72話 ニッポン周り
----(大島視点)----
「あと少しでニッポン街地上区です」
荒れた森を抜けるとそこは、見慣れた拓かれた地が広がっていた。
スタンピードが通り過ぎてもさほど変わらない地が広がっていた。
普段からこの辺りは、テイムした魔物を放して食事をさせていたので、本来ならばかなり安全なはずであった。
今は地面にそこそこ魔物がいる。
遠目に建物が見えてくる。
だが、光が丘のように魔物にたかられて黒い塊になっている事はなかった。
病院や、機体が見える。近づくと他の建物も無事なのがわかった。
しかし、空間スキルの建物ではなく、木材や石で造られた幾つかはやはり壊されている。スタンピードの爪跡。ここも例外なくスタンピードが通り過ぎたのがわかる。
車が適当な場所で停車した。周りに魔物が居ないかを確認してギルド員達が下車した。
「よかった。病院は無事のようですね」
「けど、ふれあいカフェの動物が居ない……」
「まさか……あの黒い塊に……」
「本部と連絡が取れました!」
バスの窓から宗佐さんが顔を出した。どうやら地下にある本部と連絡を取っていたようだ。
あの日、スタンピードがニッポンへ迫る前、地上部で働いていた者は皆、迷宮の地下へと降りた。
ある程度小型の魔物も、地下一階の通路から螺旋階段を使い下へと降りたそうだ。
降りられるものは下へ。大型の魔獣は、地下一階に造られた大型魔物用避難壕へと移動させたそうだ。
実は結構前からギルドではソレを作っていた。天候を考慮しての事らしい。今のところないが、大雪や嵐に備えて、だそうだ。
スタンピードの大波が過ぎたあと、スピードが遅く、遅れてくる残ったやつらの駆除としてテイムチームが出動した。
さらに小型の魔虫退治に攻撃系スキルのギルド員達も出動。
聞けば、ママさんらのスライムや魔獣も暴食祭を楽しんだそうだ。
「俺らと行き違いになりましたが、光が丘と浦安へも討伐隊が派遣されたそうです」
そうなのか。良かった。
うん、まぁ、道がきれいに無くなっていたから、いや、汚く失くなっていたから、行き違いも仕方ないな。
そもそも『道』を通っているのかもわからない状態だったからな。
「やつら平地よりも森を好むのか、多くが森へと入っていったそうです」
つまり、今まで以上に油断できない森がそこら中に出来上がったって事か。
もちろん平地に残った、もしくは進みの遅い魔物もまだまだそこらじゅうに居る。
俺たちはバスの重傷者を病院へと移した後、地下10階の本部で今後の指示を待つ。
置いてきた清みん達を救助に行かなくては。
「スタンピードの黒い津波は森に吸収されたのか、それとも森を超えてもっと先へと行ったのか不明です。救助隊は森からかなりの襲撃を覚悟する必要がありますね」
「だが、行くしかあるまい」
ギルド本部では地図を広げて緊急会議が開かれているが、道が道で無くなった今、地図はもう役に立たない。方角だけが頼りだ。
「今、引ける車両はどのくらいある?」
「小型車を入れると21台ですね」
「車輪付き、持ち主なしで30名以上の乗車が可能なものでは?」
「バス3台、電車1車両です」
「それを転がせるテイマーは居るか?」
「おります。地下1の大型車庫で待機中です」
「ふむ。店舗に居る避難民を全員運べるな。出来るだけ広い道を……道は無いか、通れそうな所を通り、向かう」
マック救出&仏間を迎えに行く作戦が開始した。




