55話 嘘
----(清見視点)----
「「「俺がスキル保持者です」」」
立ち上がった3人、シフトマネジャー、バイト青年、知らないおっさんが、焦った様子でお互いを見ていた。
「俺がスキル保持者です」
「俺……も、です」
「俺だ俺だ俺だ」
「いや、誰だ」
思わず突っ込んでしまった。
「……ステータス表示はどうなっていますか」
「え、あの、空間スキル、と出ています」
「同じ……です」
「…………」
「清みん、ステータスにどう出てる?」
「あ、うん。スキル、コロン、空間カッコ仏間100カッコ閉じ」
スキル:空間(仏間100)だ。
「それがステータスの正しい表示です。空間スキル、ではなく、何の空間かがカッコ書きで出ているはずです。あなた方3人にスキルは出ていない。そうですね?」
大島氏、じっちゃんの名にかけたな。身体も頭脳も大人の名探偵め。
「スキルが消えてもいいじゃないですか。連れていけるなら子供連れの人だけでも優先で乗せていってもらえませんか?」
「気持ちはわかります。が、スキルの持ち主とランクが不明の現在、ここに残される者が危険になります。今はスキル保持者がいるので、魔物も店舗内に入ってくる事はない。しかし、もしも数日後にスキルが消えたら、ここは安全ではなくなる」
「それなら安全な状態で、あと1週間くらい全員で待とうよ?」
3人はハッとしたあと項垂れた。良かれと思って嘘をついたのだろうけど、それが皆を危険に晒すところだったのだ。
「……そうですね、すみませんでした。嘘を言いました」
「親子を早く助けたかった気持ちはわかりますよ」
「でもそのせいで、残った人を危険にさらす所でした。すみません。皆さんも申し訳ない、浅はかな考えでした」
自衛隊でも警察官でもないのにマネジャーさん、頑張りすぎだよ。周りだって怒ってる人はいない。きっと普段から彼の、彼らの頑張りを知っているからだ。
俺は大島氏に小声で話す。
「ニッポンへ呼びに戻るの、少し延ばさない?」
「ん?」
「呼びに行くのはスキル保持者がわかってからでもよくない? そしたら子供達を乗せて行けるでしょ? 保持者だったお母さんはちょっと残ってもらうけど、お子さんだけでも先に安全なとこに連れていけるし」
周りに居た女性達も頷いていた。母は強し。
スキル表示の訓練は明日からする事にして、今日はもう休む事になった。
仏間は子供と女性に解放する。寝ている子供を抱いて仏間の畳に恐る恐る上がっていく。靴はぬいでくださぁい!
数は少ないが毛布や布団を出した。小さい子優先だな。少しだけ傷を付けておく。明日に再生する事を祈る。
俺と大島氏はマックの椅子に座って寝る。
店内の灯りは部分的に消しはするが真っ暗にはしない。窓から仏間が見える。うりゆ君達は駐車場で大人しく寝ている。
普段なら食事に放すところだが、この辺りは森が無い。それに荒地からどんな魔物が出るかも不明だ。念の為、今夜は我慢してもらう。
ポヨン君とパミュンちゃんは俺と共にマックに居る。ふるふるさんとぷるん君は仏間で警戒をしてもらっている。
俺と大島氏が座っているテーブルにコーヒーを持って店長とシフトマネジャーが来た。
大島氏にはブラックで、俺にはシュガースティックが3本とミルクが5個、渡された。さすがだ、マネジャーさん、よくわかっていらっしゃる。俺は貰ったミルクと砂糖を全部入れてからよくかき混ぜた。
「さっきはありがとうございました」
「あ、いえ……」
焦った。大島氏ではなく俺に頭を下げてきた。俺は何もしていないのに。こちらこそどうも。マフィンもハッシュポテトも美味しかったです。
店内に居る人達は興奮して眠れないのか、皆、飲み物を啜っていた。
小声ではあるが、俺達は話を聞いた。最初の年に怖い目にあいマックに引きこもった人たち、それと魔虫に追われて命からがらにげこんできた人達だ。それからずっと出られないでいる。
久しぶりに訪れた人、仏間が現れた事だけでも驚愕だったと言う話、大島氏が時々相槌打つ、俺は段々と眠くなっていった。




