70話 光が丘へ③
----(大島視点)----
俺らは長谷川さんのミニバンで、あそこに、元光が丘パークタウンだった黒い塊に突っ込む事になった。
ミニバンを引くコアラパンダが怖がらないように俺の防御で包み込み、色を付けて見えなくする。
「集会所の場所は確認した。集会所は東端だったのも幸運だな」
「方向だけ指示ください」
「大島、右後部座席横のみ、防御を透明に出来るか?」
「了解です。直ぐに真っ暗になると思いますがね」
「防御の形は菱形でこっちの窓に菱形の右角が来るようにしてくれ」
「わっかりました。絵に希望はありますか? っても俺に描ける絵は限られてますが」
後部座席では向こうの集会所へ連絡を取り終わった。
防御に模様を想像していく、そして色を付ける。
敵に襲いかかるスライムの絵にした。色は濃く。特にコアラパンダのいる前面はおどろおどろしい黒と茶の渦巻き。前が見えないけど平気か?
「クラゲ?」
「津波……か?」
「うん◯?」
「抽象画か。何だったか、ほらあれ。時計や階段が溶けている……」
「ああ、ダリですか? 階段が溶けた作品なんてあったかな」
「スライムですっ!」
思わず怒鳴ってしまった。中からだとわかりづらいだろうが、遠くから見たらスライムなんだよ!
「こほん……ええと、森ではスライムは無敵に近い。大抵魔獣魔虫は逃げていく。まぁ普通のスライムではなくて清みん達にテイムされたやつだけどな」
「え……うちのスライムはこんなにビロンビロンでは……」
「いや、襲いかかる時伸びたり広がったりするだろうが!」
「しますけど! もっとこう、勇ましいというか、こんなグニャグニャしないですよ」
若干一名が腑に落ちないようだ。
「つまり、スライムのつもりであの黒い塊の中を進むという作戦ですね。わかりました! 中に居る我らだけでもスライムに成り切りましょう!」
「そうだな。じゃないと何が近づいてくるのかわからんからな」
酷い、失礼なやつらだ。運転席の長谷川さんも声を出さずに笑っている。それもどうかと思いますが?
「口に出さず心からスライムなりきれ!」
「行くぞ!」
『俺はスライム!俺はスライム!お前らを食うぞ、どけどけどけえ』
『スライム様のお通りだぞおおお!どいたどいたどいた』
「あの、桜さんはコアラパンダのままでいいのかしら」
「はい、ただ出来れば、食い尽くし系コアラになっていただければ」
「難しい注文ね」
俺のスライム(防御)に包まれた気迫に満ちた謎の物体に、近場の黒い壁と化していた魔獣達が慄いたように一斉に散っていく。
そのまま黒い魔物の集合体へと突っ込む。
進んでいく謎の物体の先から飛び出した手(桜さんの手)が逃げ遅れた魔虫を鷲掴みにして防御内へと引き込みそこでバリバリと喰らうコアラパンダの桜さんと小菊さん。
食い尽くし系女子を見事に演じる桜さんと小菊さん、飼い主の長谷川さんは「オラオラ」言っていた。
「てめぇら、ウロチョロすんじゃねぇ! 轢きゴロスぞっ!」
「そこ、入口です。姉御、バンをドアに横付けお願いします!」
河田さんが長谷川さんの配下に下った!
宗佐さんが無線で中へと連絡を入れた。ドアの施錠が外された事を聞く。長谷川さんと俺を残して河田さんと宗佐さんは集会所の中へと入っていった。
少しして戻ってきた。
光が丘の住人については、やはり現在は不明のままとの事。集会所の周りだけはクリーンになっている。
ここについていた魔物が散っていったまま戻ってこないからだ。
----------
その頃のマックは食後軽い運動として忍者ごっこが行われていた。
これも清見や子供らでよくやっている遊びだ。
『だるまさんが転んだ』の忍者版だ。
「忍者さんがこーろんだ!」
振り返ると皆は転がっている。そう、これはダルマさんと異なり最初から全員が転がって、ダルマならぬ忍者へ転がりながら近づく遊びだ。忍者が振り返った時に止まれず動いた者は忍者に捕まる。
残った者はゴロゴロと転がったり止まったりしながら忍者に近づいていく。
「忍者さんがこぉー、ぐはっ」
転がってきた者が忍者の足元に体当たりして倒されたら忍者の負けだ。
たまに転がらずに寝落ちしている子も居る。カニ実食で満腹であったし仏間はそこらじゅう寝落ちした子が転がっていた。
少し前、恐怖で泣き叫んでいた事も忘れたようだ。そもそも恐怖も大人の恐怖がうつっただけだからな。




