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崩壊学園

作者: 巡礼狼373
掲載日:2026/07/28

初投稿の読みきりです。つたない文章だと思いますが、宜しくお願い致します。

 青葉学園の2年生・紫門 戒斗は、誰とでも浅く広く付き合う器用貧乏なぼっちだった。深入りを避け、事無かれ主義で生きてきた彼だったが、その生き方は突如として破綻する。

 

 ある日、戒斗は目を覚ます。なんだかここのところの記憶が曖昧でよく覚えていない。周りを見ると、ここは教室でほかのクラスメイト達もいる。窓の外を見ると、学校が町ごと真っ赤な巨大結界に覆われ、空は暗雲に包まれていた。教室の外に出ると、ほかの教室からも生徒が出てくるのが見えたが、教師たちの姿はかけらも見えない。そんな中、一人の生徒が悲鳴を上げた。その生徒の視線の先には学校の外は徘徊する緑の肌に小柄な体を持つ所謂ゴブリンとでも呼ばれそうな異形のモンスターだった。

 混乱の中で一部の運動部などに所属する生徒たちがモンスターを倒すと経験値を得てレベルが上がり、スキルやアイテムを獲得できるというゲームのような法則を発見した。

 事態が急変したのは3日目だった。「運営」を名乗る未知の存在から、絶望的な通達が下される。

『生徒諸君。部活、クラス、有志で派閥を結成せよ。半年間内に最も高いポイントを獲得した【1位の派閥】の願いを、何でも1つだけ叶えてやる』

 

 このアナウンスにより、学園は一変した。

 生徒会派閥や各運動部、不良グループに文化部同盟などそれぞれの部活やクラスが結束し、互いのポイントを奪い合う醜いバトルロイヤルが始まったのだ。

 戒斗もどこかの派閥に入ろうと模索した。しかし、特定のグループに属していなかった戒斗を快く受け入れる者などいない。「足手まといはいらない」「お前、誰のグループだよ」――冷たく追い払われ、戒斗は完全に孤立する。それでも、まだ戒斗の目の奥にある火は消えてはいなかった。


「……だったら、俺一人で全部やってやるよ」


 誰もいない校庭で、戒斗は静かに覚悟を決めた。一人だからこそ、誰の指図も受けない。誰よりも効率よく、愚直に強くなってやると。

 群れている生徒たちが派閥内の醜い権力争いや資源の奪い合いに終始している間、戒斗は誰もが行きたがらない危険地帯へと単身潜り込んだ。


 モンスターが過密に沸く地下体育館や、毒ガスが充満する化学準備室。命がけの戦いの中、戒斗は持ち前の観察力をフル活用し、ソロだからこそできる"超効率的な狩り"を模索していく。

 罠と地形の利用により、即席の薬品爆弾でモンスターの群れを一網打尽にする。

 不眠不休のレベリングをすることで、他の派閥が夜間の恐怖に怯えて身を潜めている間も、気配を消すスキルを駆使して一人で夜間限定の強力なモンスターを狩り続けた。


 身体は傷だらけになり、精神も極限まで削られた。しかし、死線をくぐるたびにレベルは跳ね上がり、レアスキル「影歩き」や「弱点破り」を獲得。気づけば戒斗のステータスは、巨大派閥のトップたちを遥かに凌駕する域に達していた。


 バトロワ開始から10日。学園中央のランキングボードの頂点に、圧倒的な数値が刻まれる。


【第1位:紫門 戒斗(ソロ)―― 2,5037,305 pt】。


 焦った「生徒会派閥」「運動部連合」「文化部同盟」などの生き残りは一時協定を結び、1位のぼっちを全員で叩くという総力戦を挑んでくる。百人を超える生徒たちが、武器やスキルを構えて戒斗を包囲した。


「紫門! ポイントを寄越せ! 一人で調子に乗るな!」


 叫ぶかつての同級生たちに対し、黒いコートを羽織った戒斗は、冷ややかな視線を向けた。


「群れなきゃ何もできないお前たちが、命を懸けて泥をすすってきた俺に勝てるわけないだろ」


 圧倒的なスピード、正確無比な攻撃、鍛え上げられたスキル――戒斗はたった一人で百人の包囲網を破り、誰一人殺すことなく、純粋な実力差で全派閥を完封・無力化した。


 学園のすべての派閥抗争を、彼は"完全なソロ"で制したのだった。


 全派閥を従えた戒斗は、学園の最上層――屋上に鎮座する最後の敵へと向かう。

 そこにいたのは、結界のエネルギーを吸収して巨大化した漆黒のドラゴン型ボスモンスター『破滅の使徒』だった。


 咆哮一発で屋上の床が崩れ去るほどの破壊力。しかし、戒斗の眼に恐怖はなかった。

 これまでの地道な努力、死の淵で手に入れたスキル、そして積み上げた膨大なステータス。そのすべてを叩き込み、蓮は一歩も引かずに単身で挑む。


 激しい死闘の末、戒斗の一撃がボスのコアを穿つ。

 巨大な地鳴りのような悲鳴とともにボスは霧となって消え去り、学園を覆っていた赤い結界が、カラカラと音を立ててガラスのように割れ始めた。


 その瞬間、頭の中に今までとは違う、機械的で重厚なシステムアナウンスが響き渡る。


『チュートリアル・エリア[青葉学園]:全クエストクリア』

『最高適性者:紫門 戒斗。単独での全試練踏破を確認』


 空中にホログラムが浮かび上がり、無機質なオペレーターの映像が現れた。倒れ伏す生徒たちが呆然と聞き入る中、システムの真実が告げられる。


『生存者諸君、そして紫門戒斗くん。今までの健闘をたたえようじゃないか。そこで君たちが抱いていた疑問に答えよう。なぜこの学校が結界に覆われたのか。それは、外の世界で始まった**【地球規模のモンスターパンデミック】から、人類の生き残りとなる「適性者」を選抜・育成するための【シェルター兼チュートリアル施設】**だからだ。』


「な……んだと……?」


 生徒たちは絶句した。

 自分たちが狭い学校で殺し合い、争っていた間、外の文明社会はすでにモンスターによって崩壊し、文明が滅びかけていたというのだ。


『結界を解除する。これより諸君は、崩壊した外界へと強制転送される。生き残れ、選ばれし戦士たちよ』


 光が収まり、結界が完全に消滅した。

 生徒たちが目にしたのは、かつての平和な街並みではなかった。

 崩れ落ちたビル群、ひび割れたアスファルト、そして空を埋め尽くす異形の飛竜と、地上を闊歩する巨獣たちの群れ――まさに「地獄」と化した現実の世界だった。


「嘘だろ……こんなの、どうやって生きていけば……」

 かつての派閥トップたちや生徒たちが、圧倒的な絶望を前に崩れ落ちていた。


 しかし、その惨状の中でただ一人、静かに笑みを浮かべる男がいた。


 紫門 戒斗だ。


 ボロボロになった大剣を肩に担ぎ、戒斗は恐れおののく生徒たちを一瞥する。

 かつては「ぼっち」と馬鹿にされ、誰からも選ばれなかった自分。だが、理不尽な地獄をたった一人で生き抜き、努力だけで最強の1位に登り詰めたという絶対的な自負が、今の彼にはあった。


「みんなで群れておままごとをしてた奴らには、キツい世界かもな」


 戒斗は不敵にほくそ笑むと、恐怖で足がすくむ元同級生たちを置き去りにし、モンスターが蠢く崩壊した都市へと一歩を踏み出す。


「……さて。チュートリアルは終わりだ。ここからが本番だろ?」


 孤高の最強プレイヤーとなった紫門戒斗の真の生存戦略(ゲーム)が今、幕を開けるのだった。

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