99話 変化
----(大島視点)----
「そろそろ僻地2が見えてくるはずです」
大乃木さんの言葉に皆が外に目を向ける。
「ヘキニも小さい建物のみでしたよね」
「そうだ」
「清見君、スピードを落とすようウリ坊達に伝えてくれ」
荒れ果てた地を皆が目を凝らして建物を探す。
「あ、あー、多分バスっぽいものが3台並んでいる。あそこら辺だ」
僻地2の空間建物を発見した俺らは、清みんを残して仏間を降りた。
久瀬さんが懐から僻地2のマップを取り出した。どうやらそっちはハリセンにはされずに無事だったようだ。
マップのおかげでバスから遺跡入口の方角もわかり、地面を確認しながら進み、迷宮の入口も発見出来た。
入口付近はスタンピードによる落下は起こっていなかった。
「目印を立てたら戻るぞ! ヘキイチで時間を食った分を巻き返す」
「あとは来た道を仏間で戻るだけなので楽勝ですね」
俺たちは足早に仏間へと引き返した。
仏間が見えてくると清みんがこちらに大きく手を振っている。
俺らが留守にしたのは30分ほどなんだが、何で大歓迎で迎えてくれるんだ?
違う……。
歓迎ではない。何か慌てている感じだ。仏間の奥へ戻ったり出てきたりと慌ただしい。
久瀬さんも気がついた。
「何かあったな。急ぐ」
俺らは仏間へと駆け出した。
「ふるふるさんがなんか変。ふるふるしてる、いや、いつもふるふるだけど、今は高速ふるふる? どうした? 具合悪いのか?」
清みんが一体のスライムの前で狼狽えたようにしゃがみ込んでいる。
清みんの前にいるスライムは、確かに高速でぶれている。しかもかなりの速度だ。
自分が乱視になった気がして目を瞬いてしまった。
「変なもんを食べたのでしょうか」
「変なもんと言えば変だけどな。食ったの魔虫だからな」
「でも、魔物はいつも食べてるんだけど……」
「おい、ポヨンさんもおかしくないか?」
久世さんがそばに居た一体を指差す。
見ると上下にポヨンポヨンしている。こっちもいつもの上下ではない。高速ポヨンポヨンだ。
いや、もはや、ビョンビョンしている。
「パミュンちゃん! プルン君もだああ」
清みんのスライムが4体とも見たことのない動きをしていた。
「食い過ぎじゃないのか? あれだけの魔物を食ったんだ、腹壊したのかもしれん」
「どーしよー、人間の薬効くかな、持ってきてたっけ?」
清みんが押入れをガサガサと探し始めた。久瀬さん達も荷物に薬がないかを調べている。
結局薬は見つからなかった。
皆が見つめるなか、ポヨンさんがこれでもかと言うくらい伸びたと思った瞬間にポトンと何かを出した。
「うんち? うんち出た……」
「食べ過ぎて便秘で苦しんでいたのか」
「いや、あれは苦しいぞ? 便秘は辛い」
「七海倉……お前、便秘体質かよ」
「いや、こっちに来たばかりの頃、野糞に馴染まなくて便秘になった。アレは辛かった」
「あ、おい。パミュンさんらもうんち出たみたいだぞ」
スライムのうんちは人間の便よりは薄いがしっかり濃い色だった。今まで気にした事がなかったが、そうだよな、食べたら出る、当たり前だな。
魔物も排便くらいするよな。
「おー、また出た。よしよし」
「てか、スライムってうんちするんだなー。初めて見たぞ」
「俺も初めて見た。いつもは自由行動の時に森でしてるのかなー」
----(清見視点)----
びっくりしたぁ。ポヨン君達がうんちしてるとこなんて初めて見た。
そうだよね、いつもは外に出た時に森でしてたんだ。うんうん、俺だってトイレしてるとこ人に見られたくないもんな。騒いじゃってごめん。
畳の上に落ちたうんちを外に捨てようとティッシュ代わりの端布で摘んだら、手に付いて……。
手に……付いて?
吸い付いた???
ウニョ? あれ?
手のひらのうんちを顔に近づけて観察。
「清見君、なに、うんちの匂いを嗅いでるんですか」
笑われた。
でも、これ、動いて……ない?
うんちって動く物だっけ?
手のひらのうんちに気を取られていたら、他のうんちが膝の上に登ってきた。
他の……うんち、達が。
「あの、コレ……、ミニスライム???」
俺の言葉に皆が一斉に寄ってきて俺を囲った。
「スライムだ……。しかもミニ」
「めちゃくちゃミニだ。……可愛いですね」
「色が濃いな。ポヨンさんは濃いめとは言え薄茶色だけど、これはみたらし団子っぽいですね」
「スライムって分裂するイメージでしたけど、今のそれって出産ですか?」
「排便……ぐはっ」
桂さんの背中にポヨン君が軽くアタックをかけていた。
さっきは、うんちなんて言ってごめん。
いま、俺の手のひらにはみたらし団子が7つ。あれ?どの子が誰の子だ???




