっているつもりではあった、龍牙は思う、自分の魔力の渦となっているのは神の下僕だ、周りはこの国を含めた周辺を滅亡まで追い込んだ厄災の持つ、不快な魔力の波長を本能的に感じとっているのだろう、勿論、感じ取っているだけでそれの正体はわかるはずもないが。
「龍牙さん、何処か行きたい場所はある?」
そんな龍牙を見て不憫に思ったのかミリーナは声をかける。
「いや、特にねぇ・・・お前はどうなんだ?」
「勿論あるけど、何処から回ろうか迷っちゃって・・・」
ミリーナはキョロキョロと辺りを見回しながら、目を輝かせている、ミリーナにとってこれは最初の自由なお出かけである、少し前に脱走をはかった時は周りなんて何も見ていなかった、そのためこれがよほど嬉しいのだろう。
そんな様子のミリーナを見て龍牙はため息をつく。
「ったく、迷ってんじゃねーよ、全部まわりゃあ良いだろうが・・・んのために俺がここまでやったと思ってやがる」
ぶっきら棒に言い放つ龍牙にミリーナは目を丸くする。
「いいの?」
「返答するきはねぇな」
その言葉を聴いたミリーナは顔を輝かせると、龍牙の手をとる。
「じゃあ、じゃあ、まずはあそこから!」
急に手をとられたことに少し驚く龍牙だが、次にはミリーナに驚くほどの力で引っ張られる、たどり着いたところはドールハウスという名の人形店であった。
「・・・やっぱり言うんじゃなかったな」
今更後悔をしても遅い龍牙である。
ミリーナと共に龍牙は入店、オレンジ色の優しい光に包まれた人形店はどれもこれも精巧に作られた人形ばかり、この国での値段基準がわからない龍牙でも高そう、とまでは予想が出来る。
「お前、こういったのが好きなのか?」
表情を綻ばせて人形を眺めるミリーナを見て、ふと龍牙は口を開いた。
「うん、大好き」
「そうか・・・」
ふと背中に当てられる視線に気が付いて、龍牙は後ろを向く、案の定店の定員と一足先に入っていた客が慌てて目をそらすのが見えた。
龍牙は内心舌を打つ、気分が悪い。
何処の世界も変わらない、自分たちと違う奴は恐れるか排除しようと行動を起こすか・・・自分も経験していたから良くわかる。
そして、いつも孤独になる、一人で誰にも頼らず生きていかなければならなくなる、それがこの世界でも自分に課せられた物なのであろう。
灰色の世界、自分はそこがお似合いなのかもしれない。
「龍牙さん、これなんてどう?」
「あ? 俺に聞くんじゃねぇよ、んなもんわかるか」
物思いにふけることを許さないように、突如龍牙の面前にクマのぬいぐるみがデン! 現れる。
「かわいいのにな」
渋々そのクマのぬいぐるみを戻す、その表情を見た龍牙が。
「かわねぇのか?」
「え? あ、うん・・・子供っぽいからダメだって、前からドリスに言われてるし・・・」
少し寂しそうに表情を曇らせるミリーナを見た龍牙は呆れた様にため息をつくと、ムンズとミリーナが戻したクマのぬいぐるみを鷲づかみ、呆気にとられるミリーナをスルーしながら店員の方へと持っていく、金、この世界では金貨と呼ばれているらしいが、龍牙はグレスから貰った皮袋からそれを適当にだし、おつりとしてもらった銀貨や銅貨を袋に収め、ミリーナの方へと戻り。
「ほらよ」
押し付けるようにミリーナの胸へと押し当てた。
キョトンとしているミリーナに、龍牙は少し目を細めて。
「お前、やっぱりわかってねぇな、俺が何のためにここまで面倒な事やったか、あいつは何もいわねぇっつったんだろ、だったら遠慮なんてするんじゃねぇよ、後悔するぞ・・・他に欲しいもんはねぇのか?」
「だ、大丈夫・・・これ、欲しかったから」
「んじゃあ、違う所行くぞ」
龍牙はぶっきら棒にそう言い放つと、ドールハウスを後にする、ミリーナはにわかに頬を染めながら嬉しそうに微笑むと、クマのぬいぐるみをギュッと抱きしめた。
それから数時間、太陽が傾き始めた。龍牙とミリーナはあらゆる店を転々とした、しかし、ミリーナの遠慮がちはそれほど改善されたわけでもなく、その後回った店の十分の一単位でしか物は買っていない、龍牙の腕には紙袋が一つぶら下がっていて、会話もなくただただ歩いているだけであった。
と、そんな時、龍牙の鼻に甘い香りが漂ってくる、ミリーナもそれに気が付いたのか匂いのほうへと視線を泳がせる。
「クレープ? なんだろうそれ」
そこにあったのは移動用に改造された屋台のようなものであった、甘い匂いの正体はあれである、ミリーナは立てかけられていた看板を見てこれをクレープだと判断したのだろうが、残念ながらこの世界の文字は龍牙には解読不可能で、流れるような筆跡で書かれている。
「知らねぇのか?」
「うん、最近出たみたいだから、龍牙さんは知ってるの」
「俺が前にいた所には普通に売ってたからな」
「おいしいの?」
「まあ、な・・・買うか」
龍牙の言葉を聞くや否やミリーナはコクリと頷く、二人は揃ってクレープ屋の方へと向かっていった。
そちらへ向かうと、久方ぶりの客なのか店員は目を輝かせていらしゃいませ! と声を張り上げる、みると店員は達磨のような体系で頭は不毛の地と化した所謂、少し危なげな雰囲気漂わせるおやじさんであった。
しかし、そう結論づける決定的なところは
「久しぶりのお客様よ~ん、私頑張っちゃうわ!」
この言動である。
ゾワリと龍牙の背に冷たいものが流れる。
「おいオッサン、ここで一番売れ行きのいい奴二つくれ」
「まあ、目つきの鋭いあんちゃんとカワユイ美少女さんが最初のお客様、いいわね~、今日はデート?」
「今すぐそのキメェ口を閉じろオカマ野郎」
「そんな鋭い目をしちゃイ・ヤ、ほらほら、隣の子も怯えちゃってるわよ?」
「誰の所為だと思ってやがる・・・!」
店の評判が悪いのはこいつの所為なのではないだろうかと龍牙は思う。
「はいこれね」
龍牙がこめかみを押さえていると、いつのまにか目の前にクレープが二つ差し出された、いつの間に作ったのかは謎だ。
「代金はいらないわ、初のお客さまだもの、その代わり宣伝よろしくね~」
そう言って差し出されたクレープを持ち、二人は人工的に作られた散歩道にあるベンチで腰を落ち着ける。
「今日は、ありがとう」
不意にミリーナがそう切り出す、クレープを食べ終わった龍牙はベンチにダラリと腰掛ける。
「別に大したことはやっちゃいねーよ」
「それでも、今日は楽しかった、いろんなものを買ってもらったし」
「そうかよ・・・まあ、ならいいんだが」
そう言って龍牙はミリーナの方へと顔を向ける、と。
「お前、口にクリーム付いてるぞ、ったく気づけよ」
そう言って龍牙は口の端にくっついたクリームを指で救って、そのまま龍牙は自分の口に運んだ、龍牙的には気にしているつもりは無いのだが・・・。
「は、はわわ」
ミリーナは何故か真っ赤に赤面すると、顔を伏せてしまった、それを不思議に思った龍牙は。
「どうした?」
「い、いえ、なんでもないの・・・大丈夫、大丈夫」
一人でブツブツといい始めるミリーナを眉を潜めて龍牙は首を傾げる。
と、そんな時だ。
背後から、誰かが飛び出してきた、いち早くそれを察知した龍牙は振り向きざまに拳を握り、いつでも攻撃が出来るよう身構えた、のだが。
ドン!
龍牙の拳はその誰かに打たれることは無かった、なぜならその誰かは。
「女?」
ボロボロで傷だらけの少女であったからだ、見ると腕からは目を背けたくなるほどの血が乾いて茶色に変色している、そして龍牙はもう一つ、気配を読み取っている。
「おい、コイツを頼むぞ」
ミリーナにグッタリとした少女を渡すと、少し離れてろと忠告をしておく。
「数は四だな・・・ったく、災難はつきねぇな」
そう言って龍牙は不適に笑った。