54話 異世界マック⑤
----(清見視点)----
「さてと、今後の話をしましょうか」
大島氏が話し始めると皆の視線が集まった。
「急な事ですぐに気持ちは固まらないでしょうが、皆さんは今後どうしたいか」
「どうもこうも、救助をしてほしい」
「うむ。さっきの話の日本街に救助されてそっちに合流したい」
「そっちには警察とか自衛隊がいるのよね?」
「元、です。今はもう全員が一般市民。あぁ、『市』があるわけではないので市民は違うな。一般住民か」
「でも元は自衛隊なのよね?」
「助けてもらいたい。ここから出られない世界はもう嫌……」
女性が泣き出した。つられて何人かも泣き出す。
「外が怖い世界な事は……」
「知ってます! 知ってる、逃げてきたから! 一緒に逃げてた人が、おそ、襲われた、私、見捨てて逃げたから」
「そのへんの話も、最初の年に皆で十分共有しました。だから俺達はなるべくここから出ないようにした。その後にやってくる人は助けた。けど、出ていく人は減った」
あのシフトマネジャーさんだ。バイト青年が言ったようにここが上手く回っているのも彼のおかげな気がする。
「地下でも街があって、子供が外で遊べるくらいの安全があるなら、俺達はそこへ行きたいと思います」
「そうですか」
「今、決を採れると思います。子供は寝ていますが、皆さん、いかがですか? 彼らの街、地下都市へ移動する事に賛成のかた」
勇者……あ、違った、シフトマネジャーが静かに問うと、皆が一斉に手を挙げた。
大島氏が端から端までをサッと見回した。
「子供は除く、全員が賛成ですか。わかりました」
大島氏のその言葉に皆の緊張が少し和らいだように見えた。
「では、移動するという事を前提に。問題がいくつかあります」
そう、問題はある。
まずは距離。仏間を引いたうりゆ君達が結構な速度で走って2日越え、3日目にここ、マックを発見に至った。
もちろん夜間は停まって寝たわけだが、それでもかなりの距離だ。
そして危険度。ニッポンから1日目くらいの範囲は森に道が出来ている。木を薙ぎ直して作ったそれなりに広めの道だ。
しかしそこから先のこっち方面は未開の森を通ってきた。仏間が通った時に薙ぎ倒された木はあっても、まだ『道』と言うほどではない。周りは危険な木々が鬱蒼とした森が続く。
そこを抜けた先が急に荒地となっていた。理由は不明。特に理由などないのかもしれない。が、荒地に居る魔物が不明だ。障害物(樹木)がないので、ぶっ飛ばしてきたからな。
そこを人が徒歩で移動。無理がある。
仏間に全員は乗せられない。乗せるならウリ坊タイプの魔獣があと倍、5頭は欲しい。
もちろんマックを引ければ問題はないが、まず、マックの空間スキル持ちが不明。もし判明してもその人にマックを引く魔獣をテイムしてもらわないとならない。
最悪、空間スキルが消えるのも念頭におくしか……。貴重なマック……。
「けれど、さっきのお話ですとスキルが100になっていれば、20日間は猶予があるんですよね」
「日本に行った帰りはまた乗り物に乗ってくれば行きは17、18日かけても大丈夫だろう」
「でも……車で12、3時間って、徒歩だと何時間になるんだ?人間がそんなに連続して歩けるものか」
いや、あのさ、なんで全員ですぐに大移動とかの話になってるの?
「すみません……あの」
俺的には大きな声を出したつもりだったが、皆の喧々轟々にかき消された! もう一度……? お腹に力をいれて……。
「皆さん! ストップ!」
俺でも大島氏でもなく、シフトマネジャーの彼が声を張った。皆がピタリと黙る。
マネジャー氏が俺を振り返り、どぞ、とジェスチャーをした。
「あ、あのですね。4年ここで待っていたんですから、あと1週間ほど待ってもらえませんか?」
「そうだな。俺達がニッポン街へ戻って助けを呼んでくるのが1番早い」
「うん、それと安全」
「でも、でも今までも! 助けを呼んでくるって言って2度と戻ってこなかった人が何人も……」
「彼らは徒歩で助けを呼びに行ったじゃないですか。けど大島さん達は家……?に乗ってですよ、今回は大丈夫だと思う」
マネジャーさんのフォローで皆に安堵が戻ってきたようだ。
「そうです。仏間は安全です。ここも4年間無事だったでしょう?日本から来た建物は謎の力で守られています。なので俺らが助けを呼びに行ってきます。ニッポンまで往復で4日、向こうでの準備もあるからプラス2〜3日待ってください」
「あの、あの家で一緒に連れていってもらう事はできませんか?」
「せめて、子供と母親だけでも」
ああ、そうきたかぁ。気持ちはわかるが今回、それは出来ない。
何故なら、マックの持ち主、空間スキル所持者が誰か不明だからだ。
連れ帰った親子がスキル保持者だった場合、また連れてこないとならないからだ。それなら全員で待ってもらった方が早い。
大島氏がその事を説明した。
「スキルの持ち主がわかれば……」
フン!フン!と力む者が数名いた。ステータスを表示しようと頑張っていた。
しかし母親達は逆に後ろ向きであった。もしも自分が保持者だった場合、置いていかれるからだ。
せっかくまとまっていた店内に微妙な空気が流れ始める。
「俺がスキル保持者です」
ハッキリ通る声をあげて立ち上がった者が、3人いた。




