91話 いつの間にスキル
----(大島視点)----
「皆さん、落ち着いてください」
カツアゲ状態からとりあえず清みんを救い出した。
「時間が勿体無い。とりあえず北西へ仏間を走らせよう。清見くん、ウリ坊ズに指示を出してくれ」
「あ、はい」
俺たちは次の森までまた仏間を走らせる。俺の防御で包み込み、地面の魔物は踏み潰して進む。いちいち息の根を止めたりはしない。魔物が多すぎてキリがないからだ。
とりあえず光が丘タウンパークへ向かい道を造りながら進むのだ。
その間に、清みんに発生したスキルについて話した。
「スキル石を使用せずに『気力スキル』が新たに発生した、と」
「はい……」
「清みん、空間仏間と回復は変わりなく? 今までどおりの表示か?」
「うん。変わってないと思う」
「つまり、スキルは必ずしもスキル石が必要ではない、と言う事か」
「そもそも俺ら地球人はこの世界に転移して来た時に選択式でスキルを貰ったり、清みんみたいに子連れで空間スキルを貰ったりしたからな。そこからしてイレギュラーだったりするんだろうな」
「スキルが自然に生えた理由は置いておくとして、問題はさっきのリフレクが、どのスキルからくるものなのか」
「空間に回復に気力か……」
「リフレク……相手の力を跳ね返すだったか? 空間ワザ、回復ワザ、気力ワザ…………どれもあり得そうだな」
「だが、気力スキルが湧いた時期と重なるってことは、気力スキルがワザを出した可能性が高くないか?」
「と言うことは、気力持ちの俺も使えるワザって事か」
気力スキル持ちの久瀬さんが期待に満ちた目をして立ち上がった。そして、仏間の端、ガラス障子を開け放してある所まで歩いていったと思うとおもむろに叫んだ。
「リフレクション!!!」
もちろん、何も起きなかった。何しろ今仏間周りに敵はいないからな。
「わかっている。練習だ」
そう言って何度も『リフレクション』を唱えていた。
すると大乃木さんが立ち上がり、久瀬さんの横に並んだ。
「リフレクションッ!」
いや、あんたのスキルは『体力』だろうが。
呆れていると大乃木さんがくるりと振り返った。
「気力が足りない部分は体力で補うぜ」
そう言うと物凄くデカい声でリフレクを詠唱し始めた。そう言う問題ではない気がするが。
すると桂さんと七海倉さんも立ち上がりふたりに並ぶ。
「俺は物理的にリフレクちっくな攻撃をするぜ!」
「俺もだ」
いや、すみません。意味がわからない。
「大島、お前も並べ。完全防御でリフレクしろ!」
嫌だ。俺は普通の防御でいいです。
「大島氏ぃ、リフレクで弾き飛ばす事も防御のうちだよ?」
うわぁ。清みんのわけのわからない御託に久瀬さんらが激しく頷いている。
「俺は防御壁で弾くからいいんだ」
「でもさ、さっきみたいに粘っこいのに絡まれたら、ねっ?」
ダメだ。逆らえない。俺は渋々立ち上がった。
成人男性6人が走る仏間の開け放されたガラス障子に並び、「リフレクション」を叫び続ける。(若干一名はリフレクチョンだ)
なるほど、練習とはいえ効果が明らかに目に見える。
走る仏間に気がつき仏間へ集ろうとする魔物が、『リフレクション』の詠唱で弾き飛ばされる。
問題は誰のリフレクか、だ。
まぁ、ほぼ清みんのリフレクだとは思う。
そこで、ひとりずつ試す事になった。
スタンピードのおかげで魔物には事欠かない。清みんは100%の確率で成功した。
「俺も気力スキルなのに何故だ」
久瀬さんががっかりしていた。
「やはり気力スキルではなく空間スキルからの派生なんでしょうかね」
もちろん久瀬さん以外の3人も成功していない。俺もだ。俺はつい防御壁を動かしてしまうのだ。難しいな。
そこでピンときた。
「リフレクが攻撃に対しての反撃だとしたら、今は仏間に居るので攻撃されているのは清みんの仏間になるんじゃないですか? だから他の人がいくら反撃したくても直接攻撃を受けていないのでリフレクは無理じゃないかと」
「なるほど、それも一理あるな」
「じゃあ絶対に無理じゃないですか。直接攻撃を受けるなんて危険はおかせないっすよ」
「いざと言う時の最後の手段、みたいなものか。あとは防御スキルのようなものがあれば、それとの併用か」
「つまり、今の清見君がそうか。仏間の空間スキルとの併用」
「なるほど。となると尚更もっと迷宮でスキル石をドロップしたいですね。防御系のスキルを!」
「その前に日常生活を取り戻さないとな」
過去のマップを無視した新しい道、光が丘までのほぼ直線の道は出来た。と言っても仏間で造ったのでそこまで広い道ではない。
機体か病院を引いて来れたらそれなりに広い道を造る事ができたのだが、今はそれらを動かす段階ではない。
「どっちみち光が丘はニッポンの近くへ移動が予定されているんですよね」
「そうだ。だから、空間建物の移動の道標となる直線道が引かれればいい」
「途中に森は3箇所か。多少くねっても通り抜けた方が早いからな。清見君のリフレクは上手くいきましたね」
「ちょんのままでしたね」
「だってそれで覚えちゃったから……」
そもそも清みんは子供らとの遊びで『リフレクチョン』をしていたらしいからな。
子供がマジに飛んでいかなくて良かったな。あくまで『反撃』だからな。リフレクがただの攻撃じゃなくて良かったぞ。
俺らは地上の整地、まずは大まかな道標となる道の掃除が主だ。なので、光が丘の移動にはノータッチだ。
久瀬さんと桂さんのふたりが光が丘の集会所へと入っていく。二度目のスタンピードでの被害状況を聞いてくる仕事も受けていたようだ。
久瀬さん達は大してかからずに戻って来た。
「どうでした?」
「うん。被害は大した事はなかった。だが、連れて行ってほしいと訴える住民が多数いるらしくギルド員も閉口していたな」
住民達が出てくる前に俺たちは出発した。
「次の目的は僻地1、2だ」
「あれ? そこの住民は地下を通ってニッポンへ避難済みじゃなかったでしたっけ?」
「そうだ。住民は避難したが、地上の状態を確認してくるように言われている。一応幾つかの空間建物が残されているはずだ」
「え、それって空間スキル、大丈夫なんですかね」
「そうなんだよ。一応経験値は100になっているらしいので20日の猶予はあったんだが、スタンピードが起こる事は予定外だからな。地下道を通りスキル持ちが期間内に戻るのは難しいかもしれない」
「出来れば地上に一本道を造って高速移動でタッチしに行けるようにしたいそうだ」
「それなら僻地を先にした方が良かったのでは?」
「うむ。本部でも意見が割れたそうだが、光が丘は危険な状態な上にかなりの人数の住民が居る。僻地の人は避難済みだからな。最悪、空間スキルが消滅するだけだ」
「なるほど」
「僻地1の再生物は?」
「確かに惜しいがスキル保持者からの納得、承認の上、光が丘を優先した」
「そうか。俺らギルド員は空間スキルやテイム能力を羨ましく思うが、一般人にとってはスキルより人の命、だからな」
「地上の道が通れば、間に合えば連れていく計画ではあるようだ。それはギルドの別部署がやるさ」
「じゃあ俺らは急いで道を造りましょう」
俺らは来た道、来た時に出来た道を突っ走る。もちろん途中休憩でウリ坊らも休ませる。
ニッポンへかなり近付いた地点で、出来たばかりの道から逸れる。と言うか無くなってしまった道をまた造りながら進む。
日が暮れ始め、今日は適当な場所で一泊となった。明日、僻地1へ向かう。




