92話 僻地1の遺跡迷宮
----(大島視点)----
翌朝、出発をした。荒れた森をなるべく直線で走る。上から落ちてくる魔物はある程度溜まった時点で清みんがリフレクをする。乗せっぱなしだと重くなるのでウリ坊への負担も大きい。
スタンピードのせいで、今まであったマップが使えない。どこもかしこも似たような荒れ具合だ。
「そろそろ僻地1へ着くはずだ」
「目印はあるんですか。地形が全く変わっちまってる。森だが荒地だかもわからないぞ」
「方角だけを頼りに進んでいるからな。目印は空間建物なんだが、僻地1の空間はそれほど大きいものが無いんだよ」
「ええと、確か、自家用車とバス、それと戸建てのキッチンでしたっけ」
「あとは小児科の待合室だったか」
「どれも高さ的には1階程度か」
「大きさも小型だ。僻地2も似たようなもんだな。なのでその2箇所は早い段階で地下にある迷宮へ降りたがった」
「ではそっちの迷宮に街を?」
「いや、空間建物を迷宮へ寄せただけだ。地上に近い層で避難生活をしていた。いずれそこの10階層に街を造るかニッポン街へ移動するかは保留になっていた」
「そうなんですか。なんで4年も保留に?」
「そこのキッチンの再生物資が豊富だったのと、住民の一部が当初遺跡避難所にいた時に何かあって揉めて分れた一団だったんだと。それでこっちに合流するのを渋っていた。かと言ってあちらでまとまっているかといえば、そうでもなかったりな。名前で揉めたりもしてたな」
「僻地2も?」
「ああ、いわゆる個人の集合体のような感じか。だが、今回のスタンピードでやはり大きい所に属して頼りたいと思った者が増えた。それで合流に住民一致で同意したそうだ」
「今回のスタンピードも、その近場の迷宮に身を寄せたので死傷者は出なかったんですよね?」
「ああ。スタンピードで身を寄せたわけではないけどな」
「と言うと?」
「僻地1、2の空間スキルの建物は避難住民が住める広さや数が圧倒的に足りない。ただ物資再生のために使われていた。当初の避難民達は建物の周りで雑魚寝の生活だ。だから近くに迷宮がある事がわかり直ぐに移動した」
「屋根も壁も無い場所での生活は落ち着かないですからね。迷宮とは言え踏破済みなら魔物も出ないし壁も天井もある」
「でもそれなら、その時点でこっちに合流すればよかっのに。揉めたと言っても一部の人でしょう?」
「そうなんだが。それは今だから言えることだ。あの頃はこっちもてんやわんやだったし、向こうも主流で動いていた人が揉めた人達だったりしたからな。ここ1〜2年でだいぶ気持ちも落ち着いてきていたので、こっちへの移動も前向きに進んできたとか」
「なるほど。けどまぁ、死傷者が出なくて良かったですよ」
久瀬さん達の会話を流して聞いていたが清みんが何か言いたげにチラチラと見ている。
「どした? 清みん」
「あ、あの、まだ走ってていいのかな? ヘキイチってまだ先?」
「発見! 班長ー、僻地1が見えてきました!」
清みんに被せるように、外を確認していた桂さんが叫んだ。
「おう、あったか。清見君、ウリ坊達にスピードを落とすように言ってくれ」
「は、はい」
俺も桂さんの横に立ち同じ方向に目を向けた。
そこら中に蹴散らした森の残骸が小山を作っている。元が森なのか荒地なのかわからないくらいだ。
確か僻地1の近くの迷宮は小さい森に囲まれていたと聞いたぞ。
よくよくよく目を凝らすと、その残骸の小山の間にふたつ、……みっつか?四角いものが混ざっているのが見えた。
桂さん、よく見つけたな。
それにしても、あの残骸のどこかに迷宮の入口が埋まっているんだろうな。
「住民は全員ニッポンへ避難済みでしたよね?」
「ああ。スタンピードの壁を視認後、迷宮の地下10階へ、そこからニッポンへと避難を即開始したそうだ」
「おお、そりゃ凄い。良い判断だ」
「けどあれから空間放置だとそろそろスキルやばくないですか?」
「うむ。捨てるには惜しい物資再生もあるので、地下を通りスキル持ちを連れてくる案もあったそうだが、今は10階の通路も安全が確保されていないからなぁ。気軽に行き来できる距離ではないし」
「それで今回、地上道造りを急ぐわけだ」
「そうだ。簡易でも通れる道が出来れば、建物を地上を引いて持ってくる。別働班が、だ。俺らはガラクタを退けて道を造る」
建物にかなり近づき、仏間は停車した。
スタンピードが通る前に住民が避難したのが幸いしたのか、この辺りに魔物溜まりは無い。
魔物達はただ通り過ぎたようだった。
「空間スキルの建物は確認出来た。が、上に乗った瓦礫の撤去には人手がいるな」
「俺たちでは無理ですね」
「それは移動班らがやるだろう。俺たちは道造りが本務だ」
「では、僻地2へ移動しますか?」
「ああ。その前に遺跡の出入口からその建物までの動線を仏間で整地する」
「何でまた……。地下道は使用しないんですよね?」
「暫く禁止なだけで一生使用しないわけではない」
「でもこの迷宮は放置になるんすよね?」
「そうだ。が、これまで使用していた地下1〜2階に置いてきた生活道具を、地上の建物を移動させる際に持っていきたいそうだ。出入口の瓦礫の撤去は必要ない。場所の確認だけを行う」
「うへぇ、迷宮遺跡の出入口……、この瓦礫のどこかにあるんですかね」
「魔物を警戒しながら探索するぞ。全員、大島防御に集合」
久瀬さんの呼びかけにチーム員だけでなく、仏間から清みんも飛び出してきた。
『全員』に反応したのか、ひとり置いていかれるのが嫌だったのか。
「位置的に、こっちの方ですね」
メモを見ている桂さんを先頭に俺の防御に全員が密集して進む。と言うか進んでいる(歩いている)のは俺だけだ。俺は防御で床も出現させていた。
荒れた地面に危険(魔物)が潜んでいるかもしれないからだ。
「ラクち〜ん、……だっふっ!」




