65話 追いかける
----(大島視点)----
スタンピードの魔物の波を追いかけるべきか。
地上の街やニッポンに知らせに走るならば、スタンピードを追い越さなくてはならない。
それは無理だ。
あの黒い大群に突っ込み振り切る。無茶苦茶だ。
しかもこちらも避難民を連れているのだ。せっかく今まで無事に過ごしてきた彼らを、ここで危険に巻き込むわけにはいかないだろう。
どう考えても無理だ。
ニッポンや地上の街が気になるギルド員の気持ちは理解出来る。だが、それが困難すぎる事も事実だ。
無理は無理なんだ。
「うーんとさ、後ろからこっそり追いかけたらどうかな? 付かず離れず様子を見ながら。少人数なら上手く出来そうじゃない?
ほら、大島氏に魔物の絵を描いてもらってさ、魔物の振りして付いていったらどうかな? 俺らはここらで待っているよ」
清みん! なんというナイスな発言だ。
スピードが出せないマック、危険な場所に連れていきたくない避難民。だけど今まで待たせておいて、さらに待っていろとギルド員は言いづらかったに違いない。
仏間がマックと一緒に待っていてもらえるなら安心だ。
「確かに。ミニバンなら追いつける。バスも乗客なしならさっきのに追いつけるくらいのスピードは出せます」
「スタンピードのしんがりに追いつくのは可能だな。追い越すのは危険すぎるが、行って近づいて見てどうするか決める」
「途中で地上の集落が確認出来れば」
「行ってみて避難が必要ならバスに乗せられるだけ収容しよう」
誰かに言って欲しかった言葉、ギルド員でなく一般民からの言葉をもらえてギルドの方針は決まった。
あれ? 清みんって一般民なのか? 一応ギルド登録してなかったか? 冒険者登録はしているけどギルド職員ではない? そうか。そうだな、それに本職は修繕屋だったな。
違う? 本職は引きニート? はいはい。
マックとそこに居た避難民、それと仏間と清みんは現在地で待機になった。数名のギルド員とグリズリーも待機要員になった。
スタンピードを追うのはミニバンの長谷川さんとコアラパンダ、バスのドライバーとマラミュート、そしてギルド員達と俺だ。
ニッポンの安全が確認出来たら迎えを寄越す。
バスに乗っていた人達は降りてまたマックの店内へと戻っていった。マックも仏間も再生する食糧があるので食事には困らないだろう。それにグリズリーやポヨン氏らが居るので魔獣や魔虫が出ても大丈夫だと思う。
清みんはマックの駐車場に多少乗り上げる形で仏間を設置していた。駐車場にはグリズリーやウリ坊が居る。
俺たちは出発した。
----(清見視点)----
大島氏達は出発した。
マックの窓から不安そうに見送る人達が見えた。残された皆は不安なんだろうな。ギルドの人も半分以上はいなくなったし。
けどさっきのあの大群もやり過ごせたんだ。マック店舗も壊れる事は無かった。M字看板ももげていない。うん。
ひとつ不安があるとしたら、大島氏の防御壁がないと子供が騒いだ時に店舗が魔物に囲まれる危険があるという事。
あいつら音に敏感だ。つまり、逆に静かにしていればやり過ごせると思うんだ。
仏間に繋いでいたウリ坊も放す。
「遠くには行かないで」
この周りをウリ坊とスライムで警戒する。グリズリーのテイマーであるギルド員も、グリズリーを放していた。
「変なもん拾い食いすんなよー」
「なんかこの辺って森も無いしあまり食べられる魔虫も居なそうですね」
「少し移動した方がいいのかな」
「けど見た感じ近くに森も無いしなぁ。いや、あったのかも知れないが、さっきのアレでたぶんどこもまるはげなんだよな」
「ですね……」
遠くに行かないでとお願いしたうりゆ君たちだが、なんか地面に顔を突っ込んで掘っている。
それを見たグリズリー達も手で地面を掘り始めた。
「地面の下に食べられそうな魔虫でも居るのかな」
「ですね。って事は、俺たちは迂闊に外に出ちゃうダメって事か」
うおっ、確かに。地面の下に何かが居るんだ………。俺は残ってくれていたポヨン君をしっかりだきしめた。
子供達は仏間で昼寝をしている。あれだけの騒ぎがあったので神経が昂り寝られないのではと思ったが、杞憂だった。
と言うか、仏間の押入れが気に入ったようで、布団や毛布を敷いたら入って直ぐに寝てしまった。
母親達は押入れの近くで寛いでいたが、さっきの恐怖はまだ拭えないようで、ビクビクガチガチしていた。
成人していない中高生くらいの子供達はまだ元気そうだった。若干名怖がっている女子は居たが、それ以外はマックの店内に残り、他の大人と共に先ほどのスタンピードの話で盛り上がっていた。
俺も仏間にパミュンちゃんを残してマックへと移動した。
空いているテーブルに座ると前の席にギルド員とシフマネ君が腰掛けた。
流石、気配りの達人、シフマネ君はトレーに飲み物を乗せていた。ギルド員と自分にはコーヒー、俺の前にはシェイクが置かれた。
シェイクって最初に吸う時、吸引力が必要なんだよな。そう思いながら思いっきり吸い上げた。うん、まだストローの途中だ。頑張れ、俺。
「清見さん、さっき『死んだふり』って指示されてたじゃないですか? あれはどういう意味なんでしょうか?」
ギルド員が俺を見つめているのが俯いていてもわかった。シフマネ君もうんうんと首を振っている。
大島氏が居ないのに、俺、上手く説明できるかな。けど、急かす事なく待ってくれているので、ゆっくりと思った事を言ってみた。




