69話 光が丘へ②
----(大島視点)----
現在の光が丘の住人の無事の確認は出来ていないそうだった。ただ、魔物の壁が目視されて緊急避難を呼びかけたので各自が近場の空間へと避難をしたはず、との事。
異世界へ転移してきた光が丘パークタウンは、マンションの個室である、寝室、リビング、キッチンなどや、集会所、スーパーが集まって出来た集落だ。
空間が集まってはいるが、決してひとつのマンションのように完全にくっついて出来た建物ではない。
遠くから見てひとつでも、近づくと小さい個々の空間だ。それらそれぞれが大量の魔虫魔獣に張り付かれている。
ギルド員が駐在していた集会所もどこの部屋とも繋がった空間ではない。
なので住民の無事の確認が不可能なのだ。
「固定電話もスマホもこの世界では使えないですからね」
「光が丘って結構高級なマンションじゃない? コンシェルジュとかいないの?」
「あぁ、居たかもしれないがコンシェルジュのスペースがこの世界に転移してこなかったんじゃないか?」
「コンシェルジュに偶然子供がいてこっちに来たとしても、各部屋への電話は繋がってないんじゃない?」
「聞いてみます」
無線機を操作していた宗佐さんが再び無線機へ話しかけていた。
「わかった。このまま待ってくれ、どうぞ」
何を聞いたんだ? コンシェルジュが居たからどうにかなるものでもない。
「集会室から、放送は流せるようです。緊急の連絡もその放送でアナウンスしたそうです」
「どんな連絡をしたんだ?」
「急いで部屋に入るように、部屋から出ないようにと、施錠をするように」
「なるほど」
「ただ、集会室へ伺いに来る人も多く、暫く繰り返して流していて、そのうち魔物の波が到着したそうです」
「それだ。それが原因か」
光が丘で緊急を知らせるアナウンス。早期に流したそれは住民を救う事に繋がった。しかしその後も流し続けた放送は、避難しない住民の尻を押すだけでなく、魔物の津波から魔虫魔獣を呼び寄せる事になった。
危険を知らせるたびに、その音が魔物を呼び、そして魔物をそこにとどめる事になったんだ。
マックの上を通り過ぎた黒い波、それが光が丘では通り過ぎなかったのは、音(放送)で、そこにご馳走が居る事を知らしめた。
恐らく外を見た住人はさらに騒いでいる事だろう。
「住民に静かにするように知らせないと」
「けど、それを放送する事でさらに引き寄せるぞ?」
「どのみち今居るやつらはもうどかないだろう」
「けどこのまま籠っていても食糧が再生する空間にいる住人はいいが、そうじゃない場所に籠った人は餓死するぞ?」
「大島君の防御は最大どのくらいの範囲が可能だ?」
「集落ごとは無理です。マックの半分程度ですかね……、すみません、測った事がなく」
「いや。……マックの半分か。集会所くらいはいけそうだな。まずは駐在ギルド員と合流するか」
「桜さん達があそこに近づけるかしら。今でも結構怖がっているから無理かも」
「近づいた途端、こっちにも群がってくるだろうな。バンの防御と大島君の防御で俺らは問題はないが、進まなくなるのは困るな。どうしたもんか……」
「長谷川さん、桜さん達は前が見えないと進まないですか? 俺の防御に色付けて周りを見えなくします。俺たちは方向を決めて突っ込む。どうせあそこに突っ込めば周りは真っ暗になるんだ」




