90話 新世界
----(大島視点)----
俺たちは地上の整地へと駆り出されたが、それは簡単なことではなかった。
あのスタンピードは、ただ、魔物が通り過ぎただけではなかった。
ハリケーンが通り過ぎた残骸の掃除をする程度の気持ちで出て来たが、森の折れた木々を退かすだけの話ではない。
「これは果てしない作業になるな」
「そうですね。ただ、森の中の折れた枝を退かすだけじゃない。スタンピードで溢れた魔物は地上のそこらじゅうに残された」
「新しい魔物が地上のあちこちにばら撒かれたってことか。今までの情報も役に立たないな。この4年で苦労して積み上げた物が……」
久瀬さんが苦しそうな表情をしていた。元自衛隊、そして現ギルドの人たちは本当に苦労してここまで来たのに、それが一瞬で消え去ったわけだ。
マップも魔物もまた一から探り直しなのだ。
それに、俺たちの知らない場所でこの4年間生き残った人達が居たとしても、あのスタンピードでもしかしたら……。
「でもさ、俺らは地下都市で生活してるからそこまでスタンピードの被害も受けなかったしさ、地上にいた人も空間スキルの建物があって良かったよね」
「そうですね。班長、前向きにいきましょうよ。亡くなったかたもいますが多くが助かった、俺らは運がいい」
「そうだよな。空間スキル持ちがいたのも運がいい。踏破済み迷宮に街を造れたのも運がいい」
「デスエの人達と懇意になれたのもな。俺たちって本当運がいいっすよ。それに元から日本は災害大国ですから慣れてるでしょ」
「バカやろ。災害に慣れなんてねえよ」
「けど、住民のみんなも毎回なんだかんだと頑張ってくれてるし。俺らも頑張りましょ」
押入れ属性である清みんの口から前向きな発言が出るとは驚きだ。いや、それよりも、やはり新わざはあったんだ!
『リフレクション』!…………いや、リフレクチョンか?
「久瀬さん、この先、地上を進むのに今みたいな大量の魔物に集られる事は普通に起こると思います」
「そうだな」
「清みんの、リフレク(どっちで言うべきか)……ション、あれはこの先重要になりますよ」
「そう、あれはなんだ? 清見君の新しいスキルか?」
「え、え、知らな、わからない」
「清みん、ステータスは確認したか?」
「してない。だってずっと忙しかったし……」
「清見君、今、確認してもらえないか?」
「……はい」
清みんが宙を見ている。ステータスを開いているのだろう。
『リフレクション』、俺はスキルではなく、スキルに付随するワザのひとつではと思っている。
清みんは空間スキルも回復スキルマックスまでいっている。そのどちらかのスキルから派生したワザ……魔法みたいなものではないかと思っている。
果たしてステータスボードにそこまで詳しく載っているだろうか? この世界のステータスボードはかなり簡易なものなんだ。
「あ」
清みんがステータスボードに何かを発見したようだ。皆が期待の目でみる。
清みんの眉間に皺が寄る。
「え?」
「ん?」
「どした?」
「なんだ?」
「おい」
清みんの眉間の皺が深くなる。
「んん?」
「おい、どした?」
「何が出た?」
清みんに釣られて皆の眉間にも皺が寄る。桂さんが清みんに頭を近づけるが外からはステータスは見えない。
遺跡の石版なら周りからも見えるのだが、通常は本人のみだ。
焦れて皆が清みんを取り囲み迫っていく。まるでカツアゲにあっているみたいだ。
「清みーん、何が出てるか、見たまんまを言ってみ?」
「あ、うん。あのね。おかしいんだけど、スキルがね」
「スキルが?」
「スキルが? どした?」
「おかしいスキルが出たか?」
「スキルは勝手には出ないだろ? スキル石を使わない限り」
「そうなんだよね。……スキル石、使ってないんだけどね」
「出たのか?」
「使ったのか?」
「増えたのか?」
「何が!」
清みんの正面に居た桂さんはほとんどキスをするくらいの距離まで近付いている。背後の七海倉さんもオデコを清みんの耳に付けている。久瀬さんは清みんの頭をガッシリ手のひらで掴んで押さえ込んでいる。完全にヤク◯に絡まれてる会社員……。
「清みん、早く吐いちまえ、楽になれるぞ」
清みんがコクコクと頷いた。
「スキル気力が増えましたああああ。スキル石は使ってませんんー」
「おお! やはりスキルが増えていたのか。気力だと?」
「どう言う事ですか? 清見君、石は使ってないんですよね?」
「使ってないですー」
「そんな事ってあるんですか? 石無しでスキルが?」
「しかも気力! 清見君は空間スキルがあるからテイムは出来るのに、今更気力スキルが?」
「そもそもスキル石も使ってないんですよね」
「こんな時でなかったら、攫ってギルドに軟禁してキリキリ吐かせるのに」
うわー、久瀬さん、今、怖い事言わなかったか?




