73話 マック救出作戦
----(清見視点)----
大島氏を乗せたバスと長谷川さんのミニバンが去って4日。何事もなければ無事にニッポンへ着いているはず。
あの魔物のスタンピードはどこまで進んで行くんだろうな? そもそもどこから来た波なんだ?
ドローンでもあれば上空から確認出来るのにそんな物は無い。あ、でもこの世界がファンタジーなら空を飛べるスキルとかあるかな。俺は要らないけどね。
誰かが使えれば、便利なのにね。
今日は昼間っから『夜マック』を堪している。久しぶりのマックって毎日食べても飽きないよね。
「いえ、俺らもう4年も食べているので飽きています」
俺の独り言が聞こえたのか、ソフトクリームを持ってきてくれたバイト君がそうこぼした。
塩っぱいポテトと甘いソフトクリーム。永遠に食べられる。(気がするだけで満腹になるけど)
元からそこに居た避難民達はとうに飽き飽きしていたのか、仏間の防災食の缶詰やピラフが取り合いになっている。
「バンズに焼き鳥挟んで焼き鳥バーガー!」
「白飯にナゲット乗せて、ナゲ丼完成〜〜」
それなりに楽しそうな少年達、小さい子供らは仏間で昼寝中だ。
マック合宿も5日目を迎えた朝、ニッポンからのバスが到着した。
ニッポンへ向かったはずの大型観光バスだった。
「戻って来た? まさか……日本は無くなって……?」
駐車場へ迎えに出たシフマネ君や店長も青くなった。自分達をこれから救ってくれるはずの街が無くなったのでは、と思ったのか。
しかしそんな事はなかった。ちゃんとニッポンはあったし、途中ちょっとイレギュラーがあって時間がかかったが、ちゃんと救助に来たんだって。
「運転手の柴田さんも疲れているだろうし他のバスで、と言う案もあったんだが、スタンピードで途中森も荒れまくっていて、シートベルトのあるバスの方が安全だろうって事になってさ」
「都バス2台で迎えに来る案もありましたが、都バスはシートにベルトが無いですから」
うん、確かに。街中を走っていた循環バスにはシートベルトは付いていない。
って、それって、シートベルトが必要となる危険な場所を通るって事?
「森も道も荒れまくっていて、多少のスピードが必要になります。それと、森に魔獣が増えたと思った方がいい。あのスタンピードはただ通り過ぎたのではなく、魔物を置き去りにもしています」
つまり、道の無い、荒れた森をゴリ押しで進む。しかも上から魔物がボロボロ落ちてくると予想される。
「ニッポンは無事だったし、空間スキルを破る魔物は今のところ出てきていない。こちらがはみ出ない限りはいける。あとはゴリゴリ進むのみだ」
ギルドの人、簡単そうに言うけど、子供達は怖がると思うよ?
「大丈夫です、大島君のスライムがあるので」
えっ? 大島氏、いつの間にスライムをテイムしたんだ?
絵ね。謎の物体。
マックの避難民が大型バスに乗り込んだ。マラミュート3体がそれを引く。そこに大島氏が乗り込み絵付き防御を展開。謎の生物。
その右隣に俺の仏間とそれを引くうり達、左隣にシフマネ君のマックとそれを引くグリズリー7体。
中央の大島氏の謎物体は、左右の俺たちの空間をカバーしきる事は出来なかった。仏間もマックも一部が謎生物に包まれた。
仏間は仏壇がある側三分の一の空間、マックはデリバリーカーが置いてある四分の一、ただし駐車場は完全にはみ出ている。
俺は仏間の上でも左より、大島氏の防御内へと入った。仏間の中に大島氏のヘンテコな絵の境界線である壁が出来ていた。
大島氏の防御、大きくなったよなぁ。昔の狭かった頃を思い出してつくづく感じた。
そのまま横並びで出発した。仏間とマックにはそれぞれ無線機を持ったギルド員が乗っていて、常時連絡(進行する方向など)を密にしている。
俺はうりゆ君達に伝えるだけだ。基本、マラミン達と足並み揃えてねとは言ってある。
俺は仏間のガラス障子はオープンにしてあるし、大島氏もバスの運転席のすぐ後ろに座り窓をオープンにしていたので、話も出来る。
荒地はそれなりのスピードで走れた。地面に居た魔虫も疾走してくる大島氏の謎生物に驚き、道を空けてくれる。
凄いな、大島氏のスキル…………、スキル? 凄いのは大島氏の画力? あとなんでか、バスの前方に座っているギルドの人達の形相が凄い。怖い。危機迫っている???……どうしたんだろう。
わっ、びっくりした。隣で無線機を持っていたギルド員さんも怖い顔をしてた!
なんかブツブツ呪文みたいなのを唱えてないか? 呪い?誰かを呪ってる?
荒地から少しずつ森林地帯に入ってきた。確かに荒れている。森の外側の木々はベキベキに倒れていた。
スタンピードで魔物達が薙ぎ倒したんだろうな。
木を避けて進むせいか蛇行するようになった。バスだけ、仏間だけのように空間ひとつならある程度の木々にも突っ込んで倒していけるが、マック、バス、仏間の横連携だ。それは難しい。密着していてもそれなりの幅になってしまう。
仏間もマックもかなりの頻度で太い樹木にぶつかっていく。空間スキルの硬度も気になるが、ぶつかるたびに上から降ってきている魔物も気になる。
屋根に重なった魔物の重さ、うりゆ君達にはそれがダイレクトに伝わっているだろう。
仏間を引くのにかなり力を入れているように見える。
屋根から落ちろ落ちろ落ちろ! 横から顔を出してうりゆ君達を確認する。ギルド員が慌てて俺の腰に紐(命綱)を巻いた。
屋根にしがみついた魔物が前へ迫り出してうちの子に迫ろうとしていた。
実は、仏間の経験値が100になってから、仏間の周りにかなり硬い防御を出せるようになった。スキルが消えない距離は15mだが、それはそこに防御壁があるわけではない。だた離れてもスキルが消えない距離だ。
仏間内へ魔物の侵入は防がれていたが、経験値100を超えてからは仏間周りに侵入不可の領域を作成することが出来るようになった。
ただしそれは意識していないと直ぐに切れてしまう。
その場限りのアクティブとも、かけっぱなしのパッシブと異なる。意識する事で持続出来るが、人間の集中力はそこまで長く保たない。
今、うりゆ君達のまわりはそれで包まれているが、それがいつまで保つか。気を抜いたら終わりだ。




