84話 階段前
----(大島視点)----
俺たちはポヨンさんらの活躍で通路を進めるようになり、螺旋階段が見える場所まで辿り着いた。
階段前は少しだけ広い空間となっている。そこに魔物が溜まり蠢いている。
「うっわ、きもっ。ポヨン君、戻って! パミュンちゃんも!ふるふるさん!プルン君も戻ってきて!」
清みんがスライム達を呼び戻した。
階段から通路へ入ってくる魔物と階段へ戻ろうとする魔物で通路いっぱいの大きさの肉団子になっていた。
「気持ち悪いな……」
「合体ワザか?」
「真ん中にダークボールがあって魔物を吸い寄せて合体しているのか……」
「何?……ダークボール?」
「すみません、嘘です。想像です。ほら、アニメとかでよくあるじゃないですか」
「あるのか?」
「さあ?」
チー亀もチー龍も、一見のほほんと会話をしているように見えるが、緊張した表情だ。
「ねねね、ほら、見てあそこ」
ピンっと張った空気をプツンと切る清みんの声が通路に響く。
「あそこ? どこだ?」
「魔物団子の下の方、あ、右上も」
皆がそこに目を向けた。
魔物団子はだた纏まりくっ付いているだけではなかった。
「食いついてる」
「齧ってるな。齧ってるやつも齧られてもいるがな」
「魔物同士で食い合ってるぞ」
「仲悪いなー。同郷意識とかないのかな」
「ないんだろうな」
なるほど、魔物はお互いに噛みつき合い団子になっていたのか。
肉団子が少しスリムになり隙間から向こうが見える。階段から通路に来る魔物、こちらをチラリと見るがすぐに肉団子へと目を向けてそこへ飛び込んで行く。あちらの方がご馳走に見えるのか。
団子は小さくなりかけると奥から増えて大きくなる。
「魔物が同士討ちで数を減らしてくれるのは助かりますけどね、いつまで続くんですかね」
「キリがない……。これ、終わりはあるのか?」
サイズの小さい魔虫は肉団子へは向かわずにこちらへと来て俺の防御壁をカリカリと攻撃する。清みんがビクリと飛び上がり後ろへと飛び退いた。
「すみません! 自分あと少しで経験値が10になるので、そこの小者を殺りたいです」
「山下か。今、幾つだ?」
「はい、物理攻撃(中9.9892)です!」
「おっ、あと少しで物攻(強)か」
「ふむ。大島君、そこの小者を防御壁のこちら側へ通せるか?」
「あー…………、右横に隙間を作ります。けど、気づかれたら小さいやつがワラワラと入ってきますよ?」
さっき後ろへ下がっていた清みんが再び抱きついてきた。
「他に現在『中の9』台はいるか」
亀と龍から数人の手が上がった。
「では、右下に小さめの隙間を開けます」
俺が言うとそれぞれのチーム長が身振り手振りで指示を出し、各人が配置についた形になった。
金浦さんが俺を見て頷いたのを合図に、俺は防御右下に隙間を作る形で防御の形を変形させた。
直径15センチほどの隙間から魔虫がこちら側へと入ってくる。俺の防御壁は通路に近いサイズの板状だ。と言っても厚さが1メートルほどで、清みんは俺にしがみ付きそのスペースに居る。
他は俺らの後ろで戦う陣形になって魔虫を待ち構えている。
さきほど手を挙げた人達が中心になり魔虫と戦い始める。
「班長おぉぉぉぉ! 自分、強、来ましたああああああ!」
「おお! おめでとう」
「おめっす!」
「すげぇな、羨ましい!おめでとう!」
山下さんが揉みくちゃにされていた。
「ゲームだったら花火をあげてるとこだよねー」
「花火なんて持ってないぞー」
「清見さん、花火ありますか?」
「残念、無いー」
いや、持っていてもこんな狭い洞窟の通路で花火は怖いからやめてくれ。それと、ほら、そこ。虫がどんどん入ってきてるから。
だが、俺が注意を促す前に、さっき手を挙げた他の人らが躍起になって倒しにかかっていた。うん、皆さん『強』になりたいよな。
肉団子に向かう勇気の無い小者魔虫が隙間からひっきりなしにはいってくる。そしてそれを取り合うように倒すチー亀とチー龍。
たまにサイズオーバーなやつが穴を塞いで他の小者に食いつかれている。魔物界は謎だな。だが、手を挙げた全員が無事に『強』へとランクアップしたようだ。
そして肉団子も直径2メートルくらいの玉から体積が増えなくなった。階段から這い出てくる魔物の量がガクリと減ったようだ。




