93話 ヘキイチ迷宮
----(大島視点)----
「楽ち〜ん、……だっふっ!」
清みんの意味不明な叫びと同時に、俺達は突然暗闇に包まれ浮遊感襲われた。
浮遊からのどこかに叩きつけられたような衝撃。
「だっ」
「ぐほっ」
「でっ」
防御内に居たおかげでそれほどの衝撃ではなかった、密集していたのでお互いがぶつかり合い重なる衝撃はあった。
「たた………」
「痛ってぇ………、大丈夫か、なんだ?何が起こった?」
「大島エレベーターが落下したぞ? ワイヤー切れたか?」
「踏んでる踏んでる、誰だよ」
「ごごごごめんなさい、ちょっとどうなってる……」
そうだ。俺たちは落下した。
瓦礫をかき分け踏みつけて歩いていた。その下に大きな穴でもあったのだろうか?
誰かが持っていたライトを付けた。
真っ暗な場所で突然のライトに一瞬目が眩む。が、次第に慣れてくる。
「ひっ! やっ!」
ゴキっ
仰け反った清みんの頭がすぐ後ろに居た七海倉さんの顎に直撃した。
しかし誰もそれを気にする人はいなかった。何故なら、俺らの周りは魔物でみっちりしていた。俺の防御にピッタリと密着する魔物達。
俺たちは魔物の穴に落ちたのだった。
「各自……怪我を確認しろ」
久瀬さんの声で我にかえる。ひっくり返り折り重なっていた俺たちは防御の中で各自が座り直す。自分の手足を触り状態を確認した。
「桂、問題ありません」
「大乃木問題ありません」
「七海倉問題ありません。清見君も大丈夫そうです」
七海倉さんが清みんを確認したようだ。
「あ、大島……も問題なしです」
防御の床を作っておいて良かった。それがない状態でこのミチミチとした魔物中に落ちたら、と思うとゾッとした。
久瀬さんも何度か深呼吸を繰り返している。
「大島、この防御のまま移動出来るか?」
俺も立ち上がり深呼吸をする。床あり状態の防御ボックス、移動は俺が歩くしかない。
しかし前後左右のどこ見ても魔物でみっちりだ。いや、防御壁に魔物がへばりついているだけかもしれない。
ゆっくりと地面を意識して右足を踏み出してみる。が、重いというかキツイ。行く手を阻まれている感じだ。
方向を変えるがどこも同じだ。
「難しいですね。押しても即座に押し返されている感じです」
「全員で押してみてはどうでしょう?」
「そうだな」
皆が立ち上がり前方の防御壁に手を添える。久瀬さんの合図で前へ押す。前に進みそうで押し返される。
「動かないな」
「魔物のラッシュの電車乗った感じか。身動きが取れんぞ」
いや、そもそも俺の防御内に完全に入っているのだ。俺以外の人の力は反映されないんじゃないか?
とは言え、床を無くすのはあまりに危険だ。何しろ床の下も魔物でみっちりなのだ。
俺たちは前後左右魔物に囲まれているのではなく、前後左右上下の全体を囲まれている。
囲まれていると言うよりも魔物の鍋の中に落ちたという表現がピッタリかもしれない。
「瓦礫の下に穴があり魔物が溜まっていたんでしょうかね」
「遺跡の迷宮の天井をスタンピードで魔物が踏み抜いたのかもしれない」
「って事は迷宮の地下1階……」
「いや、あの落下の感覚、もっと下かもしれない。地下2か地下3……」
「あ、じゃあさ、待っていれば魔物同士で食い合いをするんじゃないか? だって、ほら、4年前の遺跡迷宮もそれで魔物が減ったんでしょ?」
「おそらくそうだろう。が、300年も待っていられないぞ?」
「ああ、そっかぁ。腹がくちたら食い合いもしなくなるかぁ」
「ポヨンさんらに魔物駆除をお願い出来ないだろうか?」
「えっ! ダメダメダメ! いくらポヨン君達が強くてもこんなに大量の魔物、食べきれないよ! 絶対ダメです! ポヨン君らが食べられちゃう! 絶対貸さないです!!!」
清みんが背中のリュックを前に担ぎ直して抱え込んだ。リュックの蓋の隙間からニュロっとスライムの一部が出てくる。手か顔か足かはわからん。
「ダメダメ! ポヨン君! 出たらダメだよ! ジッとしてて」
何かを察して出たがっているのか、リュックがモゾモゾと形を歪めていた。
清みんがなおさら抱え込み直して亀のように覆い被さった。
それを見た久瀬さんも、それ以上無理は言えないようだった。
亀が首を引っこめたような形になっていた清みんが突然頭をあげた。




