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不良+異世界=  作者:
奪還編
10/18

好敵手+復讐

すみません、一身上の都合・・・と言うか相手の都合で二週間ほどお休みです、ごめんなさい(泣

魔法殺しマジック・スレイヤー】己の魔力を使い、相手の放つ魔法を打ち消し、自分に有利な状況を作り出す、一見驚くほど強い能力に見えるが、それは間違いだ。


なぜなら、それが使えるものは他の魔法は使えない、したがって、相手が放つ魔法を逐一消していくことしか出来ない、その途中で己の魔力が切れてしまえば、そこで終わりとなる。


そのことを、サエルスは十分にわかっているし、それに対抗するための策もある。


サエルスは余りにも無謀に龍牙の元へと駆け出した、その行動に龍牙は何かあると悟る。


サエルスの右腕には先ほど龍牙が打ち消した炎の渦が再び宿っている、龍牙にとってそれは恐怖に値しない、ただ来る攻撃を受け止め、カウンターを打てばそれで良いのだから。


龍牙は迫り来るサエルスに身構える、何時どこに何が来ようとも、今の自分に恐れる要素は何も無い。


サエルスは攻撃へと走った、龍牙へと近づくと、炎を纏う腕を振るう、当然サエルスの腕は龍牙によって遮られ、サエルスは攻撃を喰らう、はずだったのだが。


ゴオオォオウ!


「っ!」


サエルスの腕の炎が歪に形を歪めると、サエルスの腕から離れ、一つの独立した火球へと変わった、それはサエルスの振るう腕と秒単位の狂いも無しに連動、したがって、サエルスの振るう拳と火球が全く同じ方向から、手数を増やして襲い掛かったのだ。


咄嗟に龍牙は横へと飛び退いた、しかしカウンターを主軸としていた龍牙にとって、回避の行動は余りに状況に宜しくはない、反応が遅れ、回避が間に合わなかった。


火球の攻撃は避けられたが、サエルスの拳は龍牙の肩に深く埋まった。


体が大きく傾き、龍牙は地面に倒れる、肩がちぎられるように痛み、表情を苦悶に歪めるが、突如ハッとすると、倒れた状態から足を床に引っ掛けるようにして蹴る、低い姿勢のまま龍牙は前に少しだけ飛んだ、すると、龍牙の倒れていた所で激しい音が響く。


床がサエルスの拳で粉砕されたのだ、龍牙は立ち上がると、痛む右肩を押さえる、床をぶち抜くほどの腕力だ、後二、三発喰らえば確実に立てなくなる、それに、と龍牙は内心舌を打つ。


龍牙にとって相手の魔法を亡き物にするためにはどうしても右手が重要となってくる、先ほどの攻撃で右腕を動かそうとすると激痛が走る、先ほどの優勢とは打って変り、劣勢に持ち込まれたのは言うまでも無い。


「やっぱりな、だいたい【魔法殺しマジック・スレイヤー】ってのは、ある一定の場所でしか効力を発揮しない、お前の場合右腕・・・いや、もっと範囲は狭い、右手ぐらいが妥当だな」


サエルスは勝ち誇ったように笑う。


だが、そんな状況でも、龍牙は冷静であった、そう酷く冷静。普通なら焦りの一つや二つあってもおかしくないこの状況、しかし、龍牙にとってはスリリングな状況こそが、龍牙の闘志を逆に高ぶらせる。


「何勝った気でいやがんだよ、くだらねぇ」


龍牙はなんでも無い様に言葉を発する。


「最後までやらなきゃわからねぇだろうが」


どうせカウンターはもう無理と見た龍牙は逆に自分から向かう、注意すべきはあの右手に宿る摩訶不思議な炎、急に分離して襲い来るのが厄介だ、それに加えサエルスの攻撃が併用してくるとなると、普通にやってはまず勝ち目が無い・・・と思うのが普通なのだが、龍牙にとってそれは障害と呼べるには相応しく無い。


なぜなら彼はこう思っているからだ。


手数が一つ増えただけ、だと。


余りに突拍子も無くポジティブな考え方だが、龍牙にいたってはそれが強みでもある、心の強みとでもいえば良いだろうか、それに龍牙はかつて多対一で無敵を誇る強さを持っていた、それに比べれば、相手の攻撃が一つ増えたところで関係が無い。


「ほぉ、俺の炎に恐れないで突っ込んでくる辺り、バカなのか何か策があるのか・・・・・・」


龍牙自身、これといった戦略は持ち合わせていなかった、もともとどのように攻撃をしようか、など考える性質ではない。


肉薄した龍牙はサエルスの右腕に気配を割く、他にも配りたいが、危険度が先ほどの攻撃もあり、火を見るより明らか。


サエルスの右拳が動く、それと同時に龍牙も体に力を入れる、横へとなぎ払われるその腕は巨木を振り回しているような威圧的な風貌を組み合わせている、龍牙はそれを体勢を低くして避ける、しかし、だ。


再びあれが来る、サエルスの腕から途端に離れ形を変える炎の渦、それは火球ではなく、今度は鞭のように龍牙に襲い来る、体勢が体勢なだけに横っ飛びでかわしきれたが、龍牙は余り安堵はしていなかった。


防げなかった、すなわち防げた状況にもかかわらず、防げなかった、要するに防げる状態ではない、と言うことを相手に悟らせてしまったということに龍牙は内心唇を噛む。


「俺の攻撃で腕でも痛めたか、これじゃ、直ぐに終わっちまいそうだな」


サエルスはこばかにしたように唇の端を吊り上げる、龍牙は眉間に皺を寄せた。


「はぁ? 何言ってやがるバカが、テメェのその炎に気配配っとけば、大したことじゃねーだろうが」


「そっくりそのままテメェに返してやるよその言葉、俺の炎がまさか片腕だけと思ってねぇよな?」


龍牙はピクリと肩を動かす、見るとサエルスの左腕にも渦巻く炎が既に宿っていた。


「面倒くせぇ」


龍牙は目を細くする、片腕だけならまだ良かった、しかし、両腕ともなると・・・と考えるが、龍牙自身、また手数が一つ増えただけ、避けにくくなっただけ。


「こいつ見ても目を細めるだけなんて、つまらねぇな」


「お前を楽しませるつもりはねぇよ」


「そうだろうな・・・・・・お前はあの嬢ちゃんを助けてぇだけか」


「何言ってんだテメェ、んなわけ無いだろうが」


「はぁ? じゃあ何でここに来たんだ? あ、まさか俺とマジで喧嘩したかったと―――」


「バカかお前は、俺はあの童顔野郎の顔面に一発ぶち込めりゃあそれで良いんだよ」


「童顔野郎? ああ、リティーナの事か」


サエルスは思いついたように頷く。


「リティーナ、あいつの名前か」


龍牙の目が鋭さを増す、サエルスは少しため息をついた。


「あいつはヤベェぞ、俺も出来たら戦いたくねぇ奴だ」


「敵のお前に助言される覚えはねぇ」


「つまらねぇ奴だな、それじゃあ、再会とするかっ!」


サエルスはそう言うと片腕を振るう、サエルスの腕から離れた炎は幾つのもの火種を空中に生み出すと、そこから火球が、龍牙に円を描くように降り注ぐ、その速さに龍牙は慌てて右手を突き出す、痛みが走るが火球が龍牙の右手に触れるや否や、空気に溶け込むように消える。


だが、消えることが出来るのは右手に触った火球だけ、右手以外の場所へと来襲する火球を龍牙は器用に体を動かして避けていく、避けれないものは右手を使い消す、だが、腕を上げるたび苦悶の表情を龍牙は見せる。


「こっちが隙だらけだ!」


火球に意識を取られた龍牙は接近するサエルスに気配を配ることが出来ずにいた、龍牙は聞こえないように舌を打つ、サエルスは左腕を振るう、炎が鞭へと変わり、サエルスの振るう拳としなやかさを兼ね備えた炎鞭が龍牙を襲う。


避けられる場所は皆無、放たれる火球は尽きることを知らず、右腕を動かしどうにか防いでいるだけ、残っているのは左腕と両足、足を崩されたらそれこそ終わりのため、余り足技を使うことは避けたい、かといって、炎鞭とサエルスの拳、どちらも喰らって満身創痍の状態では次に控えるリティーナとの戦闘に支障がでる。


「本当は使いたくねぇんだけど、仕方ねぇか」


龍牙は舌を打つと左腕を突き出した、サエルスは眉を寄せる、諦めたのかと思った次の瞬間、龍牙が静かに口を開く。


「燃やせ」


「なっ・・・に!?」


途端、龍牙の左手に身長ほどある幾何学模様の魔法陣が出現、サエルスは余りのことに目を見開く、刹那、そこから地獄の業火に相応しいほどの灼熱の火炎が猛り狂ったかの様に渦巻くと、サエルスを飲み込んだ。


土で出来ているはずの床が抉り取られ、炎が通過した後は既に溝が出来ている、室内の空気は一瞬で熱波へと変わり、無風の室内に風が巻き起こる、炎がぶち当たった壁は瓦礫の如く崩れ落ち、そこから煤塗れのサエルスがヨロリと起き上がる。


龍牙は右手を下ろす、先ほどサエルスは咄嗟に己の炎を手に移し、かろうじで龍牙の業炎から身を守ったのだ。


「どう言う事だ・・・・・・【魔法殺しマジック・スレイヤー】はそれ以外魔法が使えねぇはず、それも、あの規模の火炎魔法・・・・・・詠唱もなしに一瞬で発動なんて馬鹿げてる、お前、異界の魔物ドラグレン神聖なる神ドラゴンか何かか?」


「俺を化け物みたいに言うんじゃねーよ、一つ言っておくぞ、俺は一度も自分が【魔法殺しマジック・スレイヤー】だなんて言ってねぇ」


サエルスは目を見開く。


「バカな、そんなはずねぇ、右手で触った魔法を無に返す、それをお前はやって見せたはずだ」


「まあ、右手で触った魔法までは当たってるが、無に帰すじゃねー、俺がやってたのは、相手の魔法を強制的に魔力・・・・・・・へと戻し、俺の体に取り込んだんだ」


サエルスは言葉を失った、そんなことあるはずが無い、それがもし実在するのだとしたら、目の前に立つ青年は、世界の法則すらも捻じ曲げる異様の存在となる。


この世界の法則。世界に散らばるのは無数の魔質エーテル、人体の内側に宿る、魔力エディット、そしてそれを行使し形をとして現れるもの、魔法マジックそれは一方通行になっている、魔法が消えれば魔質へと変わり、それは自然に人体へと入り魔力へと変わる、そしてそれを使い、魔法となる。


魔質→魔力→魔法→魔質、このように一方通行の道、これは揺らぐことは無い、逆転などありえない、それを崩すということは、世界の構造そのものを否定している事になる。


だが、龍牙はこれをやってのけた、魔法を魔質を中継させず、魔法のものを強制的にそれも無尽蔵に魔力へと変換させた。


「だが、それができたからと言って、あの規模の魔法が、できるはずねぇだろ」


「既にありえないことが起こってんだ、無詠唱で魔法を唱えたところで驚くんじゃねーよ・・・・・・さあどうする? まだやるか?」


龍牙は鋭い視線でサエルスを睨む。


サエルスは震えた、だが、これは恐怖から来る震えじゃない、人智・・・いや、世界をも捻じ曲げた異能力を持つ青年と、自分は今戦っている、そのことにサエルスの体は喚起の声をあげている。


「まさか、ここでくたばるわけねぇだろ! 面白いぞ龍牙! お前は俺の好敵手ライバルだ!」


サエルスは楽しそうに声をあげる、それとは対照的に龍牙は酷くつまらなそうであった。


「勝手に言ってろ、俺は認めねぇけどな、俺に好敵手ライバルなんていらねーんだよ」


龍牙は左手を突き出した、その標的は今息も絶え絶えのサエルス、だが、龍牙に躊躇いはなかった、静かに龍牙は言葉を紡ぐ。


「燃やせ、終わりだ」


烈火のごとく拡大した暴炎は虚しく、そして儚く、サエルスを包む。


炎の中、サエルスは猛然と叫んだ。


「次は覚えとけよ! りゅうがぁあ!!!」


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