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不良+異世界=  作者:
奪還編
14/18

=それぞれの始まり

これで一区切りです、ここまでお読みになってくれた読者様はありがとうございます、下手糞な文章でスミマセヌがこれからもがんばらせていただきとう存じます。

「心臓を貫いたと、私は判断する、彼の心理世界はあと数秒で崩壊を辿ると見られ、そこに私の魔力を繋げば・・・・・・私は復活すると判断」


神の下僕は龍牙に剣を突き刺したままの状態でそんなことを口ずさむ、感情の篭っていないその言葉では、殺しと言うもの事態が意味をなくして薄っぺらな紙の様に思えてきてしまう。


「・・・・・・?」


神の下僕は周りを見渡して、少しだけ、ほんの少しだけ眉を潜めたように見えた。


心理世界が崩壊しない。


龍牙と言う心理を今この場で破壊した、ならば龍牙の存在していたこの世界が崩壊するのは時間の問題である、だが、その時間を過ぎてもこの世界に変化は無い。


「心理世界にいた彼は本物と見てまず間違いはないと、私は判断、では・・・・・・これは一体?」


「あぁ・・・そうだろうよ、俺はまだ死んでねぇからなぁ」


神の下僕の耳に、先ほどまで死んだと思われた龍牙の声が届く、神の下僕は振り返ると同時に、龍牙の血みどろの左手が神の下僕の右手を掴む、その握力に神の下僕は口を少しだけ開く、まるでコンクリートに拳を打ち込んだように動かないのだ。


「なぜ? アナタの心臓は貫かれたはず、と―――」


「確かに、俺の心臓は潰されたさ、情けねぇ事に痛みに気絶もした・・・・・・だがな、ここは俺の世界だろ? だったら話は簡単だ、俺は死なないと強く願えばどうなる?」


そう、言わばここは龍牙の意思を最も強く繁栄される世界、ならば龍牙が死を望まないのだとすれば自然とこの世界は龍牙を死なせぬよう働く。


この世界で戦闘になった時点で、龍牙はホーム、神の下僕はアウェイなのだ。


「残念だったなぁ」


龍牙はそう言うと顔を上げた、その瞳を見た神の下僕は、何故か自分が今耐え難い恐怖を抱いていることに気がついた、何も持たぬ虚無の魔物、しかし、それに感情を植え込むほどの瞳。


神の下僕は知っていた、その瞳の恐怖を。


神の下僕は知っていた、その瞳の強さを。


だから、今震えるほどの恐怖が体を支配しているのだ。


龍牙の瞳は燃えるような紅へと変わっていた。


神の下僕は龍牙の腕を振りほどこうともがくが、まるで万力のように龍牙の手は離れない。龍牙はそれを見るとにやりと笑う。


「わかってんだろ? もう勝負はついたってな」


龍牙はゆっくりと右腕を掲げてみせる、神の下僕、それは巨大生命魔法、龍牙の右手は神外れ、それは魔法であればそれに触れた時点で強制的に魔力へと戻す異能力。


「テメェは俺の魔法とぶつかり合ったとき、視線を違うところへ向けた、あれは俺の右手を見たんだろ? 触れればもう元には戻れないかもしれねえから、一番警戒してなぁ」


龍牙の右手が少しずつ迫る、神の下僕はまるで抑えていた感情が爆発したように恐怖に震え上がっている。


「いやだ・・・イヤダ嫌だ!」


まるで駄々をこねる子供のように神の下僕は空いている左腕で龍牙に殴りかかるが、軌道も曖昧な攻撃など取るにならない、龍牙は歯牙にもかけない様子でそれを避けると。


「じゃぁな」


そう言うと龍牙は右手で神の下僕の首を掴み取った、途端、神の下僕の動きが止まり、全身が綻び始めた、まるでパソコンで文字を書きそれを消していくように。


神の下僕が完全に消えたところで、龍牙は息を大きく吐いた、心臓を貫かれた時の痛みは想像を絶したのも、辛うじて死ななかったものの、激痛は体を支配している。


龍牙の足は力を失い、ゆっくりとした動作で地面に倒れこんだ。


「ったく、面倒くせぇ・・・・・・」


龍牙はそのまま力尽きて横たわり視界を暗く閉ざした。





次に龍牙の目が開いたときは、見覚えのある病室であった、まだ日が高いのか時折鳥のさえずりが耳に届く、前の戦闘が嘘のような風景である。


「吃驚以外何物でもないね、おはよう龍牙」


龍牙は寝惚け眼で少しばかり機嫌の悪そうに眉を潜めながら声の方に視線を向ける、ベッドの横に座っていたのは白いローブを着た、グレスであった。


「いやー、大変だったんだよ龍牙、君が倒れてから色々あってね、眠る場所に現れたあのゴーレム倒さなきゃならなかったし、瀕死状態の君をここに運び込んで、シュバルツさんと僕で足の傷を治療、外傷はどうにかなるけど、君の腕は傷がないから治せなかったんだ・・・・・・あ、動かさないほうがいいよ」


「・・・言うのがおせぇ」


ズキリと走った痛みに龍牙は表情を歪める、無理に動かした代償が今頃これほどの痛みで帰ってくるとは思いもしなかった様子である。


それよりも、龍牙には聞きたいことがあった、それを口にするより早くグレスはわかりきった様子でニッと笑うと


「ああ、ミリーナ嬢なら今自室で休んでるよ、なに心配は要らないさ、自身のことより龍牙、君の事を心配しているように見えたからね、僕には」


「別に、きいちゃいねーことベラベラ喋ってんじゃねーよ」


龍牙は眼を細めるとそう言った、可愛くないねぇとグレスはため息を一つ、そして、急に真剣な眼差しになる。


「まぁ、今回の事件はミリーナ嬢奪還で何とかなったけれど、ここからが僕にして言えば一番大変だよ、君がね」


「あぁ?」


「魔力を感ずることが出来る人たちは皆、君を少し遠ざけようとする動きが出てくるかもしれないね」


「言いたいことがわかんねーんだけど」


グレスは席を立つと、龍牙の心臓部分を指差した。


「簡潔に言えば、君の体の中には、この国を含む大陸を滅ぼすほどの力を持った異界の魔物、神の下僕の魔力が宿っているんだよ、それに、今回騒動があった眠る場所の管轄は・・・・・・グレスベラントじゃないからね、あれだけ起きた騒ぎだ、向こうが黙っちゃいないと思うし、神の下僕が君の中にあるとなっちゃ、自然と動きは見えてくるもんだけれど」


グレスは疲れたように肩を落とすと、再び椅子に腰をかける。


「まぁ、それを知っている人数は限られているからね、直ぐには尻尾をつかまれないとは思うけど・・・もう面倒くさいや」


グレスは途中で会話を強引に区切ると大きくあくびをかいて、それじゃあねと一言言って、部屋から出て行く。


それと入れ替わるように今度はミリーナが駆け込むようにして入ってきた、龍牙がギョッとして扉のほうを見ると、閉まる扉の隙間から意地悪く笑うグレスの姿、風の魔法でメッセージでも飛ばしたのだろう。


龍牙は深くため息をつく、それに驚いたのはミリーナであった、胸の前で手を組むと少しオロオロした様子で龍牙を見る。


「あの、邪魔? グレスさんから魔法でメッセージが来たから」


「別に、で、何のようだ?」


「えっと、あの・・・ぅぅ」


少し唸るように言葉を発すると、ミリーナは顔を伏せる。


「何なんだよはっきりしろ、言いたいことがあるならさっさと言えっつんだよ」


「その。ま、まだお礼を言っていないと思って」


龍牙の言葉に後押しされ、ミリーナは小さくそう言った、だが、蚊の鳴くような小さな声では龍牙には届かない。


「聞こえねーんだけど?」


「えっと、だから・・・こ、今回は助けていただいて、ありがとうございました」


「・・・・・・ハァ」


「な、何でそこでため息を?」


「特に意味はねぇよ、ただ・・・至極当然の事したまでなのになんで、礼を言われんのかなって思っただけだ」


「?」


「・・・・・・わからねーならそれでいい」


龍牙は首をかしげるミリーナから視線を外すと窓の外を見つめた、そして一言小さく。


「何言ってんだろうな、俺は」





荒野にて。


「まだ・・・死ぬわけにはいかねぇよなぁ・・・」


一人の男は動かないはずの足を無理やり動かしながら荒野を歩き続ける、男の皮膚はところどころ目を背けたくなるほど焼け爛れ水ぶくれが出来、風が吹くたび激痛が走るがそれすらも凌駕する怒りが彼を包み込んでいた。


「あの場面で手加減するたぁいい度胸じゃねぇかよ、龍牙」


そうして一人の男、サエルス=グランドールは憎憎しげに歯を食いしばると再び一歩踏み出す、この世界の法則すらも無視する一人の青年に手加減され、今地面を這うようにしていること自体が屈辱以外何者でもない。


「俺を生かしたこと、後悔させてやる・・・よ」


サエルスはそのまま倒れこむ、だが、襲ったのは地面にぶつかる衝撃ではなく、包み込むようなやさしい、温もりに満ちた抱擁感であった。


サエルスはぼやける視界で顔を上げる、そこにはニコリと笑う少年の姿。


「おじさん、ここで死ぬ? それとも僕のために働いてくれない?」


どこから来たかわからないその少年はそう言った、まるでおもちゃでも見つけたような無邪気な声で、それを聞いたサエルスは口元にニヤリと笑みを浮かべる。


「ヘッ、決まってるだろうがよぉ、答えなんざ」


サエルスは暗くなる視界の中精一杯口を動かし一言だけ。


「リベンジマッチだ」




「いてて」


リティーナはそれだけ言うと近くにあるあちこち破れて綿の飛び出ているソファーに腰を下ろした、ここは誰も使わなくなり地図から消えた城、ドラキュラでも住んでいるのではないかと思うほど断崖絶壁に建築されたこの城は人がいたという過去すらも薄れ始めている。


「肩の傷随分酷いわね」


暗い室内のなか、一人の女性の声が聞こえる、リティーナは見もせずに目を閉じると。


「まさかのまさかさ、僕がやっていた行動がすべて無駄だったなんて思わなかったよ、これは僕が判断を誤ったがためについた傷、君も気をつけてよ」


カツカツと地面を叩く音が強くなり、窓に近づいた人影の姿が日の光により露になる、長い茶色交じりの髪の毛を一つに束ね、金色の双眸は心配そうにリティーナを見つめていた。


「そんな心配そうな顔しないでよ、ほら、もう直ってきてるから」


リティーナは心配無用とでも言うように肩の傷を指差す、すでに穴が開いていた形跡は無い、すでに直りかけているもののいつもの彼にしては回復が遅いように見えたのであろう。


「でも、依頼は失敗したんでしょう? どうするの?」


「まぁいいさ、ほとぼりが冷めるまで僕は裏で動くことにするよ」


少しだけリティーナは憂鬱な表情を見せる。


すると、彼女が。


「じゃあ、今度は私の番、うまくやってみせる」


真剣な面持ちでそう言った。






「そんな馬鹿な・・・ありえん! 魔力も持たぬ愚民が!」


「何いってんですかぁアンタは? ありえないだってぇ? くは! うわぁマジかよ現実逃避とかうけるっつーのぉ!」


祭司のような格好をした初老の王が、一人の青年に向かって叫ぶ。


この王は遥か南にあるケーリッヒと言う一つの大国家の王である、しかしだ。


どこぞの馬の骨かもわからない青年が、突如国に攻撃を加え、気がついたときには百万以上もの兵が、魔力も、装備も何も持たぬ青年一人に壊滅させられたのだ、もはや王以外にこの国を守るものはいない、王は手に持つ杖を振りかざす。


魔方陣が一つ現れるとその青年に向かって巨大な火柱を放つ、だが、青年はそれを見ると凶器の笑みを浮かべた。


「甘いねぇ、甘い甘い! 虫歯が出来ちまいそうだぜ王様よぉ! 禁忌の魔法ぐらい手ぇつけねぇとかてねぇってのぉ! ってかもうすでに決着なんてついてんだよ、さっさと俺にこの国渡せぇ!」


青年がパチンと虚空に指を鳴らす、途端、何も無いはずの空間に無数の魔方陣が出現する、それぞれの魔方陣がそれぞれ違う輝きを放つ、青年に襲い来る火柱は目の前に魔方陣が発動し、同じ規模も魔法を行使、火柱同士がぶつかり合い、灼熱の熱風が青年と王の頬を撫でる。


王は絶望に打ちひしがれたような表情を作る、圧倒的な力の差、とても魔法使いとは思えないその業、一人の魔法使いが複数の属性に加え無数の魔方陣を形成するなど・・・遥か北のグレスベラントの魔法使いでも、四つが限度というのに・・・・・・。


「悪あがきはよせよぉみっともねぇ、俺が王になったらお前の功績ちゃんと書類に残しといてやるから心配すんじゃねーっつうのぉ」


火柱の熱風をまるで心地よいそよ風でも浴びているかのように青年は目を細めると、軽快に笑いながらクルリと後ろを向く。


それはこれ以上攻撃をしないという合図ではない、王を、この大国家を占める手腕を持つ王すらも自分の眼中には無いということだ。


「ばいばぁーい」


青年が甘ったるい声で手を振る、それを見た王は再び杖を握り締め、振るう。


瞬間、空間にある無数の魔方陣のすべてが発動、すべての魔法が王を包み、骨の一片すら残さず破壊しつくす、後に残ったのは半分ほど崩れ、瓦礫の山と化した城のみ、青年はあれほどの魔法を行使したにもかかわらず傷一つどころか、汗一つかいていない、まるで他人が魔法をつかったかのように、ケロッとしていた。


青年は崩れた城から眼下を見下ろす、この城下町はほとんど火の海と化している、逃げ惑う人々がここから見ると虫のように見えて、青年は笑いがこみ上げてきた。


「カハハハハハ!! いいねぇ最っ高! おもしれぇ!」


さてと、と破壊狂は笑いながら口を開く。


「次のターゲットは、何処になるかなぁ?」


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