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7話 最終日

その日は、授業を抜け出して屋上にいた。


もちろん、藤林茜も。

二人横並びで座り込み、校庭をひたすらに眺めていた。



憎ったらしいほどの日本晴れ。


「私、君を知ってからこの病に歯止めが効くって思ってた。私のこときっと想ってくれないだろうから、私も君に期待をしていなかった。だから存在を忘れ去られることもないし、困ったら相談相手としても話せると思ってた」


青空を見上げて藤林はそう言った。


「でもダメだった。日曜日に家に帰って君に渡すはずだったクマを見ていたら君のこと頭から離れなくてさ。ユニークなんだよね、君」


そう言って、鞄から例の不気味なクマを取り出して、胸の前で強く握っていた。


「言葉は冷たいんだけど、滲み出てくる温かさが優しくて。元々、あの人とは上手くやっていけてなかったんだけど、いざフラれるとやっぱり辛くて。そんな時、君が優しくするから、ころっといっちゃったんだよ」

勢いよく立ち上がる。


深く息を吸って、青空に向かって後悔なんて一切ない表情で。




「わたし、君のこと好きみたい」




この世で一番聞きたくない言葉だった。


でも、藤林がそう言うんだからそうなのだろう。


「怖くないのか?」藤林の方に目を向けるが、彼女は満遍な笑みでこちらを見据えていた。

「ううん、君がいたから怖くない」


「お前の病気は俺に罹ればいいって思ってた。幸せそうに笑う顔とか可愛いし、不幸を背負うのはお前じゃなくていいって」


自分で言っておきながら、すごく恥ずかしいことを言った気がした。

藤林も目を丸めていた。


「私のこと、すき?」

「いや、別に」

「えーひどい、私はちゃんと言ったのに。あ、わかった、恥ずかしいんでしょ?そうでしょ?」


しつこく彼女は俺の顔を覗こうとするが、それは地面の汚れをひたすら数えていた。



「俺は、あくまでお前を助けたかっただけで」

「そっかぁ」優しい声で囁く。





「茜」

名前で呼ぶのは初めてのことだった。

目と目が合う。


恥じらう彼女の顔がどこまでも愛おしく感じた。




いいか。


一回しか言わないからな。










「俺……俺さ───」













ふっと。





















「あれ、俺…誰と話していたんだ」


俺は何気なく空を見上げた。


綺麗な青空が目一杯広がっている。





きれいなのに。

どこか、切ない気持ちが胸に溢れていた。




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