61話 津波は
----(清見視点)----
発見したマックをグリズリーに引いてもらい荒地を移動していた。
そんな時、俺らの背後、遥か彼方の地平線から津波のようなものが見えた。それらは少しずつこちらへと迫っているように見えた。
「どこか建物を隠せる場所があれば……」
「この辺はずっと荒地だぞ? 森も小山もない」
「ちょっとした起伏でもあればやり過ごせるんじゃないか?」
ギルド員が鬼気迫る表情で話し合う。大島氏も俺も、ただ横で聞いているしかない。
こうしている間にも、あの津波のような壁は進んで来ているように見える。
異世界の砂嵐……、土嵐……、土壁の大移動。意味不明。
「時間が勿体無い。移動しながら話しませんか?」
「そうだな。グリズリー、マラミュートを動かすテイマーのみそのまま騎乗してもらい、他はマック店内で緊急会議だ」
え、え、俺は仏間でいいのかな?
「清みん、清みんはこのまま仏間を動かしてくれ。前のバスに着いて行くように」
「わかった」
「とにかくあの津波から少しでも距離を取る。移動を続けてくれ」
あっという間にギルド員はそれぞれの持ち場に戻ったみたいだ。俺もうりゆ君にバスを追いかけて進むようにお願いした。
バスの窓から何人もの人が顔を覗かせていた。
あんな壁が押し寄せてくるなんて、この世界に来て4年経ったけど初めてだ。
と言うか、あの壁、何なんだろう。
津波、砂嵐、土嵐、土壁移動……。『世界の果て』の大移動。って、世界の果てって何なんだよ。
俺は仏間の運転はうりゆ君まかせなので、ひとりで悶々と考えまくった。
世界の果て。この世界がゲームの世界なら、システム上の何かの問題で空間が狭められてきた?
俺らはゲームの世界に転移していたのだろうか?
でもそれは違うと思う。だって、もしもゲームだとしたら売れないゲームだよな。地味だと思うし、俺TUEEEEも無い。
いや、俺が知らないだけで意外とレベル上げやバトルのある世界なのか? 俺、日々、修繕ばかりだからな。地味すぎる。俺が地味すぎるのか(泣)
なんてつまらない事を考えていたら、突然ガクンと仏間が停車した。
外を見ると追ってきている地平線の壁がさっきより近づいている気がする。壁が高くなった気がする。横はどこまでも伸びている。万里の長城か。
迫り来る万里の長城から逃げまくるゲーム……なわけない、よな?
「清みん! 全速力であの森に逃げ込むぞ!」
マックの店内へ行った大島氏が戻ってきた。ギルド会議は済んだのか?
「とりあえず、この先の森へ突入、そこで様子を見る事になった」
大島氏の指差した方を見ると、小さいがこんもりとした森が見えた。
大島氏に急かされて、うりゆ君達に慌てて指示を出した。今まで縦一列で進んでいたミニバン、マック、バス、仏間であったが、今は競うように森に向かって走っている。
ミニバンと仏間は軽い上に空間スキル持ちがテイムした魔獣が引いているのでかなりのスピードで森へと突っ走った。
マックとバスは、空間スキル持ちとテイマーが別人、かつ乗っている人間の重量もあり、そこまでスピードは出ないようだ。
小さいと思っていた森も近づくとそこそこの大きさはあり、樹木も大きい。恐らく上の方には魔獣も居るだろう。
「清みん、あまり深くまで入らずそのあたりで一旦止まってくれ」
大島氏に言われて、森へ突っ込んだとこでストップした。ミニバンママが一番に突っ込んだが直ぐにUターンして仏間の横にピタリとバンをつけた。
木々の隙間から外の荒地が見える。
マックとバスが森へ突っ込んで来た時には、地平線の黒い壁がどんどん大きくなっていた。
壁が大きく育ったわけはなく、近づいてきた事で大きく見えてきたのだ。
森の木の上から落ちてくる魔虫など気にならない。
何故なら、迫ってくる地平線の壁がどんどんと大きさを増している。砂埃とか土煙ではない。
黒く見えていたソレ、津波の壁に見えていたそれ。
「魔物の……壁、だ」
双眼鏡を覗いていたギルド員の言葉よりも、各自が自分の目でソレを認識出来た。
この距離でも確認出来る大きさの魔獣、それが大量に、壁のように押し寄せてきていた。
「一種ではないです! 複数種、確認っ! 大小様々です!」
俺らの目に映ったのは大きいものだけだが、双眼鏡でよく見えたギルド員はハッキリわかるほど震えていた。
地平線に見えた津波は、水でなく、砂でも土でもなく、魔物の津波だった。
そう、地平線から魔物が津波となり迫って来ていたのだ。




